タイ、バンコク。中華街の果てに、アキバの柔らかい部分だけ抽出したサパーンレックという場所があるが、そのサパーンレックからわずか二百メートルほど歩いたところに、まるで昭和のアキバを煮詰めたような、コチコチに硬派な一帯が広がっていることはあまり知られていない。人はこの界隈を「バンモー」と呼ぶ……。

畳二枚ほどの小さな半導体ショップがぎっしり詰まった電子の殿堂「バンモープラザ」を中心に広がる、半径百メートルほどのトワイライト・ゾーンは、アキバのパーツ街に匹敵する規模を誇り、周辺国からも多くのバイヤーが訪れる。

スピーカー店、数百種類のリモコンをストックするリモコン店、工具店など、至る所、底なしに地味な専門店ばかりで、女・子供をはじめ、チャラチャラした若者を見ることはあまりない。

なかでも多いのが「修理店」である。弱小メーカーの製品も多いタイの電機業界。日本と比較にならない頻度で電気製品が故障する。弱小メーカーほどサポートは貧弱。そこで修理専門店が活躍するんですね!

サービスセンター風の立派な修理センターもあれば、そのすぐ表の路上にパラソルを立て、折り畳みテーブルでテレビを修理しまくる汗みどろの集団もおり、どちらの店もそれなりに繁栄してるのがすごい。僕ならタダでも後者の店には出さないけど……

ブラウン管の残留高電圧がスコールの飛沫に伝わって感電死したりしないのか? 心配になってしまうけど、長年のノウハウで大丈夫なんだろう。きっと……

ストイックな雰囲気に肩が凝るかと思いきや、エッチなコピーDVDを売る露店も非常に多く、まさにカオス。よそでは柱の陰から「シャチョ、セクシームービィ……」などとコソコソ声をかけてくるDVDの売り子も、ここバンモーでは治外法権の掟でもあるのかと思うほど威風堂々。大音量で音楽をかけ、踊り狂いながらエロDVDを売る集団を目撃したときは言葉を失った。

但し皆さん、全身モンモン、モノホンオーラ全開の方々ばかりで、汗まみれ、白目がちと、カメラを向けるにはあまりにもリスクが大きく、ベストショットをお届けできないのが心残り。次回がんばりますね。
(取材・文・写真=クーロン黒沢

▼見渡すかぎり、硬派な男たちだ

▼路上修理店。大雨が降ったら大惨事になりそう

▼ものすごい熱気と湿気のなか、DVD屋台に群がる男たち