静岡県の観光スポットと言えば、熱海・伊東を擁する伊豆エリアはレジェンド格。沼津はアニメ『ラブライブ!サンシャイン!!』で聖地化に成功し、焼津は水産で全国トップクラスの認知度。

そして大河ドラマ『どうする家康』で、タイムリーに大盛り上がりな浜松。あれ、県庁所在地の静岡市が出てこなくね……?

まあ大都市だし、企業のビルやらデパートやらで、観光って感じとは違うのかもなぁと思っていたところ、家康関連は静岡市も最強格なことが発覚! 家康ゆかりの静岡浅間神社を訪れたところ、あまりに常軌を逸していた! 徳川幕府、マジにとんでもねぇ……!!

・どうする家康

絶賛放送中のNHK大河ドラマ『どうする家康』。毎週日曜日にSNSのトレンドを総ナメしている覇権コンテンツだ。非ネット民は言うまでもなく、テレビ離れが進みがちなネット民の間でも凄まじい注目度なのは、さすが天下の大河。


ちなみに徳川家康は、私が産まれてからだけでも確実に10作品以上はNHKの大河ドラマで登場(主役ではないのも含め)している。

他のコンテンツにも目を向ければ、彼はイケメン化から美少女化まで幅広く経験しており、日本人はかねてより様々な徳川家康を摂取済み。

しかし今回の『どうする家康』では彼が天下をとる前の青年期を、微妙に小物感がある姿で描くなどして差別化を試みている。キャスト陣の人気はもちろんだが、この話題性はその辺の演出がウケているのもあるのだろう。

なんやかんやで金ヶ崎の戦いを乗り切り、姉川の戦いも経た家康には、これから武田信玄との壮絶なバトルが待っている。

武田がなんやかんやで滅ぼされない限りドラマでも描かれると思う(本記事の執筆は第15回放送時)が、その辺で家康がいたのは浜松城。この先の展開的に、浜松市の観光力が加速するのは間違いない。

浜松市はこの好機を予見し、先んじてオリジナルのロゴを作ったり、5月5日の浜松まつりに松本潤さんの出演をとりつけたり、浜松城のそばに大河ドラマ館をオープンするなど、PRの手際が良すぎる



・どこ行く家康

圧倒的に勢いづく浜松市。私も、静岡県の家康ゆかりの地と言えば浜松市だよなぁという空気になっていたところ、JR東海から静岡市に誘われた

現在JR東海では「どこ行く家康」というキャンペーンを実施中らしく、もっと静岡市の家康系コンテンツを紹介したいのだという。

公式HPを見ると、三方ヶ原の戦いや脱糞説との関連性が実は不明なことで知られる「徳川家康三方ヶ原戦役画像」を中心に、静岡、浜松、岡崎、関ヶ原、名古屋がメインにピックアップされている。


行き先が5か所もあって、浜松市が勢いづいているタイミングで静岡市へのお誘い。静岡市にテコ入れの必要を感じた……のかは不明だが、私としても静岡市は家康というよりバンダイ ホビーセンターのイメージしかなかったので行ってみることに。


・浅間神社

こうしてJR東海の提供でやってきたのは神部神社・浅間神社・大歳御祖神社(以下 静岡浅間神社)。


家康関連の神社といえば、神格化された家康を祀る日光東照宮など複数あるが、実は同一境内で家康を二座も祀っているのは日本全国で静岡浅間神社だけ

家康とこの神社の繋がりは彼の幼少期から深く、元服式もここでやったそう。神社の公式HPには、武田とのバトルに勝てたら再建するなどという必勝祈願的な理由で家康に焼き払われた(勝ったので約束通り再建された)というブッ飛んだ話も書かれている。それは実に縁が深いですわ。

家康亡きあとも、家康の威光ゆえか徳川家からの尊崇を受け続けたもよう。今ある建物の多くは、2度の火事による焼失を経るなどして、1800年代に再建されたものらしい。神社の歴史に対し、建物自体はわりと新しい。



・再建

ちなみにその再建事業は幕府直轄で、60年もの歳月をかけて行われたという。徳川幕府直轄のヤバさは、現代でもバチバチにみてとれる。

境内を見て回ると、だいたい何もかもが漆塗り&金箔でデコられているのだ……!


ちなみにこの楼門は1816年製だが、2020年12月に40年ぶりの塗り替え工事が終わったばかり。


工事には1トンの漆22000枚の金箔(1枚10.5㎝×10.5㎝)を消費し、4億の工事費がかかったという。


今は楼門の隣の南回廊を修理中。こちらも劣化した漆や彩色部分を塗りなおしたり、金具等の補修を行う予定だとか。


今回は特別に大拝殿の中や、その先の神部神社・浅間神社本殿も撮影させて頂いたが……漆と金箔だらけなのはもはやデフォ。

それに加え、狂気を感じるつくり込みの彫刻や、ガチな神絵師による天井絵に満ちていた(最後にまとめて写真と簡単な解説を添えて掲載)。これが徳川幕府の威光ッ……!


このブルジョア極まる建築群は、日本全国でも相当にヤバい。神社から頂いた資料によると、静岡県には国宝か重要文化財に指定されている漆塗りの建築物が36棟あるという。

これは栃木県に次ぐ全国2位らしい。そのうちの23棟が静岡浅間神社……! 静岡県内最強だし、日本全国でも最強クラスと言って間違いない。


・プラモ

再建に携わったのは全国から集められた至高の腕をもつ職人たち。彼らが幕府の事業のため静岡に住むことで、静岡は国内最高水準の職人集団を抱えることになった。

代々受け継がれた技術の用途は、木や竹細工の製造から、木製模型の製造へ。そして最終的にプラモデルの製造へと推移していく。

これが、現在多くのプラモメーカーが静岡に工場を置くことになった大まかな流れだ。つまり現在の「静岡=プラモ」のイメ―ジもほぼ家康が根源……!!


ちなみに静岡浅間神社では、毎月バンダイの工場に出向いて祈願をおこなっているそう。ここでは神になった家康が二座も祀られているのは先に述べた通り。その加護を受けているので、ガンプラもほぼ家康の庇護下! 徳川幕府半端ねぇ……!!



・威光が眩しい

ということで、静岡浅間神社を見て回ったが……さすがにこの豪華さは予想していなかった! 鮮やかすぎる漆の朱色とキラッキラの金箔、そして非常にカラフルなその他の彫刻で物理的に眩しい。ちょっと目が疲れたレベル。

実は静岡市の大河ドラマ館は、静岡浅間神社に隣接している。駿府城もすぐそばにあるため、ドラマ関連とあわせて家康および徳川幕府の圧倒的な威光を体感するには、最もベストなスポットの1つだ!


JR静岡駅から徒歩20分程度なので、周辺都市からであれば新幹線で日帰り観光も余裕だ! ゴールデンウィークの選択肢に検討してみてはどうだろう。

参考リンク:静岡浅間神社JR東海「どこ行く家康」静岡市大河ドラマ館浜松市
執筆&写真:江川資具
ScreenShot:JR東海

▼大河ドラマ館では、ドラマ内の婚礼シーンで松本潤さんと有村架純さんが着用した衣装が展示されていた。定期的に展示物は変わるが、衣装はしばらくここにあるもよう。他にも撮影使用品が何点かあった。特に夏ごろに大きく内容が変わる予定とのこと。


▼すでにお見せしたこの獅子。こいつ1体からも徳川幕府の威光がだだ洩れになっている。よく見ると、金箔の上から青で彩色されていることがわかる。

生彩色(いけざいしき)なるブルジョア極まるスタイル。木製の本体の上に漆を塗り、全体を金箔で覆う。その金箔が見えなくなることを厭わず、上から岩絵の具で塗るという。普通、金箔を塗ったらもう金箔が主役だろ? 天井人にしか許されない金箔の扱い。緑もいる。


▼祈ればどんな願いでも叶うという、インフレが極まりすぎた馬。「叶え馬」という。

家康が奉納した馬がモチーフとのことだが、並みの神より強い。なんでも叶えるなんて権能は禁止カードだろ。そんなヤバい馬が楼門の外にいるというのも尋常ではない。


▼大拝殿。1805年に建造をスタートし、1814年に完成したそう。

天井には幕府直属絵師の狩野寛信と狩野栄信の絵。この天井には秘密の扉が隠されているそう。開けると上の階に登れるという。何それ超クール。

舌を出した猫の彫刻がある。日光東照宮に「眠り猫」がいるので、こちらは「目覚め猫」と呼ぶことにしたそう。グルーミング中だろうか。


▼こちらの写真は大拝殿の中から見た本殿をかこう塀と本殿上部。神部神社・浅間神社本殿という名の通り、二社同殿。右が神部神社で左が浅間神社。

本殿正面。漆が剥がれつつあり、そろそろこちらも塗り直しとのこと。

本殿中央の彫刻と、その上に描かれた神部神社と浅間神社それぞれの紀章。

立体的な構造。エグい。

それが何種類かある。

この鳳凰は柱1本分程度の厚さしかないのだが

裏から見るとこうなっている。この複雑な造形を漆&金箔&顔料で装飾しているというから尋常ではない。

本殿側面。

本殿裏側。