明治期に建てられ、実際に使われていた刑事施設を保存・公開する日本唯一の野外博物館「網走監獄」。人気漫画『ゴールデンカムイ』で、物語を左右する重要なスポットとして登場したことも記憶に新しい。

「監獄食堂」こと併設レストランは、現代の網走刑務所の食事を再現したユニークメニューで知られる。監獄食堂なくして網走監獄なし、と激推ししたい名スポットなのだが、このたび新メニューが加わったという。その名も「出獄祝い膳」(税込1650円)だ!


・監獄食で知られる「監獄食堂」

もとより同レストランでは、現代の収容者の昼食を再現した「監獄食」を販売。「A さんま」「B ほっけ」の2種類があり、麦飯・焼き魚・副菜・みそ汁(本来は番茶)が定食になっている。

「意外に美味しい」……どころか本当に美味しく、ここでしか食べられないメニューとして人気。筆者も収監のたび……じゃなく訪問のたび食べてきた。

しかし、いかんせん給食である。ヘルシーではあるが、色合いも茶色っぽいし、脂っ気もないし、毎日続いたら「そろそろマック食べたいわ」となりそう。

そんな収容者の心の声を具現化し、「出所したら食べたい」と切望されるメニューを膳に仕立てたという。さっそく券売機で食券を購入。自動でオーダーが通るので、あとは席で待つ。


「監獄食堂」の響きとは正反対の明るい店内で、受け取った「出獄祝い膳」がこちら!


メインは堂々たるカツ丼だ! 1品1品に意味があり、添付の解説書が面白いので必見。

まず、刑務所内の調理ではアルコールがNGのため、料理酒を使えないのだという。また、串が凶器になる串カツ類は不可で、熱々のカツ丼が供されることもない。

量が足りなくてもおかわりやシェアは不可。実質10分での黙食が基本だという。管理栄養士による完璧な献立だが、やはり身体にいい魚や野菜は不人気だそう。味が濃く、ハイカロリーな肉厚カツ丼は収容者の夢だ。



さらに炭酸飲料であるコーラは、運動会でしか飲めない貴重な飲み物。


口にする機会が限られる甘味は大変な人気で、たまに出る「ぜんざい」や「あんバターパン」はごちそう。アイスは食べられず、テレビなどで眺めるだけの羨望のメニューだそう。


それらを詰め込んだ「出獄祝い膳」、とにかくカツが分厚い! 家庭では揚げられそうにない厚さを誇っている。


「網走監獄」のロゴがデザインされた特製どんぶりに、白米と玉子とカツがこれでもかと詰まっている。


写真では小ぶりに見えるかもしれないが、平均的な食欲の筆者だと「ちょっ……多いな……!」となるボリューム。食べたいものを食べたいだけ食べる、という当たり前のような幸福を改めて噛みしめる。


瓶コーラをぷはぁ~とやれば、謎の開放感が湧き上がってくる。もちろん栓は開けたてホヤホヤ。気が抜けているということもない。


アイスは贅沢なハーゲンダッツ。カツ丼を食べ終える頃にはやや溶けているのだが、それもまた「待って待って待って食べる1品」という雰囲気づくりに一役買っている。

すべて食べ終えると、肉&脂&糖分でひたすら満腹。監獄食AやBとは明らかに違う満足感で胸がいっぱいになる。



・レストランだけの利用も可

ついでにお土産には「おつとめドロップ」を買おう。ミュージアムショップで販売している。

監獄食堂は博物館に入館しなくても利用可能で、食事だけの立ち寄りもOK。提供は数量限定で、7月の発売直後は連日ほぼ完売だったという。

実物大の人形を使ったリアルな展示や、ユーモラスなお土産品、監獄食堂のユニークメニューなど、親しみやすくカジュアルな雰囲気ながら、見学を終える頃には日本の司法や北海道開拓の歴史まで考えさせられる唯一無二の博物館・網走監獄。北の大地で今日も圧倒的な存在感を放っている。


・今回ご紹介した飲食店の詳細データ

店名 監獄食堂

住所 北海道網走市字呼人1-1
時間 11:00~15:00(ラストオーダー14:30)

休日 博物館に準じる


執筆:冨樫さや
Photo:RocketNews24.