先日、とある道の駅で休憩をしていたところ、ヤバそうな雰囲気の食べ物を発見した。長野県や愛知県の山間部に伝わる郷土料理で、その名も『へぼめし』

へぼとはクロスズメバチの幼虫のこと。つまりへぼめしとは、クロスズメバチの幼虫を混ぜたご飯なのだという。

虫だけに無視をすることもできたのだが……筆者の中のライター魂が「食べるべきだろ!」と叫んでいる。そうか、食べるべきか。食べるべきだよな。うん……。食べるしかねぇな!?!?!?

・へぼは貴重なタンパク源だった

そもそも何故へぼを食べる文化があるのかというと、山間部では貴重なタンパク源だったため。文部科学省が作成する日本食品標準成分表2020年版(八訂)によると、はちの子は100gあたり16.2gのタンパク質を含んでいるそうだ。

この16.2gがどれぐらいのものなのか筆者にはよくわからなかったのだが、サバの味噌煮缶(16.3g)や豚のハツ(16.2g)と同じぐらいということ。肉や魚と肩を並べるとなると、虫の栄養価も素晴らしいように思えてくる。


ということで、さっそく購入してみよう。筆者が訪れた店舗では、1人前税込800円。


支払いが済むと木箱を渡された。

この中にへぼが……


入ってる!!!!!!

原材料名には「スズメ蜂、醤油、砂糖、ミリン」


・人生で初めてへぼめしを食べてみた

ここから先は虫がゴロゴロと入ったご飯が出てくる。苦手な方は回れ右していただき、ひと目たりとも見ないことをオススメする。気分が悪くなったとしても、筆者は一切責任をとることができない。


言ったぞ? 覚悟はいいな??


いざ、開封!!


…………。


思ってたより虫多いなァーーっ!?!?

偏見を持たずに判断しようと誓って開封したのだが、さすがに「気持ち悪い」と言わせて欲しい。だってアクセント程度にしか入っていないと思っていたのに、赤飯の小豆ぐらいの勢いで虫が入っているんだもの!


しかもなんということでしょう……。てっきり幼虫だけが入っていると思っていたのに、半分くらいは成虫。ハチの姿をしているではないか!

その辺で飛んでいる “蜂” そのものがご飯に紛れている!


黒い体、そして手足や触角、羽まで生えた虫らしいビジュアルが米の中で非常に目立っている。幼虫だけであれば、薄目で見れば麦飯に思えなくもないのだが……成虫のせいで虫入りであることが嫌でもわかってしまう。


フタを開けて5秒ぐらいは時間が止まったようだった。

本当にコレを食べるのか。まだ間に合う。食べないという選択肢もあるはずだ……あるはずなのだが…………しかし!!

ここで引き下がってしまえば「虫に負けた女」という看板を背負って生きなければならない。嫌だ、私は虫よりも強い。虫なんぞには負けない!!


うおぉぉぉぉぉぉぉおおおお!!!!!!


覚悟を決めて、いただきます!


…………。

お味は……意外と美味しい。


醤油とミリンで整えられたご飯は、あっさりとしていて甘辛い。噛むとプチっと弾けるのが幼虫で、パリパリと砕けるのが成虫だろうか。

幼虫はフニフニした身体の中に旨みたっぷりのエキスが入っており、イクラの皮をぶ厚く、ミルキーな味にしたようなイメージだろうか。想像していた苦みや、虫っぽいジョリジョリ感はまったくない。

対して成虫は佃煮のようなイメージ。何にも例えがたいのだが、強いて言うならば海老に近いかもしれない。香ばしくパリパリでかなり美味しかった。


筆者は成虫の方が好きかな。


しかし味は美味しいのに、虫を食べていると思うとつい顔が引きつってしまう。

脳内で美味しさと違和感が激しくぶつかり合って混乱している女の顔である。


ここでふと気になったのが、ご飯が冷たいこと。お弁当箱に入った状態で店頭に並べられていたため、筆者が購入した時点ではすっかり冷え切ってしまっていた。暖かければもっと美味しい気がするのに!!


・温めて食べると美味しい炊き込みご飯風に

ということで夕ご飯、レンジでチンしたへぼめしをいただいてみた。


こっちの方が断然旨い!


幼虫の皮が温まって柔らかくなったことにより、虫っぽさがさらに少なくなった。ご飯もふっくらして、成虫のパリパリ食感とのギャップが良い。コレは旨い……旨いぞ!

まるで旅館の晩ご飯にいただく炊き込みご飯のようで、ブラインドで食べればどんなに虫が苦手な人であっても美味しいと感じるだろう。

自分でも驚いたのだが、普通に美味し過ぎてペロッと食べ切ってしまった。長年食べ続けられてきた郷土料理には、相応の美味しさがあるということなんだな。


なお近年はへぼの採取量が減り、日常的には食べられていない。ちょっとしたご馳走となっているのだそうだ。

ということで皆さんもへぼめしを見かけたらラッキーと思い、恐れずにチャレンジしてみて欲しい。この味にハマる人、絶対にいると思うんだけどな。

参考リンク:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)
執筆:高木はるか
Photo:RocketNews24.
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