ユネスコの世界遺産委員会が7月5日、「明治日本の産業革命遺産」を全会一致で世界文化遺産に登録することを決定した。

喜ばしいことかと思いきや、日本の佐藤地ユネスコ大使が「1940年代に一部の施設で大勢の朝鮮半島に人々などが意に反して厳しい環境下で労働を強いられた」と述べた。

また、その内容を英文で説明する際に『forced to work』と、強制労働があったと思われる文言を使用してしまったため、日本政府が「強制労働」を認めたと解釈されてしまうのでは? という懸念の声があがっているのだ。

岸田外務大臣は記者会見で「強制労働を意味するものではない」と強調していたが、果たして本当に『forced to work』という文言を使っても、英語圏の人々は強制労働と受け取ることは無いのだろうか?

そこで今回は、ネイティブスピーカーのアメリカ人3人に『forced to work』という言葉を聞いて強制労働があったと連想するのかを質問してみた。すると、以下のような返事が返ってきた。

・米国人男性(30代)

逆に日本語にした場合のほうが分からないのですが、「forced to work = 強制労働」だという気がします。forced to workといいますと「自分たちの意思通りにできたのなら働かなかった」という意味も含まれるので。“forced” は英語だと「したくないことをさせられた」とのニュアンスがあります。

・米国人女性(30代)

私も「forced to work」なら100人のうち99人が「強制労働」と受け取ると思います。「force to ~」は普通に「無理やり~させる」という意味なので。

しかし、たまに「forced to ~」は「~するしかなかった」に訳せる場合があります。たとえば「The last train had left, so we were forced to walk home」なら「終電はもう出発したので歩いて帰るしかなかった」になります。

それとは別に矛盾しているのですが、「forced to ~」を「~するしかなかった」という意味になるのは、実はそれをしない選択してもいい場合です。

たとえばいくらでも「The last train had left, so we were forced to walk home」は「終電はもう出発したので歩いて帰るしかなかった」という意味に訳しても、実は歩かないで駅前で始発電車までずっと待つことも可能だったと受け取ることもできるからです。

まとめて言えば、「forced to ~」は普通に「むりやり~をさせられた」、場合によって「しかたなくて~するしかなかった」。記事の話ではそんな「しかたない」みたいな軽い感じの話でもないし、本人たちがその仕事をしない選択は許されなかったこともあって、この場合の「forced to work」ならほとんどの英語ネイティブが「強制労働」と理解すると思います。

・米国人女性(30代)

私は「強制労働」と受け取ってしまうかと思います。「forced to work」と「forced labor」が意味的に近いですが、ニュアンスが違うと思いますね。

私にとって、forced labor はとても深刻なケースだけで使われてるが、forced to work はもう少し日常的なケースでも使われてる感じがします。

たとえば、forced to work は「お母さんに無理矢理働かされた」というときにも使える表現だと思いますが、この場合はforced labor は言い過ぎになります。forced labor は人権侵害 があるときだけ使われていると思います。

――結果としては、残念ながら3名ともが「強制労働があった」と受け取ってしまうものだと判明した。「forced labor」という言葉よりもニュアンスは柔らかいものの、英語圏の人々には強制労働だと思われてしまうようだ。

参照元:NHK産経ニュース
執筆:なかの