とんでもない雨の日だった。


少し歩いただけで靴の中までズブズブ。自転車で移動するつもりだったが、これはもう無理だと諦めてタクシーに乗った。


車内で運転手さんと、「今日はお客さん多いでしょう」なんて話をしていたら、


「お客さんにはそう言われるんですけど、正直、怖くて帰りたいですよ」


とのこと。


雨の日はタクシー需要も増えるだろうし、てっきり稼ぎ時なのかと思っていた。しかし運転手さんにとっては、そう単純な話でもないらしい。


「怖いって、雨の日って、何が一番怖いんですか?」


運転手さんは即答した。


「自転車ですね」


なるほど。この大雨の中でも、自転車は走っている。もちろんカッパを着ているのだが、そのカッパもまた怖いのだという。


後ろが見えない。横も見えにくい。そもそも雨で視界が悪い。そんな状態で自転車が急に動いたとして、もし車と接触したら……。運転手さんからすれば、気が気ではないだろう。


実際、車内から外を見ると、この豪雨の中でも自転車が走っていた。


「いるんですよ、自転車」


と運転手さん。


私もカッパを着て自転車に乗ったことがあるので、わかる。あれ、本当に後ろが見えない。なんなら横も。


雨の日は自転車側も怖い。でも、車を運転している側から見ても、同じくらい……いや、それ以上に怖いのかもしれない。



タクシーを降りる時、


「運転、お気をつけて」


と声をかけた。運転手さんからも、


「気をつけて」


と言われた。


タクシーは大雨のなか去っていった。運転手さんが家に帰れるのはいつになるのだろうと思いながら、私は自分の家のドアを開け、玄関に入った。


靴はもちろん、靴下までグチャグチャに濡れていた。


執筆:GO羽鳥
Photo:RocketNews24