いよいよ冬本番。夜はだいぶ冷えるようになった。こういう時は温かいクリームシチューが食べたくなるが……その時ふと思った。クリームシチュールーを全部混ぜたら、クリームシチューの王が誕生するのではないか。


数年前に実施したカレー王作りの時と同様、今回も市販されている様々なシチュールーを買ってきて、それらを一つの鍋にブチ込んでみることに。王が生まれる瞬間を、どうか見逃さないでほしい。

・シチュー王作り

カレーと比べると、やはり圧倒的に商品数が少ないクリームシチュールー。それでも近隣のスーパーだけで14種類も集まった。チーズシチューなどの変わり種はナシ。純然たるクリームシチューのみを使って王を創造したい。


カレーの時は700円なんていう高額商品もあったが、クリームシチューだと高くても400円台といったところ。今回もっとも値が張ったのはクイーンズ伊勢丹の『直火焼クリームシチュールー』で、税込443円だった。


・シチューリスト

参考までに、用意した商品14種類をまとめておこう(順不同)。あなたの家の定番シチューは入っているかな?


ハウス「シチューミクス クリーム」
ハウス「シチューミクス クリーム 濃厚仕立て」
ハウス「北海道シチュー クリーム」
ハウス「コクの贅沢シチュー クリーム」
ハウス「休日のシチュー クリーム」
ハウス「シチュー・ド・ボー クリーム」


S&B「とろけるシチュー クリーム」
S&B「濃いシチュー クリーム」
S&B「おいしさギューッととけ込むシチュー クリーム」
S&B「栗原はるみのクリームシチュー」
S&B「フォン・ド・ボー ディナークリームシチュー」


グリコ「クレアおばさんのクリームシチュー」
白バラ牛乳「牛乳屋さんのおいしいクリームシチュールウ」
クイーンズ伊勢丹「直火焼クリームシチュールー」


・調理スタート

それでは、さっそくこれらのルーを一つの鍋に投入していきたい。といっても、すべてのルーを入れると山小屋の炊き出しみたいな量のシチューが出来上がってしまうので、何等分かされている内の一つを使うなどして調節する。


粉状のルーに関しては完全に目分量だ。


具材はじゃがいも、にんじん、玉ねぎのみ。商品によって水の分量がまったく異なるため、こちらも作りながら目分量で調節していく。20分ほど煮込んだら……


ルーを次々に投入!


自宅でカレーを作る時、複数のルーを混ぜることはよくある。私は同じ商品の中辛と辛口を混ぜたりもしていた。しかしだ。クリームシチューのルーを混ぜるのは、おそらくこれが人生初。それも14種類である。



もしかすると私は、とんでもないクリームシチューを生み出そうとしているのかもしれない。クリームシチュー王……いや、クリームシチュー神の誕生も視野に入れる必要があるだろう。革命を目撃する準備はできているか?


最後に牛乳を適量入れ、かき混ぜることしばし。


さあ、今こそ姿を現すがいい……!


14種のルーによる究極のクリームシチューが……


誰も見たことがない空前絶後の家シチューが……


これだァァァァァァアアア!!!!!!!



…………。


ただのクリームシチューやないかッ!


・想定外

そこにあったのは、信じられないくらい普通のクリームシチューであり、それ以上でも以下でもなかった。給食と言われても何の疑問も持たないだろう。具材が少ないことが、普通さにより拍車をかけている。


いやしかし。思えばカレールーを混ぜた時も見た目はまったくもって普通であった。それがいざ食べてみると、味の深みやコク、スパイシーさなど、あらゆるパラメーターが限界を突破していて驚いたものだ。


あんな複雑かつ重層的な家カレーには、めったにお目にかかれまい。


・実食

おそらくこのシチューにも、同様のメガビッグバンが起きていることは想像に難くない。私は震える手でシチューをすくい、舌の感度をMAXにしてゆっくり口へと運んだ! その結果……


うん。


うん。


何というか……マジで普通である。どれだけ注意深く味わっても普通のクリームシチューである。あれ? おかしいな……ルーを14種混ぜたつもりだったんだけど、あれってすべて私の妄想? ただの単独公演だった?


・ほぼソロ活動

もちろん大変おいしいクリームシチューではあるのだが、とにかく味に複雑さがなく平面的だ。前回のカレー王が3Dオープンワールドなら、このシチューはファミコンの横スクロールアクションゲームである。



別にファミコンソフトが悪いと言っているワケではない。が、あの時の衝撃を想像して食べると、やや肩透かしを食らったような感覚に陥ってしまう可能性も無きにしもあらず。


試しに編集部メンバーにも食べてもらったところ……


「うん」


「うん」


「うん」


・ですよね

4人それぞれウマいとは言いつつも、その感想は「いつものクリームシチューの味」「本当に14種混ぜたのか?」「一つのルーで作ったと言われても気付かない」という散々たるものだった。逆にスゴイ。


よって今回の結論としては、市販のクリームシチュールーを14種類すべて混ぜると、普通のクリームシチューが誕生するということになる。なるほど、つまりクリームシチューは余計なことをしなくてもウマいってことだな! こいつぁ大発見だ!!



それでは最後に、今回の検証にかかった費用を発表しよう。クリームシチュールー14種類の合計金額は……


税込4279円!


だいぶ無駄な出費となったが、クリームシチューのルーは1種類だけでも十分おいしいということが分かったので良しとしよう。皆さんも今夜はクリームシチューにしてみませんか?

執筆:あひるねこ
Photo:RocketNews24.