ヴァンパイア(吸血鬼)といえば、輝くほどの白い肌に美しい顔、強く、優しく、残酷で、一途に愛を貫くロマンチックな存在……って、それは映画『トワイライト』の見・過・ぎ。本物のヴァンパイアは、もうちょっと違うようだ。
以前、1万6000人のヴァンパイアがイギリスで暮らしていることをお伝えしたように、世界各地にヴァンパイアは存在している。そしてこの度、アメリカのヴァンパイアがどのように暮らしているかが明らかになったのだ。
・5年間ヴァンパイアの実地調査
2009年から、米ニューオーリンズやバッファローに住むヴァンパイアの調査を続けてきたジョン・エドガー・ブローニングさん。彼によると、パッと見は普通の人間であり、自分の正体を隠していることが多いので、ヴァンパイアを見分けることは容易ではないという。
けれども、根気よく探せばめぐり会えるということで、これまでブローニングさんがニューオーリンズで出会い、インタビューを試みたヴァンパイアは35人。しかし地域に暮らすヴァンパイアの数は、その倍以上なのだとか。年齢は18才〜50才で、男女率は半々だ。
・有志の人間から血をもらう
ヴァンパイアと言えば「吸血」だが、現代に生きるヴァンパイアたちも、動物や人間の血を必要とし、人間のエナジーを吸い取る。しかし映画に登場するように、誰かを襲って血を吸うことはなく、有志でドナーとなってくれる人間から血やエナジーを分けてもらうのだ。もちろん、ドナーの健康チェックだって行われ、問題の無い血液だけを摂取する。
「鉄や銅の味がする」と表現されることも多い血だが、ドナーの精神状態によって味が変わるというのだから興味深い。また、果物や魚介類、野菜なども食べるが、やはり血を飲み、人間のエナジーを吸収した方が気分が優れ、活力に満ちると話すヴァンパイアも多いのだった。
・地域によってヴァンパイアの傾向が違う?
ブローニングさんの調査では、地域によってヴァンパイアの傾向に違いがあることも分かっている。バッファローに住むヴァンパイアは、世界中の仲間と積極的に交流を行う。
一方のニューオーリンズは地元型。コミュニティーを形成し、お互いに助け合うことが多いようだ。その上、チャリティイベントを開催して、ホームレスを支援したりと、地域の人間たちとのつながりも大切にしている。しかしヴァンパイアなのは内緒。自分たちの身を明かさずに、活動を行っているのだ。
・映画『トワイライト』に触発された訳ではない
そんな彼らに対して、「映画『トワイライト』やドラマ『ヴァンパイア・ダイアリーズ』なんかに影響されたんでしょ?」なんて言う人もいるようだが、それは単なる偏見。なにより、彼らはヴァンパイアを題材にした小説や映画なんかを、あまり見ないようだ。
彼らの多くは、思春期に入って、エネルギーが不足していることに気がついたり、血を欲するようになって、徐々にヴァンパイアであることを自覚するようになったと話している。
・人間との共通点もいっぱい
また本調査から、現代のヴァンパイアたちが四六時中ゴシック・ファッションの格好をしている訳ではなかったり、棺桶を寝床にしている人なんて滅多にいないことも分かった。コウモリに身を変えたり、不老不死……なんてこともないようだ。
その代わりに、長くとがった犬歯をつけ、夜行性などいう点では、世間に流布する “ヴァンパイアらしさ” が残っていると言えるだろう。そして、信仰する宗教は自由で、性癖も様々。結婚したり、離婚したり、子供がいたりと、人間と変わらない点をたくさん有していることも判明したのだった。
人間社会に溶け込んでひっそりと暮らす、現代のヴァンパイアたち。“人間じゃない” からと迫害されることなく、彼らが幸せに生きていけるほど社会が成熟することを願う。
参照元:The Conversation(英語)
執筆:小千谷サチ
Photo:Rocketnews24