今日は料理する気力がない。そんな時って誰にでもあると思う。とは言え、できたら外食よりも家で作ったものを食べたい。これは1人暮らし者の究極の選択と言えるだろう。
そこで先日、炊飯器で作る『無気力すき焼き』を記事で紹介したところ、「米が炊けない」との声があがっているのを発見した。確かに、私(中澤)もすき焼きには米が欲しい。ほな、米も一緒に炊いてみよか。
・長州だったらブチギレるレベル
一瞬、サトウのごはんで良いのではないかと思ったが、炊飯器ですき焼きを作ってご飯はサトウのごはんなのは、何がやりたいんだコラって感じがする。長州だったらブチギレるレベルだ。
さらには、私の家には電子レンジがないのだった。電子レンジを買う気力すらない。こうなったらもう一緒に炊くしかないだろ。というわけで、前回のメンバー+米にご登場いただいた。
・全部ドーン
分量的には1人分が良いだろう。鍋は1人分作るのに向いてないというところから始まったしな。というわけで、ご飯は1合半研いでみた。割下が多すぎると米がうまく炊けなさそうなので、すき焼きの割下はご飯を炊く分量に合わせて調節したい。300ccを目安に。
野菜はもちろん、カット済の鍋用野菜パック。野菜を単品買いしたら余ることも具材が多い鍋が1人暮らしに向かない原因の1つ。その点で言うと、色んな野菜が適量まとめられているのは非常にありがたいのだ。鍋をつつく友達は誰にでもいるわけではない。というわけで、野菜パックの中身をそのままドーン!
窓の外では雨が降っていた。灰色のベールとしとしと降る秋雨。絶好の無気力日和と言えるだろう。もう何も考えたくない。なんなら現実から逃げだしたい。というわけで、牛肉もドーン!
炊飯ボタンぽちーッ!
・実際調理して感じた問題点
さて、何も考えず調理を完了したところで、クリアできるか不明な問題点が浮き彫りとなった。これは実際、現場の様子を見て思ったことなのだが……
肉に火は通るのだろうか? 前回のすき焼きではバッチリ火が通ったけど、あの時は割下がたぷたぷであった。今回は無気力すき焼きの時より少ない上にご飯が吸う。肉の下にある野菜の層が普通の五目御飯の比じゃないだけに、肉がちゃんと煮えるのかがちょっと不安。
もう1点は米はちゃんと炊けるのかということ。変に固くなったりしないだろうか。モチャッとする分には食べられるるが、固くなった場合は食べることも大変になってしまう。いずれにしても食べることに変わりはないので、どうせなら成功していて欲しい。
・迷いと葛藤
だが、成功とは一体どんな姿を指すのか? 成功の概念、それは人によって違う。大金持ちになったり有名人になることが成功である人もいれば、密やかだが温かい家庭を築くのが成功な人もいるだろう。はたして、炊飯器と私の成功の形は何なのか?
この時間は言わば、旅。幸せを探す旅のようなものだ。気づけば、辺りに漂い出すすき焼きのような香り。炊飯器よ、信じているぞ。そんな旅が今……
終わった。
・中身
まあ、普通に考えたら炊き込みご飯になっているはずだ。しかし、気がかりなのはやはり前述の2点。そこで炊飯器のフタを開けてみると……
肉には火が通っており、米も炊けている。白菜も含めて全体が割下色に染まっていた。香り立つすき焼きの匂い。良い感じ……に見える。
・食べてみた
全力を振り絞った炊飯器。ならば私も全力で答えたい。笑顔でウマイと言いたい。そこで丼によそったすき焼きご飯を食べてみたところ、具は牛丼レベルで割下が染み染みになってしっかり仕上がっていた。
牛丼と違うのはご飯にまで割下が浸透していることで、まるで割下の元に肉、野菜、ご飯が一つになったような統一感がある。これぞ、三位一体すき焼きご飯! ただし……
脂がエグイ。割下と一緒に牛肉の脂も全体に流布しており、その油っこさが牛丼の比ではなくもっとエグめに胸に迫ってくる。牛の脂が食道をドリフトしているかのようだ。炊き込みご飯界の頭文字Dである。
・牛めし界の「秋名のハチロク」
いや、もはやベタベタしすぎていて炊き込みご飯というよりも半分おじやを食べているみたいだ。圧倒的、脂。牛めし界の「秋名のハチロク」と言えるかもしれない。全部食べた後の釜にもその脂の痕跡が見てとれた。
炊飯器ですき焼きを作った時、いくらご飯が欲しいと頭をよぎっても一緒に炊いてはいけない。もし、一緒に炊こうものなら藤原脂店が爆誕する。どうしてもご飯が欲しい無気力さんは長州にキレられてもサトウのごはんを買ってこよう。食道は秋名山ではないのだから。
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.