至高の食べ物・天丼。揚げたての天ぷらを白ご飯の上に乗せて、麺つゆをぶっかけるだけのこの料理。シンプルさに反比例するようなウマさと、ガツガツいける庶民的な部分が魅力である。
しかし、それだけにごまかしが利かないのもまた事実。牛丼などと違い、素材と実力がモノを言う天丼のヒエラルキーは割とハッキリしている。そんな天丼カーストの中でも、1軍に分類されるだろう究極の天丼が池袋にある。トロける卵とふわふわ鳥の奏でる極上のハーモニーは、漫画『美味しんぼ』の海原雄山もうなるレベルだぞ!
・隠れ家すぎる店
その天丼が味わえるのは、南池袋にひっそりと佇む『天山』という天ぷら屋。池袋東口を出て南に進み、5差路にあるにジュンク堂の右側の路地に入る。六花そばや老眼めがね博物館も越えて進んでいき、墓場の前の小道を右に入ると右手に見えるぞ。そう、この店は墓場の前にある。
駅から大分離れているため、この辺りはのんびりとした雰囲気が流れていて、いわゆる大都会的な喧騒(けんそう)は皆無。この立地だけでも、存在を知らないと絶対来ないような隠れ方をしているが、さらに店を取り囲む竹林……こんなに隠れてまだ隠れるか! “隠れ家” にも程があるぞ!!
それはともかく、風にそよぐ竹の葉の音や、扉までの石段に落ちる木漏れ日は、日本庭園に似たワビサビを感じる。ここが大都会・池袋であるということを忘れてしまうような情景だ。
・温かい雰囲気の店内
扉を開けると、店内はぼんやり暖色の光が満ちる木造の空間だった。カウンター7席に机2席とコンパクトではあるが “詰め込まれている感” はなく、温かい雰囲気を感じる造りである。完全に山岡士郎が推してくるヤツだ。
・ウマくないわけがない
さっそく、この店のオリジナルである「鳥親子天丼(800円)」を注文。メニューには「調理時間が多少かかりますので、ご了承ください」との注意書きがされていたが、料理は10分ほどで運ばれてきた。
丼の上に敷き詰められた大ぶりの鶏肉の天ぷら、そのテッペンには目玉焼きの天ぷらが陣取る。それらが天つゆを吸い込んで黒くきらめく。こんなんウマくないわけがねェェェエエエ! 卵を崩すと、黄金色の黄身がトロっと溢れだし、鳥天の領域を侵食していく。我慢できず1口鳥天を食べてみると……
・心の奥底から湧き上がる感情
ガチでウメェェェエエエ!!!! サクっとした衣にふわふわの鳥、甘み強めのつゆが完璧なハーモニーを奏でる。さらに、衣が上品で油が全く後を引かないため、舌が天ぷらを欲してやまない。次だ! 早く次の天ぷらをよこせ!!
感謝っ……! 圧倒的感謝っ……!! サク・ふわ・トロの三重奏に押し寄せるエモーション。添えられたピーマン天や玉ねぎ、サツマイモが程よい箸休めとなるのも素晴らしい。この店に私を導いてくれてありがとう! 今日晴れててありがとうっ!! 天丼っていう料理が存在してくれてA・RI・GA・TOOOOOOHHHH!!!
・様々な料理を習得した店主
信じられるか? これが800円なんだぜ……。なお、この店の店主は日本料理屋で修行した後、アメリカに渡り、フランス料理を勉強したとのこと。様々な国の料理の知識と下積みがあっての、神ウマ天丼というわけか。その向上心と野心の味には海原雄山もビビるに違いない。
今回訪れたのは、11時30分~14時のランチタイムだったが、ディナータイムのコース料理には、ステーキなどのフランス料理的なメニューも含まれるとのこと。給料日にディナーでも来たい店である。
・今回紹介した店舗の情報
店名 天山
住所 東京都豊島区南池袋3−16−12
営業時間 月~金11:30~14:00(ご飯がなくなり次第終了)/ 18:00~21:30
定休日 土・日・祝
Report:中澤星児
Photo:Rocketnews24.
▼隠れすぎ
▼風にそよぐ竹の葉の音や、扉までの石段に落ちる木漏れ日……池袋とは思えない
▼日本庭園のような雰囲気の中に扉がある
▼温かいお茶がホッと一息お出迎え
▼鳥親子天丼(800円)
▼丼の上に敷き詰められた大ぶりの鶏肉の天ぷら
▼テッペンには目玉焼きの天ぷらが陣取る
▼ハッキリ言ってウマくないわけがない
▼感謝っ……! 圧倒的感謝っ……!!