今年も学生さんたちが頭を悩ませるこの季節がやってきたか……

そう、受験シーズンである。1月半ばには大学への合否を決める共通テストが終了し、高校受験も間もなく本番が近づいてきているのではないだろうか。

受験の話題を聞くたびに、筆者は大学受験の際に起こったある事件を思い出す。いやほんと、まさか当日にあんなことになるなんて思いもしなかったなぁ……


・前日譚

筆者が受験したのは某美術大学。形式はいわゆるAO入試だった。

AO入試の内容は大学によって異なるが、この学校では2日間にわたってそれぞれの学科の授業が実際に行われ、授業態度によって合否が判断されるとのことだった。

受験当日、緊張しながら会場に入ると教室の中は既にたくさんの受験生たちで賑わっている。「ここにいる皆がライバルなのか……!」と緊張しつつ、指定された席に着いた。

チャイムが鳴り、いよいよ授業が始まる。


もちろんこの大学に合格したいと思う気持ちもあったけれど、今後の制作にこの受験で得た知識を活かしたい! と全力で耳を傾けた。

自分が好きな分野のことを学べるのが純粋に楽しかったこともあり、多分これまでに受けてきたどの授業よりも真面目に聴講していたと思う。

休憩時間に先生や周りの受験生たちが話しかけてきてくれたこともあり、とても有意義な時間を過ごすことができた。


充実した時間を過ごして1日目の授業は無事終了。ホテルに戻り、翌日に備えて早めに就寝した。


・異常発生

翌朝起床した筆者は、目にごろごろとした痛みを覚えた。ごみでも入ったのかと鏡で確認してみたり目をこすってみたりしたものの、全く改善される気配がない。

どうにかして痛みを和らげようとしたものの、授業開始時間は刻一刻と迫ってきている。あまり触りすぎても逆に悪化させるかもしれないと思い、仕方なくそのまま受験会場に向かうことにした。


──数時間後、筆者は完全に判断を誤ったことを悟る。大学に到着する頃には、目の痛みはより酷くなっていた。別に悲しくもなんともないのに、生理的な反応で涙まで出てきている。

しかも2日目の授業内容は、昨日の講義を参考に実際に作品を作ってみるというもの。昨日の雰囲気からすると、また先生や周りの受験生と会話をすることもありそうだ。

今の自分を客観的に見た図を想像してみよう。


泣きながら受験に挑んでる情緒不安定な奴──……


まずい。


「ヤバい奴認定されて落とされるんじゃないか」とか「保健室に行ったとしてもタイムロスになって減点に繋がったらどうしよう」などと考えてしまい、当時は冷や汗が止まらなかった。

今考えてみれば、そこまで思いつめる必要はなかったのかもしれないが。

予想通り先生が声をかけてくることもあったけれど、こっそり涙を拭ってなんとかごまかしつつ制作を進める。


そして授業も終盤に差し掛かった頃。「このままなら無事に終われるんじゃないか!?」と期待を抱き始めた筆者だったが、先生が不意に発したある一言に背筋が凍り付いた。


「それでは今から簡単な面談をします~」


面談!?


めんだん!??!???!?


なんと、受験要項には書かれていなかった軽い面接のようなものがあるのだという。き、聞いてない……! 必死に目を拭い、自分の番が来るまでに全力で涙の跡を乾かした。


幸い面談の時間は短かったため先生の前で涙が出ることはなかったけれど、頭の中は半分くらい痛みに持っていかれていた。おかげで何を話したのかは正直ほとんど覚えていない。


・当日まで何が起こるか分からない……!

そんなこんなで何とか受験を終え、この症状を家族に話すと「ものもらいじゃない?」とのこと。

インフルエンザや風邪じゃなかっただけまだマシだったのかもしれないけれど、よりによって受験の日にものもらいになるとは……!! 

人生で初めて発症したため、原因が一体何なのか全く見当がつかなかった。

結果的に合格できたからよかったものの、散々な受験をしてしまったので合格発表の日まで気が気でなかった。変なストレスを抱えながら過ごす日々は、本当にしんどかったなぁ……

読者の皆さんの中には、これから受験に挑む方もいるだろう。筆者と同じような思いをしないよう、体調にはどうか当日まで気を付けすぎるくらい気を付けてほしい。

皆さんが素敵な春を迎えられますように!! 応援してます!!

執筆・イラスト:うどん粉