長かった……ここまで来るのに19年もかかってしまったよ。洞爺湖

道央の太平洋側にある洞爺湖は札幌から見ると南西。しかし、地図の見た目ほど近くなく、電車でアクセスするなら、間にそびえる山々をグルッと迂回する必要がある。正直、大阪出身の私(中澤)は洞爺湖が道央だということすら知らなかった。

っていうか、洞爺湖のことは何も知らないに等しい。にもかかわらず、洞爺湖に憧れていたのには理由がある。あれは19年前のこと──

・変なマンガ

私は21歳の若造だった。大学3回生、授業も余裕ができてきて、就活もギリ始まっていない最後のモラトリアム。子供と大人の間。そんな時に、愛読していた週刊少年ジャンプで変なマンガが始まった。

基本的な舞台設定は江戸末期か明治初期かという感じ。しかし、まず変なのは空に宇宙船みたいなのが飛んでいること。さらには、異星人みたいなのが街を歩いている。要するに、明治維新の際の黒船が異星人だったら……というパラレルワールドなのだ。

・SF時代劇

廃刀令が敷かれ異人の科学が流れ込んだ世界では剣術が廃れつつある。そんな中、潰れそうな道場の跡取りが主人公の1人。当時、ここら辺の話の流れに『るろうに剣心』を強く感じたことを覚えている

それにしても、この主人公、マンガのキャラとしてはパッとしなさすぎではないだろうか。眼鏡に伸びた坊ちゃん刈りみたいな髪型で、私が通ってる大学ですら一番イケてないグループに分類されそうである。っていうか、私がそうなのだが。神谷薫の方が100倍助けたい。

・『ごっつええ感じ』みたい

となれば、緋村剣心みたいな強キャラが助けるんだろうな。と思ってページをめくったら、ほら来た。こちらは髪の毛ツンツンで恰好も傾いている。

ストーリーの既視感が凄い。でも、なんか変なのは、うるさいこと。時代劇のはずなのに、シリアスなシーンでもボケが入って来て、ほとんどの会話がボケとツッコミみたいになっている。例えるなら、『るろうに剣心』というより、『ダウンタウンのごっつええ感じ』だ。敵、MR.BATERだし

・妙に気になった

とは言え、動画ではなくマンガでコントをそのまま文字にしたみたいな会話だから、微妙に乗れない。ダラダラしているというか。正直、面白いとはあまり思わなかった。っていうか、打ち切りオーラがプンプンする。

しかしながら、妙に気になって次の回も読んだ。次の次の回も。それを繰り返しているうちに、私は4回生になっていた。就活をしなければならない。でも、まだ卒業できるかどうかも分からない段階で、次に進む道を自分で考えて決めるというのがどうしてもできなかった

・どうしようもない日々

よく聞かれるのは「やりたいことは何か?」ってこと。しかし、やりたいことなんて何もない。いや、ガチで本音を言うとミュージシャンでプロになりたいのだ。多分無理だから別にお金を稼げる何かを考えなくてはいけないのは分かっているのだが、他にやりたいことがないのである。

これまでも決してやりたいことをやって来たわけじゃない。今はやりたいことがあるのに、それを選べない。だったら私の人生って何なんだろうか

悶々と悩んではフリーターのバンドマンの先輩の家に転がり込みゲームをする。そんなどうしようもない日々に、ジャンプのダラダラしたマンガはフィットした。めちゃくちゃ面白いわけではない。むしろ、主人公はうだつの上がらないフリーターのオッサンである。でも、その自由さは眩しく見えた

・このままでは終われない

結局、私は就活をしなかった。ローソンの深夜バイトをしながら、ジャンプが入荷したらまずそのマンガを読んでいた。1年が経ち、上京してバンドを組もうとしたが、あてがないので全然メンバーは集まらない。

バイトを転々とする日々。たまに来る親からの連絡には「うまくいってる」とバレバレの嘘をつく。このままでは終われない。そのマンガも全然終わらなかった。クズばっかり出てくる。まるで自分みたいだ。ハハハ。私の元にもあのマンガの主人公が来ないだろうか……。

・そのマンガの名は

気付けばマンガはジャンプの中でも人気作になっていた。それに伴って壮大でシリアスな展開も入るようになり、風格が出始めた。しかし、日常の話に戻ると、相変わらずクズばっかり出てくる。なんだこの実家のような安心感は。最初は変に感じたやり取りにこんな感情を抱くようになるなんて。

もう分かる人には分かったと思うが、そのマンガとは『銀魂』である。知らないうちに人生を共に歩んでいた本作。それにしても、まさか15年も連載するとは。これは話数で言うと週刊少年ジャンプ史上3位の長期連載らしい。凄いよ空知先生。

そんな本作の主人公・坂田銀時は「洞爺湖」と掘られた木刀を使っている。冷静に考えると、作中に洞爺湖が出てきた記憶がないのだが、気づけば洞爺湖は私の中で大きい存在へと変わっていた。知らないうちに共に歩むようになった本作のように。一体どんなところなんだ洞爺湖。

・これが洞爺湖……

19年間積もりに積もった想いが私の背中を押す。洞爺湖のほとりに立つと、広すぎる湖は湾みたいに見えた。写真もうまく撮れてるのかどうか分からない。ハ……ハハ、意外と大したことないな洞爺湖。アレ? なぜだろう? 目からジャスタウェイが……。

車でグルっと一周してみたところ、南側の洞爺湖温泉のところには何軒か土産屋があり、木刀が売っていた。やっぱり聖地として来る人が多いのか、銀魂推しの土産屋が目立った。店内にはフィギュアがあったりポスターが貼られている。いや、アニメイトかよォォォオオオ

・木刀を買ってみた

中でも、『越後屋』という店の木刀は長くて星砕き感があったので購入してみた。任意の文字を掘ったりするサービスもある様子。手彫りは一文字100円+税、機械彫りは一カ所500円+税なのだそうな。そう言えば、銀さんが通販で木刀買う時も職人にそのサービス勧められてたっけ。本当にあったんだ

ちなみに、木刀の価格は税抜き5000円。ただ、郵送してもらう場合は、郵送費でプラス1864円(税抜き)かかる。機内には持ち込めないと思われるので、帰りが飛行機の人は注意してくれ。

・銀魂が初めてジャンプに掲載された日

修学旅行ですら木刀を買ったことがない私。初めての木刀が洞爺湖なのは感慨深い。ずっと銀さんが助けてくれることを待ち望んでいたあの頃。思えば、ここに来るまでに色んなことがあった。気づいたら銀さんより年上になってたんだなあ。


なお、そんな『銀魂』が週刊少年ジャンプで連載開始したのは2004年の新年2月号。ウインター新連載の第2弾で、発売日は19年前の1月8日であった。つまり、本日は『銀魂』の誕生日。ファンは洞爺湖に想いを馳せるのも良いかもしれない。

執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.

▼ちなみに、これは文字入れの例なのだが……

▼糖分は銀さんが甘党なので分かるとして……

▼This is 向井秀徳……!

▼節子、それ向井秀徳やない。木刀や。

▼長谷川さんがあそこまでブレイクするとは登場時は思ってもみませんでした。