もはや年末の国民的行事となった漫才ナンバーワンを決める大会「M-1グランプリ」。芸歴15年以内という縛りや、敗者復活戦といったシステムがドラマを生み、視聴者が熱狂する姿はさながら高校野球のようでもある。
そんなM-1に続く新たな漫才の賞レースが『THE SECOND~漫才トーナメント~』である。こちらは “結成16年以上” の漫才師たちが出られるお笑い賞レース。公式サイトによると
実力や才能はあっても、出場できる賞レースがないため、ブレイクのきっかけが見出せない…そんな漫才師たちに“セカンドチャンス”をつかんでほしいという願いを込めて、フジテレビが立ち上げる新たな大会
とのこと。こちらもM-1グランプリと同じように、予選が観覧できるということだったので、2月17日(金)に開催された東京予選会3日目を実際に観に行ってみた。
『THE SECOND』の展開
第1回の『THE SECOND』にエントリーしたコンビは130組以上。M-1グランプリ2022のエントリー数が7261組だったことを考えるとめちゃくちゃ少なく感じる。
ところがどっこい、出場メンバーや選考方法を見ると、思った以上にハードな大会だった。簡単に『THE SECOND』のルールをまとめておきたい。
<予選> 130組以上が出場。32組が本戦トーナメントラウンドへ
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<1回戦>32組が1対1の “タイマン” 形式でネタバトル、16組に絞られる
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<2回戦>16組が再びタイマンバトルで8組に絞られる
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<決勝>8組のファイナリストが1DAYトーナメントバトルを展開
ポイントはM-1とは違って、タイマン勝負やトーナメントバトルが行われる勝ち抜き戦……という点。そして、M-1の7261組は素人や無名のコンビが大多数を占めるが、『THE SECOND』はそこそこ名の知れたベテランコンビばかりだという点である。
予選を勝ち抜いて32組に残るのも意外と大変なのではないか?
・東京予選会へ
私が観に行ったのは予選会の東京3日目・昼の部。舞台は茅場町にある東京証券会館ホールだった。まず、場所がお笑いに馴染みがなさすぎる。
ビジネスマンが行き交う茅場町のど真ん中にある、真面目100%って感じの場所であった。
私はM-1の1回戦も何度か観に行ったことがあるので、ここからは実際に見て感じたM-1との違いをレポートしていきたい。
1. ネタ時間が長い
予選会東京3日目・昼の部に出場するのは16組。めっちゃ少なく感じるけど、なんとネタの制限時間は6分。M-1の1回戦の制限時間が2分だったのでだいぶ長い。
芸歴16年目以上のベテランともなると、劇場で長尺のネタをやることが多いだろうし、このくらいがいいのかもしれない。コンビの腕前をじっくり見ようじゃないかって感じだと思うんだけど、つまらなかったら退屈な6分間になる。
2. お笑いファンなら知ってる顔ぶれ
16年以上、やめずに漫才をやってきた人たちの大会である。玉石混交で素人みたいな人たちもたくさん出てくるM-1の1回戦とは全然違う。出場メンバーは、かつてテレビのネタ番組でよく見た人たちも多い。
M-1の常連組でいえば、この日はジャルジャルやタイムマシーン3号など。ボキャブラ世代のX-GUNや、オンバト世代のダイノジ、クロスバー直撃。ほかにも超新塾やななめ45°、「ちがうか〜」でお馴染みの ものいい もいた。定番のつかみやギャグを見ると「おおっ」と思うし、華もある。
あと、漫才協会に所属している漫才師たちが異常に多かったので、浅草の東洋館(老舗のお笑い劇場)にいるような気持ちになった。
3. ベテランたちの舞台なれがエグい
素人や売れない芸人が集まるM-1の1回戦は、本当にひと笑いも起きず、空調の音が聞こえるくらいスベるコンビや、ネタを飛ばしてパニックになるコンビもいてスリリングだった。
ところがベテランぞろいの『ザ・セカンド』の安定感たるや。予選とは思えないほどウケるし、ミスったときのアドリブも秀逸で「芸」を見せられている感じがする。よく名前を知らないコンビでもガンガン会場を盛り上げていく。(そういうコンビは漫才協会に所属している率が高い)
4. アップデートされてないと際立つ
もちろん、ベテランが集まるからこその残酷な面もある。いまだに新しいことをやって会場をドッカンドッカン笑わせるコンビもいるいっぽうで、容姿や職業みたいなのをいじるネタをやってるコンビを見て「あ、今こういうのって笑えないんだよな……」と微妙な気持ちになることもあった。長くやっていて自分たちの型が決まってしまうのだろうが、こういうのはちょっと見ていてしんどい気持ちになる。
芸歴1年目から15年目のM-1だと「まあ、まだ若手だからね」といえるけど、16年目以上だとその言い訳もきかなくなる。ベテラン同士の戦いだからこその差が際立つというか。
・M-1よりも残酷かもしれない
みんなベテランで基本レベルが高いことを考えると『ザ・セカンド』は予選の勝ち上がりからして難易度が高いと思った。130組以上から32組に残るのは熾烈な争いになりそうだ。
M-1で結果が残せずラストイヤーを迎え、解散したり、目標を失ってしまうコンビも多い。そういう人たちにチャンスをつかんでほしいという願いが込められた「ザ・セカンド」だけど、じゃあ「ザ・セカンド」でもダメだったら……? そっちの方がダメージ大きいんじゃないか、などと思ってしまったのだった。
参考リンク:THE SECOND
執筆:御花畑マリコ
Photo:RocketNews24.
【現時点で出場を表明している漫才師】
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