町中華ではなく「ラーメン屋」に行く人はラーメンを食べに行くものだと思う。ただ、町に建ち並ぶラーメン屋を見るにつけ、私(中澤)はこう思わずにはいられない。「ご飯ものがウマそうだ」と。そう、ラーメン屋の券売機の片隅には意外と丼とかがある。
そこであえてラーメン屋でご飯メニューを注文してみようというのがこの連載「ラーメシ通信」だ。第3回は川崎のソウルフードと言われる『元祖ニュータンタンメン本舗』。ほとんどの人がタンタンメンを注文するこの店も、券売機をよく見ると片隅に謎のご飯メニューがあった。
・タンタンメンは独自の味
そもそも、私がこの店の存在を知ったのは川崎の地元民に「これしかねえ」と連れて行かれたからで、そういう意味でも「ソウルフード」という言葉はただの売り文句ではないことが分かる。
歴史も深く、日本に担々麺が少なかった時代に創業者が中国で食べた担々麺から開発したということは以前の記事でお伝えした通り。ゆえに、ここのタンタンメンの味はここだけの独自の味。強烈なニンニクの風味からはどことなく海外の現地料理みたいな尖りが感じられる。言わば野生のタンタンメンだ。
・券売機の片隅に
もうこの店に来たらタンタンメン一択と言っても過言ではないし、券売機もほとんどがタンタンメンとトッピングに支配されている。が、トッピング地帯のさらに下をよく見ると……
「せせり丼(税込770円)」というボタンがあった。
せせりって鶏の首回りのことだろうか? 三重県松坂のソウルフードの鶏焼肉屋で食べたくびはコリコリした食感の中にジューシーさがあってウマかったなあ。
・注文してみた
首回りの肉は一羽から取れる量が少なく希少部位のはずだ。やよい軒のせせりの唐揚げも全然復活しねえし、ここはいっちょ食べておこう。というわけで注文したところ、こんなん出ましたけど。
サイズ的にはお茶碗サイズなので、単品というよりタンタンメンを受けるご飯メニューという位置づけだろう。これくらいの価格で1人前出てくる店もあるので、ラーメン屋のご飯メニューって本当によく分からないんだよな。
とは言え、ボタンのオーラからサイド的なものであることは想像がついたから、ズブの素人だった私もラーメシについて多少理解してきたのかもしれない。
・味の面でせせり以上に存在感を放つもの
さて置き、食べてみると、念願だったはずのせせりの味以上にニラに驚いた。ニラを噛んだ瞬間、「じゅわあ~」とつゆの味が染み出して、それだけでご飯が進む。
薄めのだし醤油味でさっぱりしているつゆが、ニラにしみこむことで濃縮還元されている。香りだけではないニラのポテンシャルを教えるかのような味。誠に計算高いニラ使いである。このニラ、限界突破してやがる!
その味に独自を追求する『元祖ニュータンタンメン本舗』の視線を感じた気がした。ラーメン屋の券売機に眠るメシ、略して「ラーメシ」。また1つ、ラーメン屋の可能性を垣間見た気がした。
・今回紹介した店舗の情報
店名 元祖ニュータンタンメン本舗 渋谷店
住所 東京都渋谷区円山町1-18 峯ビル1階
営業時間 11:30~24:00
定休日 無休
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.