過去記事で猫用フェロモン「フェリウェイ®」を導入して、行動が穏やかになった我が家の猫。

その効果は持続中なのだが、それとは別に以前から気になって気になって仕方のない製品があった。猫用ランニングマシンだ。

YouTube上にはまるで野生のチーターのように全力疾走する動画がいくつもあり、猫のもつ身体能力に感動すら覚える。室内飼いの運動不足解消にぴったりな印象なのだ。しかしネックは、その価格である。


・ひたすら迷う

有名なのは「Cat Exercise Wheel」という商品で、米国One Fast Cat社製。購入ルートにもよるが価格は日本円でおよそ4万円から6万円! 人間用のランニングマシンが買えてしまう。

これは迷う。これだけ高額だと絶対に失敗したくないが、返品交換が大変そうな大型商品であることも気になる。

不良品とまではいかなくても「大きな動作音が出る」「素材由来の匂いがキツい」「つくりが粗雑で危ない」といったことも海外製品では十分考えられる。

しかし見たい。チーターのように疾走する愛猫が見たい。迷い始めてから数カ月、筆者は震える指で商品をポチった。


・開封と組み立て

待つこと10日。Amazonなどの即日発送に慣れてしまうと、ずいぶん長く感じる。待ちくたびれた頃に宅配便のお兄さんもびっくりの、ごっついダンボール箱が届いた。おまけに作業靴らしい足跡つきだ。誰か踏んだな。

「MAKE YOUR CAT FAMOUS!」とは「あなたの猫を有名にする」……?

インスタに使用中の動画を上げてってことかな? よくよく見たら、空箱もカッターで穴を開けることでキャットハウスになる仕様のようで凝っている。英語なので自信がないが。

中には部品がどっっっさり。

組立説明書には文字がなく、イラストだけでわかるようになっていた。どの言語を母語とする人でも一目瞭然で、グローバルに売れていることがわかる。レゴブロックの説明書のようだ。

また、工具は必要ない。弾性のあるプラスチックの凹凸が、パチンとはまる力を利用して組み立てる。よく考えられている。ネジと違って振動で緩んでこないので安全そう。

まずはプラレールの要領でパーツをつなげて……


大きな輪を作る。この輪の直径が118cm。組み立てには結構な床面積が必要だ。家具をすべて片づけて部屋一面を使う必要があった。

続いて、先ほどの輪っかに壁を立てていく。猫が走る部分だ。

押し込む力が必要でちょっと大変だけれど、パーツの合いは悪くない。頑張ればなんとか1人でも作業可能。ふぅふぅ言いながらも片側にぐるりと壁がついた。浅くて巨大な味噌樽(みそだる)のようになった。

続いてもうひとつの輪をはめ込むのだが、この段階でつまずいた。ちょうどコンビニコーヒーの紙コップに、フタを取り付けるところを想像していただけるとよい。

弾力のある素材とはいえ、紙コップ側の形状はすでに決まっている。そこに、ミゾを正確にかみ合わせながら、均等な力でフタを押し込まないといけない。

紙コップなら単純な円なのでいいが、この製品の場合、複雑な凸凹を交互にかみ合わせるようなイメージだ。

直径118cmもあるのですべてを同時に位置合わせすることはできない。こちらを押し込むと、あちらが浮き上がり……と四苦八苦。

しかも一度ロックされたパーツは(少なくとも女性の筆者の力では)外せない。つまり、やり直しがきかない。慎重に体重をかけて押し込み、比喩ではなく本当に手に血をにじませながらの作業となった。

苦節30分、全身汗だくだ。途中で何度か「あ、これ無理だ」と白目で天を仰ぎそうになった。しかし、やりきった。

ここまで来ればあとはできたも同然。脚部を組み立て、走行部分にシートを貼りつけて完成だ。パーツには予備もあり、最後のステップがめちゃくちゃ難しいことを除いては、しっかりした製品だった。

ホイールに結構な重さがあり回転に力が必要なこと、外側の構造がむき出しなことが気になるが、ちゃんと完成した。あとは猫の体重で回るかどうかだな。


・猫たちの反応は?

仮置き中だが、さっそく猫が登場! 仔猫ほどの活発さはないものの、まだまだ体力いっぱいの我が家の猫たち。どんな反応を示すのかドキドキだ。

筆者の予想では、好奇心旺盛で活発な弟猫のほうが先に使い方を覚えるのではないかと思う。それを見た兄猫が、おそるおそる真似をするという感じかな?

クンクンと匂いをかぐ。そうだろう、そうだろう。気になるだろう。遠慮せず乗ってみたら?

ん?


フイッとな。


少し遅れて兄猫も登場。


ん?


フイッとな。


翌日……


翌々日……


・4万円のオブジェ

なんということだ。まっっっっったく使われない。ゆらゆらと動くホイールが怖いのか、走行部分に乗ることすらしない。おもちゃで誘導しても無駄だった。

見慣れないものが縄張りに登場したら、かじってみたり、もぐってみたり、いろいろと探索するのがいつもの姿なのだが、今回に限っては完全に風景と同化している。なぜ!?


……はっ! まさかフェリウェイの「これは100年前からここにある、よく見知ったものですよフェロモン」がマシンに付着したのか? こんなところで効果を発揮しなくてよろしい!


※冗談です。そんな効果はないと思います。


ともあれ購入から1週間が経ったいま、我が家には4万円の現代美術的なオブジェが鎮座している。クチコミによると、しばらくして使い始めたという報告もあるので、希望を失わずに経緯を見守りたい。


参考リンク:One Fast Cat(英語)
執筆:冨樫さや
Photo:RocketNews24.
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