アジアの裏路地にひろがる深淵を検証すべく、世界を旅して15年。

今回入手したのは「カンボジア・プノンペンの薄汚れた横丁に、さる世界的スーパーセレブがひっそり、お忍びで、おしゃれなレストランを経営しているらしい」という、事実なら世界的スクープに違いないとっておきの噂。で、苦労して探し当てたのがこちらのお店、その名も「ランボーレストラン」である!

ど真ん中のネーミング、Google画像検索の臭いがプンプンする写真、高さ4メートルの電飾看板はインパクト抜群。スタローンの発案だとすれば、これまでにない直球勝負の気合いを感じる。

早速、妖しげなグリーンの蛍光灯に照らしだされた内部に足を踏み入れる。閑散とした店内に客の姿は見当たらず、あるのは中華風の仏壇と大量の観葉植物。ランボーレストランだけにジャングルを意識しているのだろうか? なーんて……

二階席に案内され、蝶ネクタイの男が差し出したメニューを覗き込む。あいにくそいつはクメール文字で埋め尽くされた現地人仕様で何ひとつ判読不能。ハリウッド・スターの店なら英語メニューくらい用意しとけ……いや、待てよ! ゲリラ戦の基本は周囲に溶けこむこと……。それには語学力が必須である。現地メニューくらい読めるようにしとけってメッセージか? さすがはランボーレストラン。

結局メニューは読めず、蝶ネクタイにお薦め料理を尋ねると、素朴な英語で「フライドライス、アンド、フライドヌードル」とのお答え。ダブルで炭水化物はどうかと思うも、ソ連軍に拷問されるよりはマシ。私のコミュニケーション能力ではそれ以上突っ込めず、言われるがままオーダー。それにしてもビール二本追加して総額600円はカンボジアといえど安い。同じくスタローン絡みで経営が傾いている「プラネット・ハリウッド」の教訓を活かしてるのか?

トイレの最中。背後からぬっと現れた上半身裸の大男に、刃渡り60センチのサバイバルナイフで喉笛を切り裂かれやしないか……妙に落ち着かなかったものの、充実した気分で食事を終えた私。

帰り際、見送りに来たウェイターにつたない英語で店名の由来を尋ねると、彼は困った顔でそっと視線をそらした。
(取材・文・写真=クーロン黒沢

▼ここがウワサの「ランボーレストラン」だ!

▼閑散としすぎている店内。実にあやしい……。

▼フライドライス、アンド、フライドヌードル。そしてビールはアンコールだ!

■参考リンク
Planet Hollywood(プラネット・ハリウッド)英文