あまり名物料理がないことで知られるイギリスだが、『サンデーロースト』という伝統料理は必見の価値があるらしい。サンデーローストはその名の通り、イギリス人が日曜日に食べるもの。世界広しといえど、決まった曜日に食べる料理って珍しいんじゃないだろうか。

サンデーローストが食べられるのはパブやレストラン。日曜日以外にサンデーローストを提供する店もあるようだが、なんとなく負けた気がするので私は日曜日を待った。イギリスの伝統料理……いざ、お手並拝見である。

・ドキドキのミシュラン掲載店

日曜日の午前、私はホテルの人に薦められた『The Pig and Butcher』なるパブへ向かった。ロンドン地下鉄『Angel(エンジェル)』駅から徒歩10分ほど。どうでもいいけど、もし日本に『天使』っていう名前の駅があったら結構ビックリするよね。

よく見ると教えられた店はミシュラン掲載店! ミシュランといえば以前、ドレスコードに大変苦労した思い出が蘇る。

そうとは知らずジーパンにビーサンで来てしまったが、これは大丈夫なんだろうか? 開店と同時に席が埋まり始める店内。コソコソとカウンターのはじっこに座ると……


女性スタッフに「ちょっと足を見せて」と言われてしまった!!!


どうもすみませんでしたァァアア!!!!


しかし冷静に話を聞くと……どうやら彼女は「あなたの足のネイル、素敵ね」と言っているらしいのだった。イギリスのパブは誰でも気軽に訪れることができる場所。ミシュラン掲載店とはいえ、基本的にドレスやスーツを用意する必要はなさそうだ。よかった〜!

この日は父の日で、メニューには「Happy Father’s Day」と印字されている。イギリスのご家庭って、父の日のお祝いにパブを訪れるんだろうか? なんか、イイなぁ〜!

「サンデーローストが食べたい」と告げると、メニューに印を書き込んでくれた。4種類から選べるようだが、よく分からないので一番人気だという『Saddleback pork belly & Bramley apple sauce』に決定。23ポンド(約3757円)。円が安すぎて高価に感じるが、ロンドンのランチとしては妥当な金額だ。


・英国紳士イケすぎ問題

せっかくの日曜日なので昼間っからビールもオーダー。銘柄がよく分からずオススメをお願いした。フルーティーでマイルドな味わい。完全な常温。

寂しげな日本人を気遣ってか、スタッフの方がしきりに「楽しんでる?」と話かけてくださる。中でもキアヌ・リーブス似のビール担当・ヒゲ中年紳士氏は、永遠に目で追ってしまうレベルのイケメン。私がロンドン在住だったなら、おそらく出禁寸前まで通いつめてしまうだろう。


とかやってるうちに運ばれてきたサンデーローストが……


こちらになります!!! なんか思ってたのと違う!?


・サンデーローストとは

主役はローストした肉。今回私が注文したのは豚肉だが、牛、鶏、ラムなど様々なバージョンがあるそうだ。そこへ野菜やポテトを添え、グレイビーソースで頂くのがサンデーローストの基本スタイルである。

そんなことより……気になって仕方がないのは、上に乗っかった巨大なパンみたいなヤツ。これは『ヨークシャープディング』といって、簡単に言えば “シュークリームの皮のようなモノ” らしい。

インパクト抜群な反面やや邪魔なヨークシャープティングをどかすと、サンデーローストの全貌が見えてきた。豚バラ肉に添えられた大きめのニンジン、ジャガイモ、ブロッコリー、キャベツ。私は甘いニンジンがあまり得意ではないので、先に始末しておこう。

想像の10倍甘い!!! ここまで甘いと逆にスイーツとしてアリ!

そして肉、うまっ!!!! 表面の皮がカリカリすぎて、言われなければ油で揚げたと勘違いしてしまいそう。中は名店のチャーシューみたいにトロトロ。グレービーソースは思いのほかサッパリで、なんともヘルシーな料理である。

デカすぎが心配されたヨークシャープティングも、中身スカスカなのでパクパクいける。

皿の底にはりんごソースが潜んでいて、プディングに乗せればりんごケーキみたいでおいしい! 前菜からシメのスイーツまで、まるっとワンプレートで楽しめちゃう料理なんだな。


・英国かぶれ注意報

日曜のロンドン・パブでサンデーローストを食べている……そう考えただけで、なんだか英国淑女になった気分だ。 “日曜しか食べられない” といった文化も含めて、サンデーローストは日本人が潜在的に持つ英国への憧れを具現化したような食べ物であった。

気づけば店内は大入り満員。私の英語力が足りないために、店員さんたちとの雑談が思うように弾まなかったのは唯一の心残りである。いつの日かロンドン・パブのイケメン紳士と軽快なトークを交わしてみたい。英語、勉強しようっと!

今回の調査の結果、サンデーローストには食べる者全てを “英国かぶれ” に変貌させてしまう不思議な魅力が潜んでいた。イギリスを訪れたら食べるべき料理ナンバーワン! ちなみにオーストラリアやカナダといったイギリス連邦の加盟国でも食べられるらしいぞ〜!

執筆:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.

▼セットのカリフラワー・ココットも美味〜! イギリス大好き〜!