先日、健康診断を受けてきたのだが、今回は初めて午後からの検診だった。午前中の枠がすべて埋まっていたのだ。

しかし、前日の夕食はいつもと変わらない時間で食べたため、結果的に20時間も絶食することに。

終了後、約1日ぶりの食事に私(あひるねこ)が選んだのは、ラーメンでも定食でもなく、マクドナルドの『グラコロ』であった。

・魔の午後健診

これまで健康診断というと朝8時や9時開始のイメージだったが、今年は予約の関係で13時30分からのスタート。これが全ての始まりだった。

注意事項によれば、午前の予約なら夕食は前日の21時までに済ませ、当日は朝食抜きで来院する。水やお茶なら検査の2時間前まで飲んでもOKだそうだ。

これが午後予約になると、当日の朝食は検査の6時間前までに済ませるというルールに変わる。「なんだ、午前より楽勝じゃないか」と思いきや、現実はそう甘くなかった。


私は今回、胃部X線検査と腹部超音波検査を受診する予定だったのだが、その場合は「固形物の摂取はお控えください」と書いてあるのだ。

調べてみると、ゼリーや具のないスープであれば問題ないようである。しかし……残念ながらそんな都合よくストックはない。結果、私は午後まで何も食べないという選択肢を余儀なくされた。

さらに痛恨だったのが前日の夕食だ。いつも通り子供と一緒に食べたため、時刻は19時。よく考えればもっと遅い時間に食べてもよかったが、その時はすっかり忘れていたのである。


こうして13時30分に検査会場へ。バリウム検査で台の上をグルグルと回され(空腹でバリウムがちょっとおいしく感じられた)、全ての項目が終了して会場を出た時、時計の針は15時少し前を指していた。

前日の19時から何も口にしていないので……実質20時間の絶食だ。



・炭水化物の魔人

さて、何を食べようか? できればとびきりジャンクなものが食べたい……。その時、私の脳裏に浮かんだのがマクドナルドであった。そうだ、マックで『グラコロ』を食べよう。

正直、私は『グラコロ』が特別好きというわけではない。しかし、この時期になると「なんとなく『グラコロ』を食べなきゃいけない気がする」という謎の使命感に駆られるのは私だけではないはず。


席に着き、包みを開ける。約1日ぶりの固形物だ。私は震える手で『グラコロ』を掴み、大きく頬張った……


その数秒後だった。


視界が、漫画『カイジ』のように “ぐにゃあ……” と歪んだのだ。めまいのような、気を抜けば意識がトビそうな感覚。一体何が起きている……?

考えてみれば『グラコロ』は、マカロニとホワイトソースをパン粉で揚げて、さらにそれをパンで挟んだ凶悪極まりない代物。つま先から頭のてっぺんまで、ほぼ小麦粉で構成された炭水化物の結晶体である。

20時間絶食した枯渇状態の胃袋に、いきなりこんなモンスターを放り込んだのだ。血糖値が爆上がりしたのか何なのか、私の体内で未曾有のカタストロフィが起きていることは間違いなかった。

・見知らぬ芋

さらに凄まじかったのがポテトだ。マックのポテトとは、かれこれ35年以上の付き合いになる。味なんて今さら確認するまでもない。しかし、一口食べて愕然とした。


……甘い!?

いつもの香り、いつもの食感なのに、味が完全におかしい。じゃがいもの、素材そのものの甘みを強烈に感じるのだ。私の目の前にはアメリカの広大な大地が広がっていた。お前、本当にマックのポテトなのか?

側(がわ)は見慣れた姿かたちなのに、中身はまったくの別人。『寄生獣』にこんなシーンがあったような気がする……。



実は私は以前、松屋の『ごろチキ』を最高の状態で味わうため、丸一日断食して臨んだことがある。

しかしその時は、味の解像度が飛躍的に上がりはしたものの、ここまでの不穏さは感じなかった。同じ炭水化物の権化であるカレーを食べたにもかかわらずだ。マックと松屋、果たして何が違うのか?


・何を食べる?

店を出た後も、しばらく酔っぱらったようなフワフワした状態が続いた。もしかしたらマックの商品には、空腹の限界を超えた人間にしか知覚できない “ナニカ”──。

人類には早すぎた魔法、あるいは魔術のようなものが込められている……のかもしれない。

健康診断の直後に食事をする際は、どうか注意していただきたい。トブぞ。

執筆:あひるねこ
Photo:RocketNews24.