
「還暦祝い」って言うけど、長寿祝いの ならわし において40才は「初老」なの知ってた? ガビーン。2023年で41才の私(中澤)はすでに初老だったのか。老の字が入るとちょっとヘコむお年頃。
寿命が延びた今は60才くらいを指すという説もあるけれど、そうは言っても奈良時代だと初老なんでしょ? オッサンと呼ばれることにやっと慣れたと思ったらこれだよ! そんなワシがガチで女装することになってしまいました。嘘だろ……。
・女装することになった理由
なぜかと言うと、ロケットニュース24の企画『負けたら即引退! レイちゃん炎の10番勝負!!』の3番目が私に決まってしまったからである。
本記事は、編集長GO羽鳥の女装体であるロケットニュースの大天使ことレイちゃんに、編集部員が女装で挑み、ネット投票で勝敗を決めるというもの。軽い女装とかなら、アプリとかプリクラのレポート記事でやった記憶があるが、ガチとなると話が違え。
・ガチ女装の重み
いや、他の人はいいよ? 嫁に話聞けるじゃん。でも、私にその手は使えない。独り身だから。服をどこで買えばいいかすら分からないどころか、どんな方向にするか、化粧をどうするかとかから自分で考えないといけない。スタート地点がそもそも違う。1からではなく0からなのだ。
しかも、外見的な話をすると今まで「キモイ」と言われることの方が多い人生だった。経験豊富なレイちゃんより可愛くなれるわけがない。おまけに、レイちゃんには固定ファンもいるから負けるのも確実である。
笑いにしてお茶を濁すか……。ガチで女装するの恥ずかしいし。
・勇気
と、そう考えていた矢先、第一戦のYoshioの記事を見て気が変わった。前述の通り、勝ち目のない勝負。敵うはずがない戦(いくさ)。そんなものは誰の目にも明らかだ。だが、Yoshioは真正面全力120パーセントで女装してきたのである。
髭の剃り跡が少し青くなっているYoshio。対して、レイちゃんはツルツルだ。GO羽鳥の個人ブログによると髭を抜くという技もあるらしい。ここら辺も経験の差と言えるだろう。もちろん、結果はYoshioのボロ負けだった。だが、私の目には激しく散ったYoshioの方が美しく見えた。
・全力でぶつかってみたい
思い返せば、逃げてばかりの人生である。いつしか言い訳で自分を納得させることにもすっかり慣れてしまった。才能がないから仕方ない。イケメンじゃないから仕方ない。でも、もう逃げるのはたくさんだ!
負けると分かっていても、醜態をさらしたとしても……ガチで女装することを心に決めた。生きるとはそういうことだとYoshi子が教えてくれたから。
・試行錯誤
そうと決まれば、ブラジャーを買ってみることにした。今回の場合、女装用の人口乳房がついているものが楽だろう。ただし、大きすぎると男のガッチリした体格と相まってメスゴリラ感が出るような気がする。女装でそういう失敗をしている人見たことあるし。そこで試しにAカップを購入してみたのだが……
やっぱりメスゴリラ感が出てしまった。体格が悪いのか、このブラが悪いのか分からないが、とりあえずこれじゃダメだ。スタイルで女性っぽさを出すのは諦めよう。
・消去法で方向性を決める
となると、体型を隠す必要がある。幸いにも、今若い世代では、ダボッとした服が流行っているからそれでいくしかない。TikTokで出てくる地下アイドルの私服みたいな感じだ。ということは化粧は地雷メイクかな。
大体の方向性が決まったため、当編集部の中で比較的その辺りに詳しい女性記者・亀沢郁奈に服をどこで買ったらいいのか相談してみた。
亀沢郁奈「渋谷の109か、原宿のラフォーレ行っときゃいいんじゃない?」
──とのこと。ひょえ~! どっちも41才のオッサンにはハードルが高い。ラフォーレ原宿どころか、私はユニクロの試着室もちょっと怖いくらいなのに。
・初めてのラフォーレ原宿
そこで亀沢さんについてきてもらうことにした。亀沢さんいわく、「ラフォーレ原宿だとそういう服は地下にある」らしい。颯爽と階段を降りていく亀沢さん。ラフォーレ原宿初めて入ったなあ。
ラフォーレの地下は想像していたよりずっと凄かった。フリフリのドレスとかセーラー服みたいなデザインの服が飾られているのだが、どれもなんか魔界みがある。思いつく言葉をそのまま書くなら「怖い、エグイ、グロイ」。これがゴスというものだろうか。
・怖い夢に迷い込んだみたい
それでいて、可愛いと言えなくもない。遠くから見ると可愛いけど、近づくと血が出てるみたいな。空間全体がそんな感じなので怖い夢に迷い込んだような錯覚を覚えた。明治通りに接しているメジャー感のある商業ビルの地下がこんなことになっていようとは。
フロアを歩く感覚は不思議の国のアリスみたいだった。別の世界の入り口みたいな。しかも、女ものだけじゃなく男ものも売っている。男ものは米津玄師が着てそうなデザインである。ああいうマントみたいな服ってラフォーレに売ってたんだあ。
・絶対無理だった
本来ならここで女ものを試着して買うとか絶対無理。そもそも、どれを選んでいいかもわからない。逆に言うと、店員さんにオススメされるものが全部欲しくなった。
しかし、「これいいんじゃない?」「これはラフォーレで買わなくていい」と亀沢ジャッジが冴えわたる。結果、ラフォーレ地下の『Amilige』でパーカーとミニスカート(計2万9260円)を、竹下通りの露天でレッグウォーマー(税込み1650円)を購入。気に入りました。
・ウィッグの分からなさ
服を買ったことで大分イメージも固まってきた。次はウィッグ。病み系地下アイドル的なイメージからすると黒髪ロングだが、ロングにも色んな種類があってどれを選んだらいいのかよく分からない。亀沢さんに相談したところ、服装の感じで言うと前髪ぱっつんなのだとか。
そこでAmazonで検索してみたところ、ちょうどイメージ通りの前髪ぱっつんが。しかも、2990円とドンキでウィッグを買うより安い。ウィッグはAmazonだったか。ガチで女装しようとしなければ知る由もなかった情報が蓄積されていく。
・メイクする前の準備
さて、残すところメイクのみとなったが、私は41才のオッサンなので事前準備が必要だ。すなわち、前述の通り、髭を剃るのではなく抜かなければならない。こうすることで剃るよりもツルツルになる……とGO羽鳥のブログに書かれていた。
ちなみに、そんなGO羽鳥は私が女装をするだけで四苦八苦している間に、シミ取りレーザー治療をしていた。ただでさえ負け戦なのに科学兵器まで用いてくるだと……!? 鬼や。レイちゃんという名の修羅がおる。
正直、この時点で女装して並ぶのが再び嫌になったのだが、何もやらなくても期日はやって来る。やらなければやらない分だけ醜態をさらすことになる。そこでまずは髭を抜いてみたところ……
クッッッッソ痛ェェェエエエ!
1本抜くだけでもう涙が出そうだ。全部抜くとか拷問だろ。特に、鼻の下とか口の横とか柔らかいところがマジで泣く。何やってんだチクショーめ! ふんがァァァアアア!!
・ついにメイク
ハア……ハア……。全部抜く頃にはなんか息が切れていた。謎にもの凄い達成感を感じる。女装家の執念マジすげえ。さて置き、苦節2カ月。ついに最後の工程だ。『Studio RAAR(スタジオ ラール)』を予約した。
スタジオラールはGO羽鳥がレイちゃんメイクをしてもらっている女装サロン。化粧だけでなく、衣装やウィッグの準備や撮影まで行っており、どこまでやるかをプランで選ぶことができるので、手ぶらで行ける女装サロンと言える。
・初めての女装サロン
私は化粧のみなので6500円の「フルメイク、ヘアウィッグコース」。担当はゆきさん(Twitter @yuki95710218)という女性だった。メイクの勉強をしながらスタジオラールで働いているのだとか。
レイちゃんの担当はトップの岡本さんなのでメイク的にも師弟対決と言えるだろう。ゆきさんいわく、「化ける顔の輪郭をしている」らしい。女装って輪郭なんだ……。
それにしても緊張する。だって、可愛らしくなんて無理難題なことは自分が一番分かっているのだ。でも、メイクが終わった時に、微妙なリアクションしちゃったら、ゆきさんを傷つけてしまいそうじゃないか。
・緊張
例えるなら、美容室で髪切ってもらってる時みたいな。私はいつも、目をつぶっている間、出来上がった時のリアクションを考えている。うまくリアクションしないといけない。美容師さんを傷つけないために。
眼鏡を外しているので途中経過が全然見えないため、今回もリアクションを考えていた。「スゲー! これが私……!?」は嘘くさいかな。もっとちょうど良いヤツないだろうか。あー! ガチ女装なんて初めてだからちょうど良い温度感のリアクションが分からない!!
・完成してしまう
と、そんなことをぐるぐる考えていた時、メイクが完成した。完成……してしまった。さっそく、店のスマホで軽く撮影して見せてくれるゆきさん。待って待って! まだ心の準備できてないんですがあー!! って、エッ……
これが私!?
嘘でしょ!? ゆきさんがさらにスマホで何枚か撮影して見せてくれる。エッ、エッ!
これが私ィィィイイイ!!?
SUGEEEEEEEEE! メイクSUGEEEEEEE!! ウィッグSUGEEEEEEEE!! 服SUGEEEEEEEEEE!! なにより、プロSUGEEEEEEEEE!!!!!! 思わず、ゆきさんと記念撮影をしてしまった。ありがとうございましたァァァアアア!
・ただ感謝
全てのものに感謝。感謝の正拳突き一万回をしたいレベルである。この2カ月、痛いこともあった。辛いこともあった。可愛くなるって大変である。だが、体験したからこそ分かる。可愛くなるってこんなに嬉しいんだ。
その達成感に比べると、勝つとか負けるとかどうでも良くなってしまった。ひょっとしたら私が闘っていたのは、GO羽鳥ではなく、自分自身だったのかもしれない。
可愛いとは自分との闘いと見つけたり。痛いのも、辛いのも全ては可愛くなるために。遥かなる道を征く女装家や、日夜努力している女子はもはや尊い。ただただリスペクト。まあ、それはそれとして……
みんなー! 一番星の生まれ変わり「星子」だよ☆
応援してね☆
おわり☆彡
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.
中澤星児


























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