コロナ禍に一番流行ったものといえば、アウトドア。大人数で集まったり飲みに行ったりすることを禁じられた我々は、あり余った時間を埋めるように野外へと出かけた。
──時は流れて2024年。「三密」なんて言葉を気にすることもなくなり、手洗い・うがいは続けながらもすっかり平和な生活に戻った。
SNSでは「ブームが去ってギアが投げ売りされている」といったコメントと共に大量のテントが積み重なった写真がバズっていたが……本当だろうか?
実際にドン・キホーテとハードオフの店舗へ行き、この目で確かめてみることにした。
・アウトドアブームは終わったのか?
そもそもの話、アウトドアブームは終わったのだろうか?
某アウトドア用品メーカーの不振やキャンプ場の廃業など、ぶっちゃけここ最近のアウトドア業界は景気のいい話を聞かない。
入場待ちの列が途切れなかった人気キャンプ場や テントの明かりが連なって集落のように見えた格安キャンプ場も、今はさぞかし空いていることだろう……。
そう思って調べてみたのだが、どうやら相変わらず繁盛している様子。
もちろんピーク時に比べると減っている。しかし無理やりな集客をする必要もなければ、倒産する気配もない。「一時の大ブーム」から「ハマった人が定着するフェーズ」へ入ったのかな? という印象だ。
・ドン・キホーテへ行ってみた
とはいえ、実際に売り場を見てみなければ判断がつかない。まず訪れたのはドン・キホーテ。
地方の独立型の店舗で、以前までのアウトドアコーナーは入り口のすぐ目の前。6畳ほどの広さの特設コーナーと、それとは別に棚2列分ほどの品ぞろえがあった。
それに対して2024年2月現在、店舗内のアウトドアコーナーは……棚4列分! つまり、激減ってほどではないが確実に少なくなっている。
具体的に見ていくと、取り扱いが減ったのはテントやタープ、そして大人数向けのテーブルやチェアといった大きいサイズのアイテムの展示だろうか。
以前までは特設コーナー内にテントや食卓が設営されていたが、今はパッケージのまま置かれるようになり、同時に取扱い点数も半分ぐらいになっている。
──気になったのは、SNSで見かけたような投げ売り商品を見かけないということ。値引きされている商品はあるのだが、旧モデルだったり売れ残り商品だったりが 現実的な価格で売られているだけ。
「ドすべり」という、とにかく売れ残りを処分するためのコーナーもウォッチしてみたが……
うーん、パッとしない(上は2023年8月、別店舗の写真です)。
ドすべりに置かれていたアウトドア用品をすべて挙げると、
・バーベキューグリル 5478円(約30%オフ)
・コールマン福袋 ソロキャンプスタートセット 5万5000円(福袋価格以上の割引はなし)
・バンブーミニトレイ 1100円(約45%オフ)
・ウッドチェア 1650円(約50%オフ)
以上4種(価格はすべて税込み)。
うぅぅぅぅ~~~~~ん、パッとしない。
コールマン福袋以外はすべてノーブランド品だし、ブーム関係なく売れ残りそうなB級品っぽさがムンムンと漂っていた。
そもそもドン・キホーテは大量仕入れ&ディスカウントスタイルの商売なので、どんなジャンルにおいても売れ残ってしまえば投げ売りされる。
アウトドア用品が際立って売れ残っているというよりは 全てのジャンルにまんべんなく売れ残りが発生していて、SNSに投稿されていた店舗は特にテントが多く余ってしまった……そんな印象を受けた。
また偏見かもしれないが、ドン・キホーテのユーザーは夏のバーベキューや花火を好む傾向にある気がする。ともすれば 冬にアウトドア用品の取り扱いが減るのは自然なこと。
いくら世のアウトドアブームが落ち着きを取り戻しているとはいっても、まだ底は見えていない、あるいはドン・キホーテでうかがい知るのは難しい……のかもしれない。
・ハードオフに行ってみた
「中古アイテムがあふれかえっている」と噂のハードオフにもハシゴをしてみる。
訪れたのはドンキと同じく地方の独立店舗。周辺にはブックオフやGUなどが並び、そこそこ客入りがありそうな雰囲気だ。
欲しいモノが安く見つかれば買って帰っちゃおう。特にランタン系があったら嬉しいな!
店舗に入るとすぐに置かれていたのが「アウトドアブランド大募集中!」という張り紙。
「ブランド、ノーブランド問わず喜んで買い取りします!」とまで書かれていて 店の力の入れようが伝わってくる。これは期待できるかもしれないぞ!
……ところが、である。
店の1番奥に配置されていたアウトドア用品のコーナー。確かに商品の点数自体は多い。
具体的にはシュラフが約20点、スリーピングマットが約10点、テントが約30点、チェアが約10点、その他にもクーラーバッグやカトラリーといったアイテムが ホームセンターの品ぞろえ程度に並んでいる といったところだろうか。
数だけ見ると「ブームが終わったな」と言いたくなる気持ちはわかる。
しかし、ひとつひとつのアイテムを見ていくと「コレは欲しくないかなぁ……」と思ってしまうのだ。
その理由は2つ。
①全体的に年季が入っていて使用感がすごい
②ノーブランドや無名ブランドの安そうな品だったり、ブランド品であってもひと昔前の奇抜・ちょっとダサめなデザインが多い
SNSの投稿からは 勝手ながら「人気アウトドア用品が新古品状態で大量に並んでいる!」というイメージを受けていたため、拍子抜けしてガッカリしたというのが本音。
ビギナーユーザーが買ってすぐのアイテムを手放したというよりは、ベテランユーザーがある程度使ったアイテムを買い替えた、あるいは実家に眠っていたアイテムを掘り起こして売った という印象を受けた。
・そう上手くはいかない
噂につられて 多くのアウトドア愛好家らが全国のドンキとハードオフをパトロールしているようだが、バズった投稿以外にめぼしい成果はないように見える。
メルカリなどのフリマサイトを覗いても、掘り出し物というほどの商品はない。あったとしてもすぐ売り切れている。
つまり、アウトドア用品を欲しがっている人はまだまだ大勢いるってことなのだ。
ブームは確かに落ち着いたけど、継続できる趣味としてキャンプをしている人は ここ数年で確実に増えたんだなぁ。
もちろん地域による品揃えの差はあるだろうが、2024年2月現在、小売店で激安・掘り出し物のアウトドア用品を見つけるのは難しいかもしれない。人生そう上手くいかないもんだ。
執筆:高木はるか
Photo:RocketNews24.