文学作品に曲をつけたらどうなるのか? 楽曲制作AI「SUNO」を使って、これまで『平家物語』の冒頭部分宮沢賢治の『雨ニモマケズ』などの曲をつけてみた。そうしたところ、文章そのものが持つリズムや、詩の訴えかけんとする内容が鮮明になり、言葉の本質を垣間見ることができた。

では、元から曲のあるもの。たとえば童謡や唱歌に、別の曲調をのせてみたらどうなるのだろうか? そう考えた私(佐藤)は、誰もが知っている童謡の『どんぐりころころ』をアレンジしてみることにした。

ただ、その世界観を広げるようなアレンジでは面白くないので、あえて3パターンのロックアレンジに挑んでみたのである。

・パンテラ風どんぐりころころ

まず私が思いついたのは、重くて速いリフのグルーブメタル・スラッシュメタルと言われるジャンルのアレンジをすれば、この曲の違う世界が見えるのではないか? ということだ。

そこで解散、メンバーの死を経て、再結成を果たし、現在も活動を続ける「パンテラ」風のアレンジだ。「グルーヴ・メタルの開祖」と呼ばれる彼らの曲調にアレンジをすれば、どんぐりは「ころころ」を越えるハードさで転がっていくのではないか?

SUNOのスタイルに指定したプロンプト(指示文)は次の通りである。

(Pantera style,)90s Groove Metal, Thrash Metal, Heavy Low-Tuned Chugging Guitar Riffs, Aggressive Drums, Double Bass Kick, Raw Angry Male Screaming Vocals, Powerful Energy, 160 bpm

「(パンテラ・スタイル、)90年代グルーヴ・メタル、スラッシュ・メタル、ヘヴィなローチューン・チャギング・ギター・リフ、アグレッシブなドラム、ツーバス・キック、荒々しく怒りに満ちた男性スクリーム・ボーカル、圧倒的なエネルギー、160 BPM」


冒頭の「Pantera style(パンテラ・スタイル)」は省略した方が良いかもしれない。

というのは、以前はアーティスト名をプロンプトに入力しても問題はなかったが、現在(2026年7月31日)は、特定のアーティスト名を入力すると、書き換えるように指示が出るので、これに限らずプロンプトを入力する際は、アーティスト名がない方が良さそうだ。だが一概に言えないので、それについては後述する。


さて、実際に生成した曲はこれである。

冒頭の重苦しいリフは、たしかにソレっぽい。激しいだみ声でシャウトする「ぼっちゃん、一緒に遊びましょ!」は、どんな遊びなんだよと思わずツッコミたくなるような勢いだ。

そして最後の「泣いてはどじょうを困らせた!」の雄叫びに、絶望すら感じさせてくれる。歌のパートがいくぶん短く、後半はバンドがやりたい放題やってるので、もう少し歌詞のパートが長くてもよかったかも。


・AC/DC風どんぐりころころ

グルーブメタルも悪くはないけど、やっぱり元の曲調が明るいので、明るいアレンジがふさわしいのだろう。次はパンテラ同様にメンバーの死を乗り越えて、再ブレイクを果たした、オーストラリアのモンスターバンド「AC/DC」で挑んでみよう。指示文は以下の通りだ。

80s Hard Rock, Blues Rock, Angus Young style SG Guitar Riff, High-pitched Raspy Male Vocals, Screaming Vocals, Catchy Rhythm, Driving Drums, Straight 4/4 Beat, Raw Electric Guitar, Energetic, 125 bpm

「80年代ハードロック、ブルースロック、アンガス・ヤング風のSGギターリフ、ハイトーンでハスキーな男性ボーカル、スクリーム・ボーカル、キャッチーなリズム、疾走感のあるドラム、ストレートな4/4拍子、生々しいエレキギター、エネルギッシュ、125 BPM」


先ほど、パンテラの指示文について「アーティスト名を省略した方がいい」とお伝えしたが、実はこのAC/DCのバージョンで、アーティスト名を省いたらバンドの雰囲気にかすりもしなかったので、私はあえてこのプロンプトに「AC/DC」を加えて生成した。

アーティスト名を入れると注意文が表示されるが、その名前を別の言葉(たとえばhard rockとか)に自動で書き換えることを伝える内容なので、生成された曲を確認しつつ、適宜アーティスト名の付記を検討して頂きたい。アーティスト名を入れることが多少なりとも、アレンジに影響している可能性があるので。


それでできた曲がコレだ。

イントロで元の曲の旋律を踏襲したギターフレーズが心地良い。ドッタンドドタンと刻むドラムのビートが爽快で、ドライブで聞いても気分が良さそう。

そして、サビの「ぼっちゃん、一緒に遊びましょ!」の大合唱。先ほどのパンテラが危ない遊びを教えるどじょうだったとしたら、こっちは「みんなで盛り上がろうぜ!」と誘う、やんちゃなどじょうのイメージが浮かぶ。

ギターソロ明けの2番は、手拍子とバスドラだけでの大合唱。非常に完成度の高いハードロックアレンジとなった。


・グリーンデイ風どんぐりころころ

やはり明るい曲調が合うことがわかったので、最後はグラミー賞を受賞し、2015年にロックの殿堂入りを果たしている、アメリカのメロディックパンクの雄「グリーンデイ」である。先のAC/DCよりもさらに明るく軽いノリを期待して、以下の指示文を入力した。

90s Pop Punk, American Punk Rock, Fast Melodic Punk, Catchy Power Chords, Driving Fast Drums, Upbeat Up-tempo, Nasal Young Male Vocal, Melodic Bassline, High Energy, Nostalgic Melodic Rock, 180 bpm

「90年代ポップ・パンク、アメリカン・パンク・ロック、高速メロディック・パンク、キャッチーなパワーコード、疾走感のある高速ドラム、アップテンポで陽気な曲調、鼻にかかった若々しい男性ボーカル、メロディアスなベースライン、エネルギッシュ、ノスタルジックなメロディック・ロック、180 BPM」


できあがったのはコレだ。

軽い、カルカルだ。パンテラで感じた重苦しさは一切なく、ひたすら走り抜ける疾走感のみ。どんぐりとどじょうが駆けっこでもしているような、そんな軽快なリズムである。最後の「泣いてはどじょうを困らせた」の歌詞にすら深刻さはなく、どじょうは泣いてないんじゃないか? と疑いたくなる。


以上、3パターンのアレンジを実践してみて、当然ながら歌詞が曲の印象に与える影響は、思った以上に大きいことがわかる。とくにこの曲は童謡として親しまれており、その内容も子どもに向けているものなので、曲調に愛らしさを感じさせるものがないと、途端に馴染まなくなってしまう。

とはいえ、意外な発見はミスマッチから生まれるものなので、今後も童謡や唱歌を題材にして、アレンジを試みてみたいと思う。その挑戦もAIがあればこそ、簡単にできることなので、今後もしっかりSUNOを活用しよう。


参考リンク:SUNO
執筆:佐藤英典
イラスト:Gemini