売れないバンドのライブツアーと言えば、車で寝泊まり、ライブだけやって帰るような強行軍も少なくない。私(中澤)も20代30代の頃のツアーはそんな感じだったのだが、もうそういうのには疲れた。というわけで、最近は自分のライブ以上に観光を楽しんでいる。
北海道旭川にツアーで行った今回。地元バンドマンに話を聞いたところ『銀鍵』という焼肉屋が良いらしい。「まあ、有名ですけど」とのことだったが、知らなかったので行ってみた。
・外観からあふれ出る良い味
4月中頃、夜の旭川の気温は6度とまだまだ冬を残す。冷たい風が吹きすさぶ中、半分切れかけたボロボロのネオンが輝いていた。どことなく温もりのある外観。まず、『銀鍵』に感じたのはそんな安心感であった。
ボタンにテープが貼られた自動ドアを手動で開けると、中には個室が並んでいる。その中の一室に入ると、壁にメニューが貼られていた。生ラムジンギスカンが400円は安い。和牛サガリ(税込み900円)とか上富良野地養豚ロース(税込み600円)とかこだわりを感じるが、メニュー自体は少なめで少数精鋭感がある。
注文してみると、どれもガッツリ量があった。いわゆる、コスパ系の焼肉店と言えそうだが、肉がトロけるようで質も素晴らしい。
・気になったこと
ホルモンぷりっぷりだしな。旭川に住んでたら週3で通ってしまいそうだ。さすが地元民のオススメだけある。ところで、さっきから気になっていたのだが……
この焼き肉コンロなんだろう?
机には一機の卓上焼肉コンロが置かれていたのだが、それが初めて見るタイプだったのだ。普通、焼肉のコンロって七輪みたいに熱源の上に網が置かれているものだと思っていたが、この卓上焼肉コンロはバーナーが上についているのである。
言葉で説明すると、「それに何の意味があるのか」と思う人もいるかもしれないが、使ってみるとその効果は抜群。肉汁が熱源に落ちないため、燃え上がらないし、なんか肉がバランス良く焼ける。
ちなみに、下には鉄板が敷かれており、さらに下に受け皿が設置されているのだが、バランス良く焼けるのは上のバーナーで下の鉄板が熱せられているからかもしれない。バーナーを上に持ってくるというシンプルな発想だが、革命的な合理性を感じた。これ一家に一台欲しいわ。
・売ってるのか?
気になったので焼肉コンロを調べてみたところ、「Paloma」の文字が。さすがにオリジナルではない様子。さっそく、ネットで検索してみたところ「PY-8」という焼き器に酷似していることが判明した。だがしかし……
鉄板の形状が違う。PY-8は受け皿の上が網であり、この焼き器のように鉄板ではないのだ。そこでさらに検索してみたところ、鉄板は「PY-2」のものに酷似している。
・ここにしかない味
つまり、これはPY-8とPY-2を組み合わせたこの店独自の焼き器ということになる。交換する意味までは分からないが、わざわざ、付属の網を別製品の鉄板に変えていることにこだわりを感じた。
そんなDIY感もまた味になる雰囲気がある銀鍵。今夜も地元民で賑わうに違いない。こういう特色のある店に出会えるのもツアーのだいご味と言えるだろう。堪能しました。
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.