2022年8月に勃発した大家(管理会社)VS 私の立ち退きバトル。立ち退き料を支払わずに部屋から出て行ってもらいたい大家(管理会社)と、相場に見合った立ち退き料を受け取りたい私との争いは、前回の記事でお伝えしたとおりの形で幕を閉じた。
だがしかし、交渉は終わっても戦いは終わっていなかったようだ。少なくとも、マンションの管理会社にとっては。というわけで、今回は「立ち退き料の交渉」が終わったあとの出来ごとについて、立ち退きバトル番外編と題してお届けしよう。
・日割り分の残り家賃が返金されない
何があったのかをひと言でいうと、日割り分の残り家賃が返金されなかったのだ。というのも、メールでの約束では「引っ越しの月は家賃を日割りにして、残り分は返金する」ということになっていた。
期限は2023年1月31日まで。管理会社との間で交わした「解約精算書」でも、そのように記載されている。
ところが、2月になっても入金はなし。一体どうなっているのか? 当然ながら私は管理会社に問い合わせた。すると……
いちおう返事は来た! ってことは単なるケアレスミスなのかな? と一瞬は思ったものの、すぐに返金されず。「こういう事情で遅れています」的な報告も一切ない。ウソでしょ? もしかしてお金が返ってこないとか?
ちなみに、私は月初めに引っ越したので、日割り分の残り家賃はすなわち ほぼ家賃1カ月分。それが、全然振り込まれないのである。
焦りゆえに、私は毎日銀行口座をチェックした。すると……数日後にようやく入金を確認! 良かった〜! やっとぜんぶ終わった〜〜〜〜〜と胸をなで下ろしたのだが、管理会社からは「入金しました」といった連絡はなし。
無言でお金だけ置いていった形である。まぁ今まで管理会社の対応に悩まされてきた私としては驚きはないが、それでもやっぱりスッキリはしない。忖度なく書くならば、「『約束の期限をすぎて申し訳ない』くらい言えやボケ!」と思っていた。
と同時に気になったのは、このような場合って期限を過ぎた分の利子などを請求しようと思ったら出来るのだろうか? という点。そのあたりを弁護士のFさんに聞いてみると……
Fさん「支払期限を徒過した場合、年3%の遅延損害金が発生します。請求するかどうかは債権者の意思次第です」
とのことなので、やろうと思ったら出来るようだ。まぁ私自身はもう管理会社と関わり合いになりたくないので請求しないが、もし私と同じような焦りを感じている人がいたら遅延損害金のことを頭に入れておくといいかも。
あと、今回の立ち退きバトルで私が弁護士のFさんに質問した内容の中で、これまで紹介していなかった内容を以下にまとめておいた。今まさに「立ち退いてくれ」と言われて困っている人の役に立ったら幸いだ。
Q:もし立ち退き交渉で話がまとまらず、大家側が「退去要請は取り下げる。ただ、家賃を上げる」と嫌がらせのように言ってきた場合、私としては従うしかないのでしょうか?
A:賃料増額は、固定資産税の上昇や近隣相場との乖離(かいり)といった要件が別途必要になりますので、必ず従わなければならないということはありません。増額を認めるかどうかは最終的に裁判所しか判断できません。
Q:実は私、マンションに長く住んでいる関係で、床や壁に何箇所かキズがあります(大きなものではありません)。で、立ち退き料をめぐる交渉で大家側が怒り、「このキズは敷金じゃカバーしきれないから別途修繕費用を払ってくれ」的なことを言ってきた場合、私としては従うしかないのでしょうか?
A:明け渡しに際して、原状回復義務を免除するといった条項を入れることはよくあります。そのような条項がなければ、契約書通りに原状回復義務を負うことになります(※注 このアドバイスに従い、交渉では原状回復義務を免除することにこだわった。詳しくは第7話を参照)。
Q:今回のように大家都合で立ち退きを求められた場合、逆に「これをやったら立ち退き料は発生しない」とかってありますか? 迷惑行為などは想像がつくのですが……。
A:迷惑行為のレベルを明確に回答することは難しいですが、迷惑行為のレベルが高い場合(物件内で犯罪行為があったりなど)は、立ち退き料ゼロで明け渡しが認められることはあろうかと思います。
一方、迷惑行為のレベルが低い場合(騒音の問題など)であっても、再三の注意にもかかわらず繰り返し行われるといったケースであれば同様です。
また、契約当初から当事者間で一定の時期に退去することが共通認識としてあり、それゆえに賃料が安く設定されていたというようなケースであれば立ち退き料が発生しないこともあろうかと存じます。
Q:今回のケースとは変わってくるのですが、もし仮にマンションの老朽化などの理由によって大家から立ち退きを迫られた場合、立ち退き料は発生するのでしょうか?
A:老朽化であっても基本的に立ち退き料は発生します。ただ、老朽化も程度の問題でして、朽ち果てたと言えるレベルであれば発生しないこともあろうかと思います。
法律的には、立ち退き料は契約を終了させるために必要な「正当事由」の補完事由とされております。つまり、明け渡しを求める理由がまず必要で、それだけで明け渡しを認めることが賃借人にとって酷といえる場合には立ち退き料を支払うことで補完できるという考え方です。
逆に、明け渡しを求める理由がなければ、いくらお金を積んでも一方的な請求が認められることはありません。そのため立ち退き料の金額は事案によって変わってくるとしか言えませんが、転居に必要な費用+α(商売をやっている場合にはさらに一定期間分の休業補償)という考え方はどの事案でも共通する考え方になろうかと存じます。
──以上!
もうこれで、私が今回の交渉を通して得た経験・知識はあますところなく書いたように思う。心残りは何もない。なので、当連載「立ち退きバトル」はそろそろマジで終わりにしたい。もう番外編はない。もちろん、立ち退きバトルSeason2はない。絶対にない。もう2度とやりたくない……!
というわけで、今日はこのへんで。面倒な交渉も執筆もぜんぶ終わったから、私はちょい飲みでもしつつゆっくりして過ごしたいと思う。皆さんも、良い週末を〜!
執筆:和才雄一郎
Photo:RocketNews24.
※以下に「これまでの大まかな流れ」を記載している。気になる人はどうぞ!
【これまでの大まかな流れ】
・2022年8月、マンションの管理会社から私のもとに退去依頼のメールが来る。
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・私が弁護士のFさんに相談したら「納得できる金額の提示がなければ退去要請に応じる必要はありません」との助言(詳しくは第1話)
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・立ち退き料の交渉をすべく管理会社に連絡してみると、担当者からは「私が話をまとめましょう」との心強い返事。しかしメールの下の方に「立ち退き料は家賃の2〜4カ月分プラスαで打診する」との記載が。
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・立ち退き料の提示額を管理会社に勝手に決められて焦った私は、返事を保留。同時に弁護士のFさんに相談すると「今回のケースの場合、感覚的には家賃の6カ月分から交渉スタートで、そもそも大家さんが自分で部屋を使用する必要性が認められない可能性を踏まえると、さらなる上乗せが必要という感覚」とのお返事(詳しくは第2話)
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・管理会社と弁護士で意見が合致しないため、私が管理会社に「『立ち退き料は家賃の2〜4カ月分プラスαで打診』と記載されてましたが、2〜4カ月+αが適切だとする根拠は何ですか?」とメールで質問。
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・相手の返事は「根拠はない」。その返信メールでは今までと雰囲気が一変し、「立ち退き料が0円になるかも」「住みにくくなるかも」などの文言があってビビる。
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・不安になった私は、弁護士のFさんに「このケースで立ち退き料が0円とかあるんですか?」と質問。すると、「今回のケースで0円というのはほぼあり得ないと思います」との回答(詳しくは第3話)
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・弁護士のFさんの返事に安心した私は、管理会社に対して「立ち退き料は家賃2〜4カ月分プラスα」だと主張する根拠を再び聞く
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・管理会社の回答を見て私ブチギレ。担当者を代わってもらうよう要請する(詳しくは第4話)
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・管理会社からの「社員1人の会社なんで」という回答に「マジかよ」となる(詳しくは第5話)
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・ようやく大家と直接やりとり出来るようになったが、入居時にサインした契約書に「立ち退き料は一切を請求しない」的な条項があることを大家に突っ込まれて大混乱。なお、大家が提示した立ち退き料は家賃の3カ月分で、こちらが交渉開始ラインと考える金額の半分以下。
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・弁護士のFさんに相談したことで、「立ち退き料は一切を請求しない」という条項が無効だと知る。管理会社のやり方にまたしても私ブチギレ。先方の要求をつっぱねる(詳しくは第6話)
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・最悪な雰囲気のまま大家と立ち退き料をめぐる交渉がスタートするが、要求をつっぱねたら「立ち退き料は家賃の5カ月分」
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・軽く粘ってみたが、それ以上の立ち退き料を求めようと思ったら裁判になる可能性があったので、立ち退き料は家賃の5カ月分+敷金の全額返金で手を打つことに
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・契約書を見たら敷金の条項が聞いてたものと違ったので猛抗議(詳しくは第7話)
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・管理会社が「部屋の原状回復義務を放棄する」という項目を加えたので、合意書にサイン。後日、立ち退き料と敷金全額が振り込まれた
↓
・すべて終わったと思って油断してたら、日割り分の残り家賃が返金されないトラブル発生
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・管理会社に問い合わせて数日後にようやく入金を確認するも、管理会社からの連絡は一切無し。スッキリしない気分のまま立ち退きバトル終了