食感が特徴の夏の野菜、オクラ。食べるたびに不思議な野菜だと、しみじみする。はじめて口にした人は、あのネバネバに怯(ひる)まなかったのだろうか。

加えてもっと不思議なのは、オクラの花は食べられること。実だけで満足せず花にまで手を出すとは、人間は強欲だなあと思う。

その上この「オクラの花」のほかに「花オクラ」というものが存在し、それらは別物なのだそうだ。


・違うらしい

子どものころ、家の庭にオクラが植わっていた。成長する過程で小さな黄色い花を付けるのだが、時々採っては食べていた。

一度咲いたらその日の内にしぼんでしまうので、すぐに食べなくてはならない。しかもあっちの苗からもこっちの苗からもいっぺんに咲くので、収穫も大変だったと記憶している。

我が家では茹でて食べていたが、味やネバネバ感はオクラそのもの。オクラは何処を切り取ってもオクラなんだなあ、と感心したものだ。

しばらく食べていなかったが、先日「オクラの花だよ」と奇麗な黄色の花をいただいた。昔そうしていたように、この日も茹でてオリーブオイルと塩こしょうをかけたり、酢醤油をかけて堪能。


記憶にあったとおりの味と食感で、コレコレと美味しさを噛みしめた数日後、また同じ人から同じものを頂戴した。せっかくなので違う食べ方をしてみようと、ネットでレシピを検索する。

そこではじめて、オクラの花と花オクラは違うものであることに気付いたのだ。手元にあるコレは、わかりやすいように「オクラの花」と表現したのか、はたまた本当は「花オクラ」なのか。

わからないので、はじめに聞いた通りオクラの花であると仮定して、花オクラを別ルートで取り寄せてみることにした。ネット販売で運よく「花オクラ」を販売していたので、それをポチっとする。



・どこが違う? 

届いた商品には、パッケージに「花オクラ」と書かれている。大きさや色味など、見た目にはいただいたものと大きく変わりはない。比較のために同じように調理して、食べることにした。


味わってみるとやはり大差がなく、もしかするといただいたものも花オクラなのでは……という気がしてくる。でもオクラの花と言ってたしなと思いつつ聞いてみると、どうやらあちらも花オクラだった模様。


通じるように、オクラの花と表現してくれただけなのだろう。そのおかげでオクラの花と花オクラとは違うことが知れたので、得をした気分だ。

かつて実家で採っていたものは間違いなくオクラの花だったので、遠い記憶をたどってみるが、オクラの花と花オクラの違いがいまいちわからない。

そこでネット購入した “新鮮野菜とフルーツのお店 旬屋” に問い合わせてみたところ、ていねいな返信をくださった。


曰く「花オクラ」は食用花としてオクラを品種改良したもので、花を食べるために生まれたものであるらしい。成長過程で実を付けるが、食用には向かないとのこと。

対する「オクラの花」であるが、花を食べられない訳ではないが当然ながら実を食べる方が一般的であるという。つまり花は花で、実は実でそれぞれ専用に育てられているということだ。

花弁の大きさや味の洗練さなどに違いが見られるようなので、わざわざ購入して食べようという時には花と実と、自分の欲しているほうを手に取るのが良いだろう。

しかし人間のオクラに対する執着に驚くが、これは花と実といずれも最高の状態で味わいたいと思わせてしまうほど美味しいことの表れに違いない。



30年以上生きてきて、当たり前にそばにある野菜だったオクラ。実だけでなく花にまで人びとの熱い思いが乗っかっていたとは、今後食べる際になんだか恐れ多い気持ちになりそうだ。

執筆:K.Masami
Photo:Rocketnews24.

▼ねばねばして美味しい花オクラ。おしべめしべ等は取って食べる