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『無名の偉人』とは、人ぞれぞれの経験や体験を聴くインタビューです。世の中、名のある人間ばかりが功績を残しているのではなく、誰もがそれぞれの誇りを持って生きている。その人知れず紡がれたささやかな物語を紐解く。それが、インタビュー『無名の偉人』です。

過去の【無名の偉人】を読む

大前みどりさんは出版プロデューサーであり、企業のビジョンムービーの制作を手掛けています。過去に手掛けた書籍は、累計23万部にも上るベストセラーに。制作するビジョンムービーは、企業の社内研修や新人教育、就職説明会等に用いられているもので、ヤマト運輸やヤクルトなどの大手企業の制作に携わり、現在制作依頼は1年先まで予約待ちの状態とのこと。書籍やムービーを制作する上で、大切にしていることをインタビューしました。

1、現在の活動と、その活動を始められた経緯を教えて下さい。

出版プロデュースと企業のビジョンムービーの制作を行っています。今年の4月に前職を卒業して、今は独立して自分の会社で業務を行っています。

出版プロデュースは、元々印刷会社の制作部門の経験があり、前職で経営コンサルタントの先生の秘書を務めさせて頂いて、プロデュースを経験させて頂きました。その経験を活かして現在も続けている状態です。ムービー制作に関しては、前職で機会を与えて頂いたのもあるんですが、元々のきっかけは子供の通う保育園で、卒園式に『成長の足跡』みたいな映像を見たことがあったんです。写真を音楽にのせてスライド式に見せるフォト・ムービーだったんですけど、それがとても感動したんですね。映像を見ながら、子供と過ごして来た時間が走馬灯のように蘇って、見ていて涙が止まらなかったんです。そういう感動を会社や組織でも共有出来たら、職場や仕事にも誇りが持てるんじゃないかと思って、保育園で見たムービーを参考に作るようになりました。

2、なぜ、ムービー制作をやられているんですか?

世の中の多くの人が、『名もなきヒーロー・ヒロイン』だと思うんです。誰もが有名になる訳じゃないし、誰もが偉大な功績を残す訳ではないですよね。だからと言って、無駄なことをやってる訳ではなくて、一生懸命お仕事をされてると思うんです。私はムービーの制作で、一生懸命働く人たちに光を当てることが出来ればと思ってます。ムービーを見て、その仕事の素晴らしさを思い起こしてもらえたり、その仕事を知らない人にそこで働く素晴らしさを知ってもらったり。ムービーで人と人の『つながり』を作って行きたいです。

3、ムービー制作をやっていて、一番よかったと思ったことは

ムービー制作は完成までに時間が掛かります。まず、実際に現場でお仕事をされてる皆さんから、仕事を通じた感動体験を集めます。アンケートなどで実際にあったエピソードを集めます。ヤマト運輸さんの場合は、約1000人の方のエピソードから、コレはと思うものを10件ほどに絞り込みました。そして、そこから構成を組みます。

10件に絞ったものがなぜ感動したのか、どうして心に訴えかけて来るエピソードなのかを考えます。時にはエピソードを書いて頂いた社員さんにお逢いして、お話を聴き、その人の言葉でエピソードを自分なりに体験します。職場の雰囲気や働く皆さんの人柄を肌で感じて、内容全体のメッセージを描いて行くんです。

制作は、現場で起きたそのエピソードをそのまま伝えられるように、徹底的にこだわって作ります。こだわってこだわって、こだわり抜いて、何度でも手直しを重ねます。

そうして、出来た作品を自分が最初に見るんですけど、その最初に見る時が、一番よかったって思う瞬間ですね。内容によっては、自分自身と働く皆さんがクロスオーバーして、涙が出て来るんですよ。仕事を通じて、本当に素晴らしい体験をされている方もたくさんいらっしゃいます。その景色を想像すると、感動して泣けて来る時があります。自分が本当に感動したエピソードの作品は、やはり良いムービーになりますね。

4、ムービーを制作して行く上で、大切にしていることはありますか?

普段から、物事をつぶさに感じ取るように心掛けています。見落とすような些細な出来事からでも、感動体験って味わえると思うんです。そのために普段から、3つのことを実践しています。

1.感動するもの、こと、人に触れる

2.なぜ感動したんだろうと、繰り返し繰り返し自分に問い掛ける(最低5回は問い正してみる)

3.感動したことの共通点を探す

自分のセンサーを常に敏感に反応するようにしています。

それから、もう1つ、これも大切なんですけど、作品で嘘はつかないようにしています。やろうと思えば、大げさな演出とか話を誇張したりも出来ると思うんです。でも、それをやってしまうと、本当に人の心に触れるものは出来ないんです。だから、エピソードのそのままを伝えられるように、注意しています。作ったものに嘘はつけないですね。

5、これからの夢や目標について教えて下さい

自分の作るムービーを『感動ムービー』と言っていますけど、決して、感動させようと思ってる訳ではないんです。作り上げるものから、得られる結果が感動であって欲しいと思うんです。そのために1つひとつを積み重ねて、価値あるものを作り続けて行きたいです。そうして、『名もなきヒーロー・ヒロイン』に光を当てられたら嬉しいです。ムービーを通じて、知らない人同士が心を通わせる、そういうものを作り上げて行きたいです。

2児の母親にして、起業されている大前さん。23万部のベストセラーをプロデュースしているにも関わらず、その人柄は飾らないもので、非常に親しみを感じました。今後のご活躍に期待します。

<プロフィール 大前みどり>

印刷会社の制作部門での英文、和文テクニカルライターを経て、経営コンサルタント会社に転職。社長秘書を務める傍ら書籍のプロデュース手掛け、累計23万部のベストセラーを生み出す。また、会社案内の「感動ムービー」制作では、大手企業からの依頼が相次ぎ、1年待ちという状態に。09年4月独立し、『e-five plannning』設立。ワールドカフェウィーク実行委員会代表。

<ワールドカフェウィーク2009> http://world-cafe.net/

大前さんが実行委員会代表を務めるトークイベント。11月15日(日)~11月21日(土)は心を開き、聴いて語る、対話週間にちなんで開催される『ワールド・カフェ』イベント。15の共催団体、のべ600人の参加を予定している。

■参考リンク
インタビュー『無名の偉人』大前みどりさん
大前みどりさんの会社ホームページ
大前みどりブログ フローに生きる技術


▲大前さんの作品『人に溢れた駐車場』


▲大前さんの作品『強い子』

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3 3つの物語とも良い話だけど…
2 自分の望んでいたものと違った
3 期待値を上げすぎた?
5 感動は身近なところにあった!
5 感動をありがとう