香港旅行で現地スーパーへ行ったら『ビスくん』というお菓子が大量に売られていた。私は知らなかったのだが、これは名古屋を中心とした東海地方のロングセラーお菓子だそう。日本人の私ですら知らない日本のお菓子が香港で愛されているなんて、世界は広いな。
日本人として「ホンマ謝謝」って感じなのだが、それより気になったのはビスくんの隣に『ビスくんっぽい別の何か』が売られていたこと。あまりにビスくんに酷似しているため「ビスくんの海外版」なのか「ビスくんのパチモン」なのかがどうしても分からなかった。
いったん日本へ持ち帰って調べるしかない。
・ビスくんと甘大滋
ビスくん(8袋入り)の香港での平均価格は約30香港ドル(約590円)。
いっぽう、ビスくんに酷似したお菓子『甘大滋』はほぼ同量で約14香港ドル(約275円)と、金額に約2倍の開きがある。
もちろんビスくんには日本からの輸送コストが加算されているハズなので、単純に「甘大滋のほうが安い」と言い切れる問題ではないが、香港に「2倍の金額を払ってでもビスくんを買いたい」と思う人が多くいることも確かだ。とにかく食べてみないことには何も分からんな。
ちなみに今年、新宿サブナードに東海地方の食材を扱う『伊勢志摩マルシェ』がオープンしたのだが……
店頭の一番目立つ位置にビスくんが置かれていたことをご報告しておきたい。ビスくんって本当に人気があるお菓子だったんだな……無知ですみませんでした。
・メーカーに聞いてみた
伊勢志摩マルシェで購入したビスくんは10袋入り648円(税込)。意外にも香港とそれほど値段が変わらない。
ビスくんと甘大滋の比較。
……有史以来、これほど同一か否か判別しにくいキャラが他にいただろうか? なお甘大滋を製造するのは『四洲』という香港のメーカーで、ビスくんを製造するのは『三ツ矢』という名古屋のメーカー。四洲と三ツ矢……関連性がありそうな名前っぽくもあるし、全然関係ない可能性もある。
考えても無意味なので、この問題について三ツ矢に問い合わせてみた。すると「甘大滋はビスくんの海外版ではない」と回答が! ってことは、ビスくんの模倣品って認識でよろしいか!?
……と思いきや、「甘大滋には三ツ矢がOEM(他社のブランドの商品を作ること)で生産している商品もあるが、それ以外の製造者もいる。詳しくは四洲に問い合わせてほしい」とのこと。なんとも複雑な様相を呈していることが判明した甘大滋の舞台裏なのであった。
・もういいや、食べよ
さすがに香港に問い合わせる語学力がないため、これ以上の詮索はやめておとなしく食べ比べてみることにする。
こっちが甘大滋で……
こっちがビスくん……で、合ってるよね???
自分で書いてて自信がなくなってくるほど似ている甘大滋とビスくん。実際に食べてみると、味は確実に違った。が……ライターとしてあるまじき発言をあえて記すとするならば、私にはこの違いをうまく言語化する能力がないかもしれない。
ビスくんの特徴について言葉を選ばずに言うと「ミレービスケットみたい」である。初めて食べるのに食べ慣れている気がするというか、いい意味で何も感じない味だ。いっぽう甘大滋は「ミレービスケットではない何か」……アカン。助っ人を召喚しよう。
私が助けを求めたのはお菓子有識者として知られる御花畑記者。お菓子に関してかなり精通した彼女であるが、なんと『ビスくん』を食べるのは初めてらしい。
御花畑「ビスくん、おいしいね! 素朴な懐かしい味がする。甘大滋は油っぽくて、のどごしが微妙な感じ。この独特のクセは “乳臭さ” って言えばいいのかな? 個人の好みによるけど、私は乳臭い味が好みじゃないから、正直あまりおいしいと思えない。乳臭いのが好きな人にはイイと思う」
さすがはお菓子有識者。ビスくんと甘大滋の違いを見事に言語化してくだすった。イトコってほど近くはないかもしれないが、ハトコくらいの繋がりはあるっぽいビスくんと甘大滋。香港へ行く機会があれば間違い探しに挑戦してみてくれ。
執筆:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.