本の街・神保町のランドマークともいえる三省堂書店が、建て替えのため2022年5月8日で閉店する……。

都内の大型書店といえば、新宿の紀伊國屋書店、池袋のジュンク堂、そして神保町の三省堂書店といっても過言ではない。本好きにとっては聖地ともいえる場所だろう。

建て替えで2025年には再オープン予定とはいえ、駿河台の交差点の景色が一気に変わってしまうのは寂しい。

本や神保町という街への愛に満ちたフェアが開催されていたので、閉店前の三省堂の姿を記録しておきたい。


・いったん、しおりを挟みます

まず、SNSでも話題になっていたのが、ビル正面にかけられた「いったん、しおりを挟みます」という書店らしさあふれるコピー。ていねいにしおりの形になっているところにもグッとくる。このビルは建て替えだけど、三省堂書店の歴史は続く。

店内も建て替え前の閉店にちなんで、いろんなフェアを展開中。

41年の歴史の中でもっとも読まれた本が、名物の「タワー積み」で紹介されていたり……。

著名人83人がオススメ本を選んだ「著名人選書フェア」が大々的に展開されている。

これが森見登美彦に宮部みゆきに又吉直樹に……と、人気作家やアーティストたちのそうそうたるメンツ! これだけの人から選書を集められるって、さすがは三省堂ってな感じなのである。好きな作家やアーティストのおすすめ本って、グッとくるよね。

だけど、個人的にグッときたのは、三省堂で本を買ったお客さんたちからのオススメ本コーナーだった。名も知らぬ読書家たちが、誰かへの思いを込めて選んだ1冊が並んでいる。もう会えない家族、昔の恋人、本好きの仲間……。切ないメッセージに胸がギュッとなる。


・何が出るか? 本みくじ

そして、ユニークなのが「本みくじ」のコーナー。カバーのかけられた中身のわからない本がならんでいる。棚の前におみくじ箱が置かれていて、無料のおみくじをひくと……運勢とともにオススメの本のナンバーが書かれているのだ! 

さっそく引いてみると、やったー、大吉! おすすめは17番の本と出た。どうやらビターな恋愛小説らしい。買ってみたので読むのが楽しみだ。

本は全部で132冊。どの本かは開けてみるまでのお楽しみ!


・50%オフのセールも見逃せない

そして、閉店ということもあって、雑貨や文具などは50%オフのビッグセールをやっている。

1階にあるセレクト雑貨の「神保町いちのいち」は閉店。お皿やロマンチックな雑貨などがお買い得。本と同じくらい、ここで雑貨を見るのが楽しかったのでなくなるのは残念だなあ……。

3階の文具コーナーは、便利な定番文具や、いま人気の万年筆が半額に!

世界の文豪たちも愛していたという、モレスキンのノートが半額はアツいと思う。

猫ちゃんたちのぬいぐるみと目があってしまった。家族が見つかるといいね……。ううう(涙)

しかし、改めて三省堂のビルを見ると、その大きさに驚かされる。三省堂のまわりを囲むように他のビルが建っているので気づかなかった。

この中の1階から6階までほぼすべてが本で埋め尽くされているのだ。欲しい本ならなんでもある、本のデパートのようだった。

普段ならなかなか触れることのない、自然科学のコーナーや政治・経済に関する本のコーナーなんかも、面白そうな本がけっこうあったり。本棚を見ているだけで、知らない世界がどんどん広がっていく感じがする場所だった。

そして、どのフロアでも老舗・三省堂の旅立ちの前に、本好きたちや出版社が心を込めて珠玉の1冊を並べている。人生が変わるような、今見ている世界が変わるような本との出会いがあると思う。


ちなみに6月1日からは、新御茶ノ水駅寄りにある元・ヴィクトリアビルの仮店舗で営業が始まるそうだ。

3年後、駿河台の交差点に新しい三省堂ができるまで、しばしのお別れ。新しいビルがどんな形になるのか楽しみに待ちたいと思う。

参考リンク:三省堂書店プレスリリース(PDF)
執筆:御花畑マリコ
Photo:RocketNews24.
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▼実は、閉店するのは三省堂だけではない。すずらん通り側の青いビルも三省堂のもの。

▼三省堂で買った本を読むのにピッタリだった上島珈琲店は3月末で閉店し、居酒屋「焼き鳥道場」は4月28日で閉店、街もどんどん変わっていく

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