雲ひとつない晴天の1月のある昼下がり、JR身延線、富士宮駅前で雄大な富士山をバックに大声で男性が何か訴えている、いや、ガナっている。きちんとスーツを着込んでおり、他にも何人かの男性が並んでいるところからすると別に怪しい軍団ではないらしい。駅出口の高架橋上から眺めるともなく見ている男性に聞くと、近くにある管理者養成所の研修の一環だそう。

管理者養成所とは社員教育、特に部門を担う管理者向けの研修所で、管理職に求められる基礎的能力を育成するのだそうだ。通称「地獄の訓練」とはあな恐ろしい。しかも13日間で30万以上もするからかなり高額。

ガラガラ声で一本調子(失礼)で大声を出しているので演説かと思いきや、「セールスガラス」という歌を歌っているのだった。が、それにしても、全く歌には聞こえない。3分ほどの「歌」が終わると、男性は「ありがとうございまーす!」と深々と一礼。すると、向かい側にいた厳しい目付きの男性が両手を挙げて大きな丸を作った。歌手のオーディションなら落第だったろうが、研修では及第点をもらえたようだ。

この駅では見慣れた光景らしく、駅のホームでは、電車を待つ年配の男性客が「あ、丸が出たな」「女には甘いからすぐ丸を出すんだよな」などと言いつつ見物している。かと思うと女子高生は「またやってる~」「あの人達って、エリートなんだって~」「あんなのやってまでエリートになりたくな~い」などとゆるいコメントを発していた。

「これで研修は終了ですか」と歌い終えた男性に聞くと、まだまだ続くそうだ。しかし、駅前で大声を出すことは、迷惑防止条例にひっかからないのだろうか・・・・。また、これによって管理職に求められる基礎的能力が育成されるのだろうか。色々な意味で不思議な光景だった。

記者:セリー真坂

▼その時の様子がこちら。