東南アジアの国々には、檳榔(ビンロウ)という植物の種を噛む古い風習がある。石灰と一緒に噛むことで成分が反応。軽い興奮・酩酊感が得られるという仕組みで、つまりはタバコみたいなものだ。

吸血鬼みたいに歯が赤くなり、依存性があり、長期で嗜むと口腔がんになる可能性も指摘され、愛好家(ほとんど男)は年々激減しまくりだそうだが、それでもなお、檳榔愛好家がダントツに多い国といえば、お隣りの国・台湾である。販売店の数もおびただしく、販売合戦も熾烈だ。

檳榔を売るスタンドに、色っぽい女の子が目立つようになったのは、90年代半ば頃からか? 檳榔販売以外のサービスは特に無いらしいが、それでも男たちはババアより若い娘の店に足を運び、とりわけセクシーな娘から檳榔を買った。これを機に、町のあちこちで娘たちの激しい露出合戦が繰り広げられることになったのは言うまでもない。

檳榔売りのスケスケ少女たちは「檳榔西施=ビンロウ美女」と呼ばれ、衣装に使われる布の量は年を経るごとに減っていった。

スタンドの並ぶ一角は風俗街の如きで、よそ見して事故を起こすドライバーが激増。風紀上の問題もあり、野放しだった檳榔業界にも遂に規制の波が到来する。

かつてのカオス状態がまるでうそだったかのように、静かになった檳榔業界。だが、昔のピンクな黄金時代を忘れられないファンも多く、空港の土産店ではそんなマニアのために生み出された究極の商品「ビンロウ絵葉書」が絶賛発売中!

線にそって切り込みを入れ、指示通り折り目を入れれば、ちょっとしたビンロウ・ジオラマが完成。目を閉じれば瞼の裏にあの喧騒が……。一枚40元、お土産にぴったりだ。
(取材・文・写真=クーロン黒沢

▼全盛期にはこんな娘が!

▼こ、ここここ、こんな姿で!?

▼で、失意の中、台北桃園空港で入手したビンロウはがき

▼裏返すとこんな感じ。切り取り線に沿って工作すると

▼檳榔店のジオラマ完成。古き良き時代に思いを馳せます