先日、10年近くお世話になった食洗機(食器洗い洗浄機)とサヨナラした。一番の理由は「壊れたから」だ。当初は買い換えを検討していたのだが、いろいろ悩んだ末、手洗いに戻した。


その選択は大正解だった。食洗機を使っていた時より明らかに、ストレスが減ったのだ。


・食洗機と仲良しだったあのころ

我が家は夫婦と子ども2人(小学生・園児)の4人家族だが、食洗機を導入したのは、上の子が生まれる少し前だ。


家事は夫婦で手分けしているのだが、食器洗いについて、「どちらが洗うか」や「洗い方の問題」(泡が残っているとか洗い残しがあるとか……)などの問題がなかなか解消しなかった。


そこで、キッチンの端に置く卓上型の食洗機を買った。食器を放り込むだけでスッキリきれいに洗ってくれるので、どちらが洗うか問題も洗い方問題も一気に解決。


その後子どもが生まれ、哺乳瓶や、細々した子ども用食器を洗うようになり、便利さをますます実感することになった。


……のだが……。少しずつ不満も増えてきた。


・募っていく不満

まず、食洗機はめちゃくちゃ邪魔だ。「邪魔すぎる」は、卓上型を使っている人全員の不満ではないだろうか(ビルトイン型なら気にならないだろう)。


我が家は、窓を半分ふさぐ形で食洗機を置いていたので、窓からの光が遮られて少し暗くなったのも痛かった。

食器を使ってすぐに洗えないストレスも大きかった。


少量で回してしまうと電気代や水道代がもったいないから、2食分などまとめて洗うこともあるのだが、汚れたまま食器を放置しておくのも気分が悪いし、すぐ洗えば取れたはずの汚れがこびりついてしまう。


少量なら手洗いすることも多かったが、本来は食器カゴを置くための場所に食洗機が鎮座しているため、手洗いスペースが狭すぎ、洗った食器を置く場所もほとんどなくて不便だった。


食洗機は稼働音もうるさかった。洗いはじめると、1時間ほどは洗っている音がする。食後にテレビなどを見ながらくつろいでいても、食洗機の音がうるさくて、テレビのボリュームを上げざるを得なかった。



・落とせない汚れがある

食洗機は高温のお湯で油物などもきれいに洗ってくれるが、「何でもピカピカに洗える」わけではない。卵などは熱でタンパク質が固まってしまい、かえって汚れがこびりついて困ることもある。こすり洗いできないので、茶渋なども取れにくい。


食洗機の庫内も汚れが付着しがちなのだが、直接拭いたり手入れできない部分が多い。外から見える部分だけでも掃除してみようと、一度庫内のネジをいくつか外し、熱パイプ周辺を掃除してみたことがあるのだが、ねっとりしたオレンジ色の汚れがこびりついていてゾッとした。


・食器選びが楽しくなくなる

食器選びの楽しさも半減する。「食洗機に入るサイズ」かつ「食洗機に入れていい素材」が大前提になるため、デザインや使い勝手が気に入った食器でも「食洗機に入れられないから」という理由で諦めたり、使わなくなることが多かった。


コロナ禍中は在宅が増え、食器で少しでも気分を上げたくて、いろいろ買っていたのだが、「食洗機に入らないから」という理由で、一番気に入ったものではなく、二番目だけど食洗機に入るものなどを選んだりしていた。今思うとこれもストレスだった。



・壊れ方が難しい

食洗機は壊れる。我が家の食洗機は耐用年数を過ぎていたので壊れて当然だったのだが、壊れ方が、なんというか……難しかった。「洗いが終わらない」「すすぎが終わらない」という壊れ方をしたのだ。


食洗機の「洗い」や「すすぎ」にどれだけの時間がかかるかは、持ち主もなんとなくの感覚でしか把握していない。「妙に時間がかかっているな」と思っても、「今日は汚れがひどかったのかな?」なんて思って様子を見ていた。


「洗いやすすぎのお湯が、水になる」という壊れ方もした。しばらく気づかなかったのだが、「洗い上がったはずなのに、全く汚れが落ちていない、そして、なんか冷たい」という事実から推測し、洗っている最中の排水を手で触って判明した。


壊れたかと思えば、たまにちゃんと洗えたりもしたので、復活の可能性を信じて使い続けてしまった。その状態が数カ月続いた結果、水道代が1.5倍ぐらいになった。


洗剤が悪いのかな? とも思い、粉や液体やタブレットなど多種多様な洗剤を試した結果、こちらもえらくお金がかかった。


・買い換えの選択肢が少なすぎる

洗っても汚れが取れないと確信したあたりから、私は食洗機が壊れたことを受け入れ、新型に買い換えようとしたのだが、選択肢がほとんどなかった。この10年で日本のメーカーが白物家電から撤退しまくったからだ。


買い換えるならパナソニックほぼ一択。価格も10年前よりだいぶ高騰している。レビューも読み込んだのだが、「以前の製品より庫内容量が少ない」という声が多かった。我が家は、サイズが大きくても、今より多くの皿が入るモデルを希望していたのだが、どうやら「そんなものはない」ということらしい。


買い換えを諦めた。


3月の雪の日。食洗機を捨てた。食洗機をどけると、その下がドロドロに汚れていた。「きれいにするための機械の下がめっちゃ汚い」ということになんだかショックを受けた。



・手洗いが食洗機より「ラク」に感じる

我が家のキッチンから食洗機が消えた後、私は食器洗いのストレスからむしろ解放された。食器洗いは好きな家事ではない。でも「食洗機よりラクになった」と実感したのだ。


キッチンが広くなり、スペースを気にせず手洗いできるようになった。少量の食器でもすぐ洗えるので気持ちいい。食洗機が苦手だった茶渋洗いやタンパク質汚れも、手洗いでゴシゴシすれば、すぐ取れる。


食器も、食洗機対応かどうかを気にせずに使えるようになった。これまで、熱に弱い素材の食器でも無理矢理食洗機に入れてすぐに傷めてしまっていたのだが、手洗いならその心配もない。


食洗機が騒音をたてながら1時間かけていた家族分の食器洗いは、小さな水音とともに、10分ほどで済むようになった。食洗機がふさいでいた窓が開放され、明るい光が差し込むようになった。

そんなわけで今、食洗機を捨てて本当によかったと、掛け値無しに実感している。


ただ、食洗機がほしいなと思うことは1週間に1回ぐらいはある。休日の夜など、ちょっとゆっくり食事した後、ものすごーーーくのんびりしたい時。キッチンに食器がたまっていると、「このまま食洗機に放り込んで寝てしまいたい」と思う。


揚げ物の際に油が付着したザルなどは、手では洗いづらいが食洗機が得意な汚れだ。こういう物を洗う時は、食洗機が欲しいなと思う。


でも、週イチ訪れる食洗機衝動を解消するより、週七で光が差し込むすっきりしたキッチンを維持するほうが、今の私には幸せだ。


執筆:岡田ゆかたん
Photo:RocketNews24