海外旅行ガイドブックの重鎮『地球の歩き方』。まさに現地を「歩く」のに役立つ細かい情報や、普通は観光客が行かないような極地や僻地までカバーする守備範囲の広さに、助けられた旅人は数知れない。

しかしここに「情報が古すぎてガイドブックとしては使えない」という致命的な欠陥を抱えながら、発売日を待たず予約のみで完売してしまった1冊がある。『水曜どうでしょう × 地球の歩き方』である!

下巻の刊行と同時に、昨年完売した上巻を重刷し、このたび堂々の2冊発売。幻の『地球の歩き方』をゲットせよ!!


・『水曜どうでしょう × 地球の歩き方』上巻・下巻 各1980円(税込)

説明するまでもないが、「水曜どうでしょう」は1996年にHTB北海道テレビで放送が開始されたローカル番組。

はじめは深夜枠だったものの、俳優のミスターこと鈴井貴之さん、大泉洋さん、ディレクターの藤村忠寿さん、嬉野雅道さんが歯に衣着せない掛けあいをしながら過酷な旅をする姿が人気を博し、あれよあれよという間に全国的な知名度を獲得した伝説的バラエティ番組である。

番組ファンならご存じだろうが、どうでしょう班は4度にわたってヨーロッパを旅している。最新企画「21年目のヨーロッパ21ヵ国完全制覇」でのシリーズ完結を記念して発行されたのが、今回の『地球の歩き方』なのである。

1997年から始まり2018年に達成するまで、実に21年間にわたる旅の記録であるため、掲載されている情報は古く、ガイドブックとしては使えない、と宣言されている次第。


・実物がこちら


手にとると、思わず「薄っ!」という声が出る。同人誌のようだ!! 


地球の歩き方といえば、国にもよるが電話帳のように分厚いものも多い。いまのように電子書籍が一般的でなかった時代は、分解して必要なページだけ持っていったり、現地で日本人同士で譲るのも定番だったと思う。

しかしこの薄~い歩き方、全ページが読み物だから内容はめちゃくちゃ濃いぞ。

ちなみに初出は2018年の「一番くじ 水曜どうでしょう 旅のカリスマ」の賞品として作られたもので、それに加筆・修正を加えたものが今回の愛蔵版。 なので、ごく一部の幸運な方は「持ってるぜ」ということになる。

まずは幻の上巻。初版1万部が予約のみで完売し、ほとんど市場に出回らなかった1冊だ。このたび第2版が刷られて入手しやすくなった。

内容は1997年の「ヨーロッパ21ヵ国完全制覇」の詳細レポート。出演陣が若い!


番組内で起こったことを、歩き方編集部が「いつもの歩き方の空気」で大マジメに解説していく。番組を知らなくても、なんとなくは理解できると思うが、VTR視聴済みの方が確実に楽しめるだろう。

面積や人口が「1ホッカイドウ」「2ホッカイドウ」という謎の単位で示されているところや、大人の事情で伏せ字があるなど、どうでしょう節が炸裂している。

その一方で、立ち寄った場所の住所や座標などは、かなり正確に記載。「ガイドブックとしては使えない」というのはある意味謙遜(けんそん)で、2020年時点の情報が加筆されていることもある。どうでしょう班の足取りをたどろうと思ったら、たぶん完全再現できるぞ。

「我々でさえ思い出せないところまで丁寧に調べている」とは藤村Dのことば。歩き方編集部のリサーチ力が遺憾なく発揮されている。



そして下巻では、大泉さんが当時つづっていた抱腹絶倒「ロケ日記」が必見! 撮影の裏側が垣間みられる。

終盤には2020年の最新作「21年目のヨーロッパ21ヵ国完全制覇」のコーナーも加筆されている。


・スペシャル裏トークも配信中

なお、番組公式YouTubeチャンネルでは出演者4人による裏トークを配信中。終わったばかりの「21年目のヨーロッパ21ヵ国完全制覇」について語っている。

ロケ中に起きたエピソードや秘話、4人の今後の展望などなど……となっているが、トーク内容が脱線しまくり、終始ゆるゆるなのは相変わらずだ。

やはり21年も経つと4人それぞれが年齢を重ね、当時は若者だった大泉洋さんもいまはミドル。関係性の変化についても触れている。

筆者は個人的にも同番組が大好きなのだが、魅力は「バカバカしいことを真剣にやる」ところだ。もちろん雰囲気は、ゆる~く自然体ではあるのだが、どんなに過酷でも最後にはやり抜く。

サイコロで行き先を決めて移動し続ける名物企画「サイコロの旅」なんて、ただひたすら交通機関を映しているだけで、旅先の風景すらないのだが、一緒になって笑ったり、身体が痛いような気になったり、終わらない青春を追体験しているようである。

出演者4人の仲のよさや信頼関係も感じられ、クラスの男子の大騒ぎをみて「男ってバカだなぁ」と思いながら、ちょっとうらやましいような、そんな感覚だ。

いまや大俳優なのに飾らない大泉さん、なんだかんだで面倒見のいいミスター、底抜けに明るい藤村D、数少ない発言がやたらと光る嬉野Dと、それぞれの個性が唯一無二の空気を作り出している。


番組が体現しているのは、まさに「おもしろきこともなき世をおもしろく」! 世の中、捨てたもんじゃないなと思えるぞ。年齢を重ねた4人が、これからどんな企画を打ち出していくのか楽しみである。

書籍の販売はHTBグッズ取扱店ほか、三省堂書店やローソンのLoppiでも。ファン必携の2冊である!


参考リンク:HTBオンラインショップ(上巻下巻
執筆:冨樫さや
Photo:@Press、PRWire、RocketNews24.

▼【公式】水曜どうでしょう