先日、大阪府のJR鶴橋駅前にある『快活CLUB』に入ったところ一風変わった店だった。外で購入したものの持ち込みがOKで、個室で飲食してもいいかわりに、ドリンクバーがないのである。ネットカフェでそんなことあんの!? マンガ棚はあれど、ほぼ個室が集まっただけの空間はなんだかストイックだった。

記事執筆の環境確保でしか快活CLUBを使わない私(中澤)。その次に入った快活CLUBは埼玉県大宮駅前の快活CLUB大宮店だったのだが、ここはドリンクバーはあったけど個室で飲むのは禁止だった。店員さんいわく「風営法の関係」らしい。え? なんでドリンクバーに風営法が絡んで来るの?

・大宮店のドリンクバーシステム

その快活CLUB大宮店はドリンクバーやソフトクリームバーが個室と別部屋で、その前に数席のオープン席が設けられていた。そこでだったら飲食OKというシステムらしい。

たまにしか利用しなさすぎて、どちらが快活CLUBのスタンダードなのか分からないけど、共通するのは個室でドリンクバーが飲めないということ

・政府は何を企んでいるのか

でも、快活CLUBの個室でドリンクバーを飲んだことがあるような気がするんだよな。ちなみに、私以外にもドリンクバーを個室に持っていこうとして店員さんに注意されている人が結構いた。すなわち、快活CLUBの個室でドリンクバーを飲んだという記憶は私だけの勘違いではないのだ。これは一体……?

風営法自体はずっとあるわけだから改定されてOKだったものがNGになった。今、論理的に納得のいく仮説はこれだ。しかし、快活CLUBの個室でドリンクバーを飲めなくして誰が得するっていうのか。政府は一体何を企んでいるんだ!

・弁護士に聞いてみた

そこで弁護士に話を聞いてみたところ、全然そういう話じゃなかった。話を伺ったのは、平野総合法律事務所の古川亮弁護士。


古川亮弁護士「ネットカフェの個室内飲食の問題は、風営法の2条3号絡みです。

第二条 この法律において「風俗営業」とは、次の各号のいずれかに該当する営業をいう。
三 喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、他から見通すことが困難であり、かつ、その広さが五平方メートル以下である客席を設けて営むもの

要は、これに該当すると風俗営業の許可が必要となりコストがかかりますので、ネットカフェ側はこれを回避しようとします。
そこで、店舗内で提供される飲食物の個室内持ち込みを禁止とすることで、「客に飲食させる営業(飲食物の提供)」には該当しない、という形をとっています。

ただ、「個室内持ち込み禁止」と謳っておけば絶対に風俗営業に該当しないと言い切れるわけではありません。
店内の導線や設備の関係上、持ち込みが可能になっていると考えられる場合や、持ち込みを事実上容認しているといえるような場合はやはり風俗営業に該当する可能性は残ります。

このあたりは店舗毎の個別の設備状況に影響を受ける部分もありますので、店舗毎に判断が分かれる可能性があり(さらに言えば所轄の警察署の考え方自体でも変わりうる)、全店舗で統一した運用というのも難しいかもしれません。

ちなみに、3号の風俗営業は以前から規定自体はあり、最近改正されたものではありません。

以前は店舗内提供の飲食物を個室内で飲食できたとのことですが、おそらくは、以前はそのような状況が常態化していたものの、その後、警察の指導が強化されたことなどの事情があるのではないかと思われます」

・ルールとは何か

要するに、昔からネカフェのドリンクバーはグレーだったって話。私がこのことを意外に感じたのは、ネカフェってドリンクバーを個室で飲めるのが当たり前だと思っていたから。危ない橋を渡っているネカフェも多いということになる。ドリンクバーを個室で飲むだけで?

快活CLUBがしっかりルールを守ろうとしていることが分かった反面、感じたのはそのルールによりネカフェの個室でドリンクバーが飲めなくなることの不毛さだ。おそらくネカフェを取り締まるためにできたルールではないだろうに。

もちろんルールを守ることは大事だけど、常識やモラルや文化は世につれ変わっていく。これはむしろ、ルールを変えるべき事例なのではないかと思った一件であった。

執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.

▼ストイックなスペースになってる鶴橋駅前店

▼価格は安め

▼マンガ棚とトイレ、シャワーはある