かつて「名古屋に行ったら寄りたい場所」だったコメダ珈琲店は今や「全国どこにでもある店」になり、いつの間にか海外にまで進出していたらしい。ずっと名古屋だけのコメダでいてほしかった気もするし、便利な世の中になった気もする。複雑な気持ちなのだ。

今回私は、コメダが初めて海外進出を果たした地・上海の店舗を訪れた。中国のコメダは日本のコメダと見分けがつかない、というか、もはや日本のコメダと違うのは “中国にある” という点のみであるようにも思われる。中国のコメダがどれくらいコメダしているか、詳細をレポさせていただこう。

・コメダしちゃってる

中国コメダの外観はどこからどう見てもコメダ。唯一、看板が中国語である点がかろうじて我々に違和感を与えてくれる。

中国語でコメダは「口美这」と表記するらしい。

店内も死ぬほどコメダ。

この椅子は日本から空輸したのだろうか? それとも船便? 気になるところだ。

「11時までモーニングセット無料」の文化も有効。これがなきゃコメダじゃないもんね!

珈琲チケット(前売り回数券)的なシステムもあるっぽい。



・なぜか大福推し

メニューも圧倒的にコメダ。

アイスコーヒーが30元(約647円)、カツサンドが55元(約1186円)と、だいたい日本の2割増くらいの価格設定である。

そんななか、幸いというべきか日本のコメダと異なる点がひとつだけあった。


それは、どういうワケか「大福」メニューが異様に充実していること。コメダ系列には『おかげ庵』という甘味処があるため、コメダが大福づくりのノウハウを持っていることはたしか。とはいえ、この充実ぶりはどういうことだろう? 中国人はよほど大福好きなのだろうか?



中国まで来てシロノワールを食べても仕方がないので、アイスミルクコーヒー(30元 / 約647円)と大福2つを注文してみた。

驚くべきことに、アイスミルクコーヒーには甘みが全くなかった。たしか日本のコメダの場合、ガムシロを入れるかどうか訊かれる or ガムシロが付いてきたような気がする……が、テーブルのどこを見渡しても、ガムシロらしきものは確認できない。

もしかすると私は知らず知らずのうちに「ガムシロはいらん」と受け取られても仕方のないリアクションをしていた、あるいはモバイルオーダーの際「ガムシロはいらん」というボタンを押していたのだろうか?

「ガムシロをくれ」と言いたかったが、中国語が分からないためどうすることもできないのだった。

あと、ここでフト気づいたのは、日本のコメダではサービスとしてドリンクについてくる豆菓子がもらえなかったこと。先ほど「日本のコメダとほぼ同じ」とお伝えしたが、注意深く観察すれば、微妙な違いがいくつか見つけられるようだ。なおアイスミルクコーヒーの味は日本と同じ。



・コメダはコメダ

それでは大福を食べすすめていこう。

『抹茶大福』10元(約216円)。抹茶のおモチに抹茶クリーム。とても硬いアズキがゴロゴロとクリームに混ぜられていて、つぶあん好きとしては非常に好感が持てた。全体的に甘すぎなくて美味。

かわいいウサちゃんの形をした『酸奶兎子大福』(10元 / 約216円)は思ってたのと違う。

モチ要素が皆無で、スプーンで押すとプリンみたいにプリン! とすくえちゃうのだ。味はかなり強めのレモン味。どう考えても大福ではなく、ウサギ型レモンムースである。

食べ進めるとレモンジュレっぽいものが出現。中国のコメダで大福という名のウサギムースを甘くないアイスミルクコーヒーで流し込むという、思いもよらぬアハハ体験となった。

いや〜、それにしてもノンビリするなぁ。中国へ来てから、これほどノンビリしたのは初めてかもしれない。名古屋だろうと東京だろうと中国だろうと無条件にノンビリできる場所……それがコメダ。

余談だが、隣のテーブルに座った日本人ビジネスマンとおぼしきグループが、上司の悪口っぽい話を延々と繰り広げていたのは少々バツが悪かった。中国のコメダへ行ったらノンビリしすぎないよう注意ぜ!

執筆:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.