
スカイスキャナーが予想する2026年の旅行トレンドが発表された。私にはその1つ、「読書リトリート」がよくわからなかった。読書と関連づいた旅行のことで、文学関連の聖地巡礼の他、旅先であえて読書をするというものらしい。
旅行では24時間観光に専念するという価値観しか持たなかった私は、聖地巡礼は理解するが、旅先で読書のための時間を設けるという考えに懐疑的であったのだ。
しかし、プレスツアーで初手から読書適正が高すぎる圧倒的なスポットに連れていかれた結果、徐々にわかり始めた。だが……まだ議論の余地がある。粘る私にとどめを刺すべく、スカイスキャナーが繰り出した決め手が反則級だった! こ、ここは……!?!?
・しかし
たしかに「ゆふいん 文学の森」は素晴らしかった。あそこでなら、旅行中の貴重な時間を読書に割くのもやぶさかではない。
「ゆふいん 文学の森」は太宰治の聖地にして、読書に適した空間が意図的に作られた、聖地巡礼にも自発的な読書にもパーフェクトな、そういうフルパッケージなスポットだった。
だが、パーフェクトすぎるのだ。あまりに「読書リトリート」への適正が高く、もはや特例と言っていい領域に足を突っ込んでいる。どこにだってああいう場所があるわけじゃないだろう。
そうゴネていたら、連れてこられたのが今回の旅の宿。「ゆふいん 月燈庵」だ。トップの写真が入口からの眺めだが、雰囲気あるな……!
こちら湯布院の駅からは車で10分弱。けっこうな山の中で、周りはこうだ。
とりあえずチェックインしよう。
すげぇ。なんだこの建物は。
今いるのは母屋で、約390年前の山梨にあった庄屋の屋敷を移築・改造したものだそう。はぁー、雰囲気あるわ。
客室はどうなってんだろう。あ、こことは別の建物なんですね? 母屋を出て、橋を渡った先ですか。なるほど。
????
旅館のチェックイン後に渡る橋のレベルじゃねぇだろ……!!! 下に普通に沢が流れてるじゃないですか。
そばには、少し上流で白滝川から分岐した、湯布院駅近くの湯布院デルタで大分川と合流する川が流れている。この沢はその川に繋がっているもよう。
聞くと夏はホタルが見られるらしい。いるだろうなぁ、ここなら。橋を渡った先にはこのような通路があり
両サイドに並んでいる一戸建ての小さな建物が、それぞれ客室や、大浴場、談話室などの施設だ。つまりここは、客室が離れにあるタイプの温泉宿ってこと。
・離れタイプ
旅館にしろホテルにしろ、廊下や周囲の部屋で騒々しくしてる人がいるとか、たまに部屋を間違えてかドアをガチャガチャする人がいるとか、そういうのがたまにある。
しかし離れスタイルなら落ち着いた宿泊タイムの確約度がダンチ! こいつはテンション上がるぜ!! 客室内部はグレードなどで色々種類があるようなので、公式HPにまとめられているものを見てくれ。
ちなみに私が泊まったのはスタンダードな離れの1つだが、部屋に露天風呂がついているぞ! 湯布院なので言うまでもなく温泉。大浴場も別にあってそれも素晴らしいが、部屋に温泉の露天風呂が付いているというスペシャル感は別格だよなぁ。
・そういうことか
さて、写真からお分かりいただけると思うが、風呂の紹介などをしていながらも、実はまだ割と早い時間だ。空が明るいだろ。
ここでちょっとした裏話をしよう。一般的にプレスツアーというのは、スケジュールが分刻みで過酷である。主催が自信をもって勧める良いものが全部詰め込まれるからだ。
ゆえに往々にして宿につくのは遅い時間となりがちというか、”宿 = 荷物置き場” みたいなケースは珍しくない。宿が取材対象の場合でも、スタッフによる解説はともかく、撮影は一般の宿泊客が写らぬよう深夜や早朝に行うことも珍しくない。
したがって寝るのは午前2時とか3時とかで、起きるのは4時とか5時とか。私なんかは撮った写真のチェックや機材メンテ、その他雑務で寝ない事の方が多いのがリアルな現場の話。
しかし今回、スカイスキャナーは、私をまだ明るい時間から温泉宿に連れてきてしまった。この後は飯食って温泉入って寝るだけという。かつてないくらい時間的余裕がある。
そしてここは山の中。市街地を散策というものでもない。これは何をすればいいんだ……?
_人人人人人人人人人人_
> そうか、読書か! <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄
静かな山の中。温泉が備わった、いい感じの離れタイプの客室。満ち足りた空間で、集中を妨害するものは何もない。“旅先でゆったりと過ごす” というのは、もしかしてこういう事か!?
私の今までの人生における旅には無かった状態だ。旅とは24時間、体力が尽きるまで命を燃やして観光し続けるものみたいな、そういう生き方をしてきた私には、その概念自体が見えていなかった。こ、これがゆとりのある旅……!
世間の日本人は、こういう旅をしているのか。そりゃあ旅先で読書もするというものだ!! 生半可な宿だったら、恐らく私はまた外に繰り出し、翌朝までアクティブに活動し続けるなどして、安らぎとは無縁な時間の使い方をしていただろう。
しかし「ゆふいん 月燈庵」の、客を安らがせる力は圧倒的だ。市街地からのほど良い隔離、贅沢な設備、周辺の自然環境など、全てが強力に、ゆとりある時間の使い方を宿泊客にさせる。
ここまで来て逆張りしても仕方がない。色々と済ませてなお時間があったので、部屋で温泉に入りながら酒をすすり、無料で提供されたアイスを食べつつ、私は素直に持ってきた本を読むなどした。
これが「読書リトリート」か。やっと理解できた気がする。思えば、昨今はどこに行っても観光客で混んでいる。市街地がコミケなみの混雑とかあるものな。
観光地の環境の変化によって、旅行というものから、休息的な要素が薄れているように感じるのだ。標準でハードに命を燃やすタイプの旅行しかしないタイプだったので、私はその側面を軽視していた。
流行るかどうかは、スカイスキャナー的にもあくまでトレンドの予測。しかしこれは、非常に贅沢で、とてもいいものだ。安らぎというものを初めて知った気がする。
いい場所で、いい宿をとって、そこで静かに体を休めつつ、あえてどこでもできる読書に興じる。本を閉じた時に戻る現実が、自宅やその辺のカフェより明らかに満ち足りている。後読感に旅情が加わり、独特の味わいになっている。
これは別にここでなくてもいいのだろう。全国各地に、そういう体験に至れるクオリティの高い宿は存在するのだと思う。しかし今回、初めてそれを私に理解させたのは、「ゆふいん 月燈庵」であった。宿として、ここはガチで間違いない。
参考リンク:ゆふいん 月燈庵、グローバル旅行アプリ スカイスキャナー「トラベルトレンドレポート2026」
執筆:江川資具
Photo:RocketNews24.
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▼大浴場もいい。特別な許可を得て撮影させて頂いた。通常はカメラの持ち込みは禁止。
▼特別室専用の貸切露天風呂もある。真横を白滝川が流れている。
▼夕食も凄かった。季節によって食材が変化すると思うので、参考までに。
豊後牛のすき焼きが出て、その肉はとても美味かった。しかし、このシイタケが肉を駆逐しそうな勢いで美味かった。肉並みにデカくて厚く、異常に旨味が強かったのだ。なんだこれ。大分はシイタケの産地だが、こんな美味いのか。
▼オリジナルの生酒があったので。こういうのは飲まないとな。ソフトに甘口。軽やかで何とでも合いそう。旅館で出すオリジナル品として、いい調整だと思う。湯布院からは遠いが、同じ大分の久家本店が作ってる。久家本店といえば、私は「一の井手」が好きだ。
▼母屋には売店があるのだが、そこに冷凍庫があり、中にオリジナルの抹茶アイスとカボスシャーベットがある。宿泊客は24時間いつでも好きなだけ食べていいそう。神じゃん。
▼湯布院の駅にて。近くにいたタイミングでなんかいい感じの電車が走っていた。今回は車だったが、こういうのに乗って温泉地入りするのもいいよなぁ。
▼駅のそばの「YUFUiNFO」という施設。
荷物の預かり場所があるのは便利。観光協会加盟の旅館を対象に、荷物を運んでくれるサービスもあるもよう。
▼金鱗湖。
そばのカフェ「Cafe La Ruche」。
湖にはティラピアが沢山いた。婚姻色が出ている。産卵床を作って繁殖中に見える。水温が高いんだろうなぁ。温泉のせいだろうか。
市街を探索中、その辺の水路にスッポンがいた。
江川資具







































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