
2025年5月26日から伊藤園が、タリーズブランドで販売を開始した新商品がある。その名も「FIZZPRESSO LIME TONIC」と「FIZZPRESSO BITTER BLACK」。
そう、令和に降臨した最新の炭酸コーヒーだ……! 日本のボトル入り炭酸コーヒー史は2012年の「エスプレッソーダ」から始まり、2023年の「ブラック &ソーダ ガッサータ」まで、完全敗北を続けていると見なして間違いない、もはやコーヒー界の禁忌。
そして最新の敗北史である「ガッサータ」も、タリーズであった。つまり、今回のフィズプレッソは、実質的にタリーズによる2年越しのリベンジだ。こんどこそやれるのか……?
・フィズプレッソ
炭酸コーヒーは全くゲテモノではなく、ちゃんと作れば美味い。美味いからこそ、コーヒー専門店では「エスプレッソーダ」よりもだいぶ昔から、その場で作った炭酸コーヒーを提供している。しかし、なぜかボトルになると、大不評で爆散する。
「フィズプレッソ」はどうだろう? 私は6月9日の朝に東武ストアで見つけた。希望小売価格は194円だが、1本116円だった。
・ライム
まずはライムトニックから試そう。成分はこんな感じ。ライム果汁入りか。
開けると、多少のガスの噴出はあったが、そんなに強炭酸という感じではない。中の下くらいの炭酸力。良い感じのアロマと、ライムの香りが漂う。香りは美味そうだ。
飲んでみると……凄いぞこれは! 私は従来の炭酸コーヒー系が日本国民に受け入れられない最大の理由は、強い酸味とライトめなボディにあると考えている。
今まで色々な新商品の反響を見たり、自分でレビューしてきて、好評だったものや賛同が多かったのは、往々にして酸味が弱く、フルボディなコーヒーだった。つまり多くの日本人は濃くて酸っぱくないコーヒーが好き。
しかし炭酸コーヒーは、炭酸が入ることで酸味が強調されてしまう。また、炭酸水で割る製法であれば、味は薄くなる。最初からだいぶ不利な戦いをしているのだ。
そしてこの「フィズプレッソ」だが、ライムトニックはライム由来のフルーティな酸味はあるが、コーヒー特有の酸味は極めて稀薄!
この10年間で最も酸味が抑えられた炭酸コーヒーに仕上がっている。甘いライムソーダ味に、あとから来る干した藁のようなフレーバー。
なるほど……これは、コーヒーを期待して飲むものではなく、独特の深みとアロマ感がアドされたライムソーダを飲むという感じ。
私は嫌いではないが、一般ジャパニーズがこの世界観について来られるかどうかは諸説あるだろう。
・ブラック
続いてはビターブラックだ。せっかくなので、ここで先代のガッサータにも登場してもらおう。私は炭酸コーヒーのプロなので、今日という日が来ることを予見して保存しておいたのだ。その辺のレビュアーとは先見の明が違う。
香りは……いい感じじゃないか? これは重厚そうな気配がする。ライムと共に、従来の炭酸コーヒーと比して香りは最も優れていると思う。
グラスに注ぐとこんな感じ。
この形状のグラスだと、香りの良さがより引き立つな。
肝心の味は……なるほど。こちらも酸味はとてもよく抑えられている。それでいて砂糖のような甘さはなく、コーヒー特有の苦みと甘みが、控えめの炭酸と共に感じられる。
しかしボディは思っていたよりも軽い。ガッサータより重みがあるが、エスプレッソとしては、まるで水で薄めたかのような味わい。
恐らく、エスプレッソを使用したからこそ、炭酸入りでもこの厚みと重みを維持できたのだと思うが、日本で好まれるには、まだ薄いのではなかろうか。
ということで、タリーズ2年越しのリベンジ作「フィズプレッソ」2種はやれるのか?
まだ厳しいと思う
しかしガッサータ以上の戦いはできると思う。なぜなら「フィズプレッソ」は、「エスプレッソーダ」以降、10年以上にわたり誰も実現しえなかった、酸味の抑制に成功しているからだ。
これは革新的だろう。あとは炭酸入りでなお水っぽさを感じさせず、しかし爽快感は失われない程度の絶妙なボディの重厚感さえ実現できれば、ワンチャンあるのではないか……と思う。
ただしライムなどの果汁入りは、日本人にはウケないと思う。私もコペンハーゲンのカフェでエスプレッソのトニックウォーター割りを見かけるなどしたことがあるので、少なくとも北欧やその周辺では飲まれているのだろう。
しかしこのフレーバーは日本には無いもので、大半にとっては未知の味覚。パッケージ的にエスプレッソ味を期待して飲む者が大多数だろう。そして人間は基本的に、想定外の味を不味いとジャッジするものだ。
そういう、人間の精神由来のジャッジの歪みも含めて推測するに、ブラックはガッサータよりは受け入れられるが、しかし敗北は不可避。ライムは挑戦的すぎて敗北不可避。
私は今作で果たされた革新的な進化に驚愕したし、香りだけでなく味も炭酸コーヒー史上最優の出来だと感じたが、その上でなお、今作も炭酸コーヒー敗北史の新たな1ページとなることは確実。
ちなみに私はブラックをまた買うつもりだ。従来からの炭酸コーヒー愛飲家なら、こいつの出来の良さは高評価だと思う。
江川資具







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