アサヒ飲料が2019年6月25日から販売開始している炭酸入りコーヒー『WONDA CONIC』。今までの炭酸とコーヒーを合体させた商品の成功具合(失敗具合と言ったほうがいいかもしれないが)のせいか、そもそも扱っているコンビニをあまり見かけない。

まあ、不良在庫とか出ちゃいそうだし……。だが、はっきり言わせてもらおう。『WONDA CONIC』は歴代の炭酸&コーヒー系ドリンクの中ではベストな出来だ! これはマジでアリだと思うぞ!!

・敗北の歴史しかない禁断の組み合わせ

炭酸とコーヒーは禁断の組み合わせ……だと思う。体感で毎年どこか一社はチャレンジするものの、成虫のカゲロウのごとく数カ月で消えて二度と復活しない。詳しい売り上げはわからないが、成功したものは1つも無いと思われる。

何より悲しいのは、その短い生涯に反して「マズい」というレビューがネット上に永久に残る点だ。伝説の『エスプレッソーダ』がまさにいい例。もはやコーヒーの枠を超え、ネットで時折出る「歴代の不味い飲み物リスト」的なものに大体ランクインしているレベル。

そんな前例があるためか、炭酸とコーヒーの組み合わせというだけで、無条件に「マズい」と判断する人も結構多いと思う。しかしそれは早計だ。少なくとも今回紹介する『WONDA CONIC』に関してはそう主張したい。

・コーヒーじゃなく新しい1ジャンル

味のレビューに入る前に、飲む前の心構えについて1つ。これはコーヒーとして見てはいけない。全く新しいタイプの飲み物として扱うべきだと思うのだ。どういうことなのか「焼きそばパン」を例に説明しよう。

「焼きそばパン」はウマい。しかし「焼きそばパン」を知らない人に「焼きそば」として食べさせたらどうだろう? 「これはウマい焼きそばです」なんて言われて、パンに挟まれた状態の焼きそばが出てくるのだ。「は? 何だよこのパンは! フザけるなよ!!」と言われても全くおっしゃる通り。

そして食べ終えた感想としては「意味不明なパンが微妙すぎる。はっきり言って焼きそばとしては不味い。パンが無ければウマい焼きそばだった」なんて感じになるだろう。しかし現実に「焼きそばパン」を不味いという日本人はそういないと思われる。

なぜならそれは、誰も「焼きそばパン」を「焼きそば」として食べてはいないからである。「焼きそばパン」という、1つの料理として受け入れている。だから逆に「焼きそばパン」を期待しているところに焼きそばだけ、あるいはパンだけ出てきたらブチ切れるだろう。受け入れる側の捉え方というのは重要である。


・コーヒーゼリー味っぽい

そしてやっと『WONDA CONIC』の話。ここまで長くなってすまない。最初に総評を述べると「柑橘とコーヒー風味なトニックウォーター」だ。コーヒーは超脇役で、メインはトニックウォーター味。

炭酸はかなり控えめで、コップに注いでもほとんど気泡は立たないレベル。見た目ではもはや非炭酸だが、飲むと若干シュワッとするのでちゃんと炭酸は入っている。つまり、炭酸×コーヒーというイメージながら、炭酸もコーヒーも控えめな感じ。



とてもさわやかで軽い口当たりで、ほのかに香るコーヒーっぽさが良い。この希薄なコーヒー感が、どことなくコーヒーゼリーの味に似ている。あるいは、カスカラ(コーヒーの果肉と皮)にも似ている。控えめな甘さも、のどが渇かなくて好ましい。


・メーカーのアツい思い

個人的には好きなフレーバーだが、冷静な目線で考えると色々と疑問がわいてくる。こいつは超高確率で「食わず嫌い」的な心理の被害者となるだろう。利益を追求するならコーヒーと炭酸の組み合わせは鬼門。


なぜ新しく出続けるのか……?


気になったので、今回『WONDA CONIC』を出したアサヒ飲料に電話してみることに。もしかして、「不味い!」という方面でネットでのバズを狙ってみた系の商品なのだろうか? 相当に失礼な質問だが、気になるので聞いてみた結果……


アサヒ飲料「決してそういう、話題づくりのためではございません」


当然といえばそうかもしれないが、ガチである。それこそ『エスプレッソーダ』などの、風評的に爆死したと言っても過言ではない先人もある中でチャレンジしたのも、「次こそは」という思いあってのものだそうだ。

ちなみに、アサヒ飲料は過去に炭酸とコーヒーを組み合わせた商品を出しておらず、今回が初めての挑戦だとか。当然ながら、同社は他社商品の評判も把握している。その上で、なぜチャレンジしたのかも聞いてみたところ……


アサヒ飲料「ヨーロッパの方で、かなり(トニックウォーター入りエスプレッソが)受け入れられているということなので」


アサヒ飲料「私ども独自の製法で日本の皆様にも」


どうやらヨーロッパでは、炭酸とコーヒーは市民権を獲得しているらしい。他社のはいざ知らず、自分たちならやれると自信を持っているのが伝わってきた。アサヒ飲料さん、めちゃくちゃ失礼な質問に答えていただき有難うございました!

ということで、アサヒ飲料が本気で繰り出してきた『WONDA CONIC』。もともとコーヒー味と炭酸の組み合わせが好きな人ならば、言うまでも無くハマるだろう。しかし、これまで同じ組み合わせでNGだった人は……意識から「マズそう」と「コーヒー」という2つのイメージを脳内から排除して飲んでみて欲しい。

「焼きそばパン」が「焼きそば」でもパン単体でもないように、これはコーヒーではないのだ。どちらかというとトニックウォーターメインで、過去のあらゆる炭酸系コーヒーより日本人の味覚に配慮している感がある。それでもNGだったら仕方がないのだが……それでも、これは今までで1番の出来だと思うぞ!

参考リンク:アサヒ飲料
Report:江川資具
Photo:RocketNews24.