いまだにマリトッツォのことを忘れられずにいる。大量の生クリームが挟み込まれたその魅惑的な菓子パンは、かつて大いなる衝撃をもって一世を風靡し、しかしブームの終焉とともに忽然と姿を消してしまった。

人々の記憶からマリトッツォの存在が消えゆく中、筆者の心は約5年が過ぎた今なお、その魅力にとらわれたままである。ある日突然、何事もなかったかのようにひょっこりとパン売り場に帰ってきて、またブームを見せてくれるのではないかという幻想を捨てきれずにいる。

人間はここまでパンに対して未練がましくなれるのかと痛感しているが、しかしどうやら、未練を抱えているのは筆者だけではないらしい。というのも、なんとこのたび2026年6月23日に発売されたセブンイレブンの新商品が、マリトッツォに酷似しているのである。

その商品の名前は「スイーツバーガー レアチーズ&アーモンド」という。「バーガー」の単語が示す通り、ブリオッシュ生地で作られた2枚のバンズのあいだに、アーモンドとオレンジピール入りのクリームチーズが詰まった菓子パンである。価格は税込313円となっている。

勘の良い方は気付いたであろう。あるいは筆者のように、勘が鈍くともマリトッツォに脳を支配されていれば気付いたであろう。「ブリオッシュで具材を挟んでいる」点といい、「オレンジピールが使われている」点といい、本商品はマリトッツォとの共通項だらけなのである。

おまけにセブンイレブンは、実のところ今年2026年1月に「突如としてマリトッツォを復活させ、販売しだした」ことがある。残念ながらそのマリトッツォの定着は叶わず、次いでそこから半年と経たぬうちに、今回の「スイーツバーガー」が登場したというわけだ。

少なくとも筆者の目には、これら一連の動きの奥に、同店の抱える深い未練が見える。他の誰からも理解されずとも、筆者だけは同店に寄り添うことができる。

そういうわけで、「パンへの未練をコンビニと慰め合う」という類を見ない試みを実行すべく、筆者は本商品を購入した。


パッケージを剥くと、直径約7cm、高さ約6cmほどの中身が出てきた。価格を考えれば菓子パンにしては小ぶりだが、バンズに挟まれているクリームチーズの塊には、マリトッツォの生クリームに似た視覚的インパクトがある。

しかし、とはいえ、である。実際に口に含んでみると、「スイーツバーガー」はマリトッツォのようでマリトッツォではない、「新たなスイーツ」と表すのが正しい仕上がりだった。幸福をもたらす口当たりはマリトッツォを彷彿とさせるものの、味わううちに差異が浮かんでくる。

当然と言えば当然なのだが、まずもってクリームチーズと生クリームの違いは大きい。コク深く濃厚ながら後口が爽やかで、アーモンドやオレンジピールのアクセントも手伝い、マリトッツォよりも食べやすく感じる。それでいてとろけるような滑らかさも備えている。

加えて同じブリオッシュであっても、こちらの生地はマリトッツォのようなふんわり具合というより、沈む歯をやや押し返すもっちりとした食感だ。その弾力あるバンズが前述のクリームチーズと合わさり、絶妙にマリトッツォから逸れた新境地を切り開くことに成功している。

繰り返しになるが、改めて書くと「スイーツバーガー」はマリトッツォの再来ではなかった。もしかしたら、マリトッツォへの未練を抱えていたのは筆者だけなのかもしれない。セブンイレブンはすでにそれを断ち切っていたのかもしれない。


「勝手にコンビニを仲間だと思って舞い上がってしまった」という類を見ない後悔に打ちひしがれつつ、ともあれそれはそれとして、「スイーツバーガー」に舌鼓を打つ。このスイーツに出会えてよかったと思う。

そしてその出会いは、愚直にマリトッツォを忘れずにいたからこそ得られたものでもある。人生、何が功を奏するかわからない。クリームチーズとも生クリームとも違う、ほんのりとした甘美さを胸に覚える筆者であった。

参考リンク:セブンイレブン 商品紹介ページ
執筆:西本大紀
Photo:RocketNews24.

▼マリトッツォを忘れられない方もそうでない方も、一度ご賞味あれ