ついに、憧れの恐竜になることができた。恐竜の身体は意外と軽くて温かく、雨をものともしない。体を思うように動かすにはまだ少し鍛錬が必要であると感じたが、総じて快適。
調子に乗ってその姿のままレースに出場してみたので、結果と感想を報告させていただきたい。そう、巷で話題の『ティラノサウルスレース』に参戦したのだ。
・ティラノサウルスの体を手に入れる
御存知の方も多いだろうが『ティラノサウルスレース』とは、ティラノサウルスモチーフの着ぐるみを身に着けて主に走ったりなどする競技のこと。
アメリカ発祥と言われているが、ここ最近は日本各地でも行われるようになった。かねてより面白そうだなと、SNSなどを通じてその様子を眺めていた記者。
暮らしている地域でも行われるということで、勇み参加を決めた次第である。当日までに用意しておくのは参加費(今回は1800円)と健康な体、そしてティラノサウルスの皮もとい着ぐるみだ。
着ぐるみはレンタルもあったが、事前にティラノの体に慣らしておきたかったのでAmazonでポチっと購入。ちなみに4399円だった。ティラノの体は意外と安く手に入るのだなと、そんなことを思う。
ほどなくして届いたティラノは思ったよりもずっと小さい、というかぺったんこ。とりあえず袋から取り出してみる。送風機がついているので、これを使って膨らませろということだろう。
左わきの下に空いている穴に設置して、電池を入れてスイッチをオン。ティラノのお腹側に付いているチャックを開いて、記者もその中に入る。
チャックを閉めてしばらく待っていると、もくもくもくと膨らんできた。視界部分が透明ビニールになっていて外が見えるものの、自分の姿が今どうなっているかわからない。
わからないがティラノの中は程よく温かく、身軽だ。これが恐竜の中に入るということかと、ちょっぴり感動すらしてしまう。よし、この勢いのままちょっくらレースの練習に出かけるとしよう。
・動きやすい着ぐるみ
記者は前職で新聞記者をやっていたのだが、なぜか初仕事が着ぐるみに入ることだった。各地のマスコットキャラクター(ゆるキャラ)を取り上げる企画があったのだが、写真撮影のために中に入ってくれと言われたのだ。
その着ぐるみの所有者・所属団体の誰かが入れば良いのではと思わないではなかったが、入社したばかりだったので言われるがままキャラクターになり切った。
いずれも低予算で頑張って作ったであろう着ぐるみで、あまり中に入る人のことを考えられていなかった。とにかく重たいし酸素は薄いし、視界が悪く歩くのもままならない。
それに比べると、ティラノの着ぐるみのなんと快適なことか。この日は薄いセーターを1枚着ていただけだったが、繰り返している通りで中はしっかり温かい。
前もよく見えるし、何より動きやすい。歩幅はそれほど広くはないが、普段と変わらない感じで歩いたりすることができる。
レースに適していることはもちろんだが、着ぐるみ界隈に新風が吹くのではないかと感じた次第だ。そんなこんなで着ぐるみの性能に驚きつつ、少し走ったりしてレースに向けて練習をすませる。
週末の本番に向けて、準備万端! ではあったのだが、なんとレース当日は雨予報である。一体どうなるティラノレース……!!
・土砂降りのレース
レース開催日が激しい雨の場合、翌日に延期されるという知らせがあった。記者が天気予報を見た際、当日は降水確率85%。さすがに次の日になるのではと思っていたのだが、なんと決行。
開催時間の降雨が1mm/1hであるため、とのことだった。窓の外を見ると土砂降りだが、本当に大丈夫なのだろうか。不安でしかなかったが、決まったからには行かねばなるまい。
気合いを入れて着ぐるみを持って、会場へ向かう。一向に雨が止む気配はなく、地面も水たまりでいっぱいだ。これは、史上初(かどうか知らないが)の泥んこレースになる予感がする。
しかしそんな記者の不安とは裏腹に、会場は熱気にあふれていた。あちらこちらから「これくらいの雨の方が思い出になっていいですね」「貴重な体験になりそうですね」といった声が聞こえて来る。
さすがティラノの皮を被ってレースに出ようという人たちは、心構えからして違うらしい。正直なところ、やや尻込みをしていた記者であるが見習って楽しまねば損だと、気持ちを切り替える。
一層強く降り始めた雨を横目に、ティラノの中に入る。皮のおかけで、中にいる限りは雨を感じることはない。とことん優秀な着ぐるみである。
これならば安心と、ぞろぞろとほかのティラノと連れ立ち、レース会場である平城京跡歴史公園 朱雀門ひろば(奈良県奈良市二条大路南3丁目2の14)へと向かう。
まずは群れでラジオ体操をして体をほぐすのだが、そうすると周囲から笑い声が聞こえて来る。動きが面白いのだろう。緩い感じで良いなあと思いながら、しっかりと整えていく。周囲をぐるりと走って、完了だ。
それからは成獣のオスとメス、大成獣(60歳以上)、幼獣別に分かれて競争をする。事前に練習していた成果もあってか土砂降りの中でも転ぶことなく、何とか走り終えることが出来た。
もともと運動神経が備わっていない記者は、早々に負けはしたが、ほかのティラノと一緒に楽しく走ることが出来て満足だ。ティラノレース、面白いやん。
どんどん激しくなる雨をよそに、勝者たちは会場を駆け回り、開始から数時間後にはトップザウルスが決まったようだ。そのまま表彰式などが行われ、みなティラノの皮を脱ぎ解散。
人間に戻り、余韻に浸りながら帰路に就く。終わってみれば心配していた雨も、どこかの誰かの言葉通りで、めったにない経験ができたと嬉しくさえある。
なによりティラノの着ぐるみが優秀過ぎて、カッパのような働きをしてくれたので、晴れの日と同じように動くことができたことが大きいだろう。
なるほど確かにこれはクセになるな……。せっかく購入した着ぐるみがあることだしと、今後の『ティラノサウルスレース』の開催予定を調べる、きょうこの頃である。
参考リンク:ティラノサウルスレース
執筆:K.Masami
Photo:Rocketnews24.
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