子どもの頃に慣れ親しんだ曲を、AIを使ってロックにアレンジしたらどうなるか? 『どんぐりころころ』『こがね虫』に続いて、今回は『かごめかごめ』に挑戦。

前回のこがね虫は、メロディが堅実で安定しているうえに、謎めいた歌詞も魅力的で、ハードロックとの相性抜群! ロックとの親和性がとても高かったのだが、今回はどう転がるのか? ではさっそく実験してみよう。

・厄介になった権利の問題

今回もアカペラで歌って、メロディラインを楽曲制作AI「SUNO」に教え込もうとしたのだが、またしても権利についての警告文が出た。

「This audio matches an existing recording. Our system matched this upload to a known recording. If you own the rights, please contact 」

(この音声は既存の録音と一致します。システムにより、このアップロードが既知の録音と一致することが確認されました。権利をお持ちの場合は、ご連絡ください)


この曲は「パブリックドメイン」(公共財産)である上に作者不詳で、作詞も作曲も誰のものなのかわからない。にもかかわらず、権利がどうこう言いやがって……。裁判沙汰で過敏になっていて、レコーディング機能で何度歌い直しても通らない。

結局AI(Gemini)と相談して、歌詞なしの「ラララ~♪」で歌い、なんとかメロディを伝えることができた。その上で、一旦ピアノ弾き語りでアレンジし、私の「ラララ~♪」を清書して、それをカバーするという段取りをとった。

それにしてもアカペラで通らんとか、マジで何とかならんのか。厄介なことになったよ……


・オルタナティブロックアレンジ

さて、まず最初に挑戦したのは、レイジ・アゲンスト・ザ・マシーン風の90年代「オルタナティブロック」アレンジだ。とくに意図があったわけではなく、ハードなリズムにのせたらどうなるのかを聞いてみたくて、次のように指示を出した。

「Heavy funk metal, rap metal,sudden dynamic explosion, loud distorted bass, heavy guitar riffs, aggressive driving drums, raw energy, 90s alternative metal」

(ヘヴィ・ファンク・メタル、ラップ・メタル、突如として炸裂するダイナミズム、大音量で歪んだベース、ヘヴィなギター・リフ、攻撃的で疾走感のあるドラム、剥き出しのエネルギー、90年代オルタナティヴ・メタル)


そうしたところ、カバー元のピアノの音が混ざってしまったが、まあ満足の行く仕上がりに。

「鶴と亀と滑った 後ろの正面だあれ?」をメインリフに据えて曲を展開。レイジっぽくはないけど、聞き応えのある1曲に仕上がっている。最後のギターによるリフレインも凝っていてなかなか秀逸な展開ではないだろうか。



・スカアレンジ

続いては「スカ」のアレンジ。これは先のオルタナティブロックアレンジを作っている途中で、裏打ちのリズムが生成されたのを聞き、試すことにしたものだ。意外にもこの曲、裏打ちも合う。ということは、当然スカのビートにはしっくり来るに違いない。ってことで以下の指示文を出した。

「energetic ska punk, fast tempo, heavy offbeat rhythm, prominent brass horn section, walking bass, driving drums, catchy and intense, upbeat ska dance」

(エネルギッシュなスカ・パンク、高速テンポ、ヘヴィなオフビート・リズム、際立つブラス・ホーン・セクション、ウォーキング・ベース、疾走感のあるドラム、キャッチーかつ強烈、アップビートなスカ・ダンス)


高速裏打ちは、どんなかごめかごめを生み出したのか?

不思議なほど馴染んでいる。歌詞の内容は、決して明るいものではなく、むしろおどろおどろしささえ感じさせるものなのに、このビートにのると、その謎さが薄らいでいるようにすら聞こえる。ひょっとすると、もっと強いビートでも違和感はないのかも?


・インダストリアルロックアレンジ

さらに強いビートを試すために、工場機械の金属音のようなノイズを取り入れた「インダストリアルロック」アレンジに挑戦。古くからあるわらべうたと、工場機械ノイズはどんなマリアージュを見せてくれるのか? 指示文は次の通り。

「Industrial rock, heavy distorted guitar riffs, four on the floor dance beat, electronic synthesizer bass, dark energetic, driving rhythm」

(インダストリアル・ロック、激しく歪んだギター・リフ、4つ打ちのダンス・ビート、エレクトロニック・シンセ・ベース、ダークかつエネルギッシュで疾走感のあるリズム)


まさかと思ったが、インダストリアルも合う! なんてこった、4つ打ちが合うだけでなく、どこか謎めいた歌詞も活きているじゃないか。誰が想像できただろうか? かごめかごめと工業機械のノイズが同居する未来を。

ここまで来たら、さらに激しいビートと合うことも容易に想像がつく。



・ドラムンベースロックアレンジ

そして最後に、「ドラムンベース・ロック」風のアレンジに挑戦。先のインダストリアルでもいけたのだから、きっとさらに速いリズムでも馴染む気がする。見せてくれ、素朴と混沌の融和を。いにしえと近未来の融合を! 指示文はこう!

「Industrial rock, fast drum and bass beat, frantic breakbeat percussion, heavy distorted bass synthesizer, aggressive electric guitar riffs, chaotic driving energy, dark atmospheric, frenetic rhythm」

(インダストリアルロック、速いドラムとベースのビート、狂乱的なブレイクビートパーカッション、重厚な歪んだベースシンセサイザー、攻撃的なエレキギターリフ、混沌とした推進力、ダークな雰囲気、熱狂的なリズム)


イメージとしては「ナインインチネイルズ」的なサウンドに期待しているのだが……。

来たー! オルタナティブロックでも十分イイ線行ってると思っていたが、それをはるかに超えて来やがった。攻撃的なビートと、「後ろの正面だあれ?」の歌詞が異様なほどに馴染んでいる。この曲は不可解な歌詞ゆえにさまざまな都市伝説が語られているのだが、その怖さを象徴するようなアレンジになった。

たしかに「後ろの正面だあれ?」という問いかけは、ホラー的な要素をはらんでいる。それが破壊的なドラムンベースのビートとしっくり来てしまった。


こうして童謡を他のジャンルにアレンジしてみると、全部が「のどかな曲」と思い込んでいたことに気づく。よくよく歌詞やメロディを紐解くと、本当は激しさやおどろおどろしさなど、いろいろな表現を内包していることがわかる。

今後も古き良き童謡唱歌を紐解いて、その曲の持ち味を深掘りしたいと思う。


参考リンク:SUNO
執筆:佐藤英典
イラスト:Gemini