
どんなものにでも、突き詰めれば本物の元祖なり本家はあるものだ。まあ都内のその手のラーメン屋は、どこもかしこも元祖とか本家を名乗っていて、言ったもん勝ち感があるが……しかし今回のは本物だ。
いまや全国の蕎麦屋で定番のメニューとしてだいたい存在する感のある「にしんそば」。ルーツは諸説あるようだが、とりあえず京都ではガチな元祖とされるお店があるという。こういうのって、知ってしまうと食べておきたくなるよな。
・松葉
ということでやってきたのが、「京都 総本家にしんそば・松葉」の本店だ。四条大橋のそばにある。公式HPによると、文久元年に創業とのこと。西暦だと1861年だ。パネェな。
閉店まで間もない時間に滑り込むと、店内は空いていた。これは好都合。気兼ねなくレビューできるぜ。
おっと、視界の端の方、テーブルの上に何やらチラつくものが。ああ、おススメのメニューとかが書かれてるヤツか。
せやかてここは「総本家にしんそば・松葉」。にしんそば発祥で有名な店だぜ。おススメだってにしんそばに決まって……
冷やしたらそば
……
……
……
……
にしん の「に」の字もねぇぇぇえええええええええ!!! いや待て、落ち着こう。それぞれ表と裏にNo.1のおススメとNo.2のおススメが記されてるパターンかもしれない。これはNo.2で、きっと裏に「にしんそば」が……
たらそば
ヒュー! ホットとコールドのどちらもおススメってか。たらそばガチ勢じゃねぇか! 161年間も蕎麦にされ続けてきたニシンに対し、なんという いけずムーヴ。
長年寄り添いすぎて倦怠期にでも突入したのだろうか。あるいは、ナウな京都民的に「松葉といえば たらそば」な可能性も。やはり筆者も「たらそば」を攻めるべきだったりする感じ?
洛外から来た筆者の情報は、文久クオリティだったのかもしれない。混迷を極める思考。しかし冊子のメニューを開くと、ちゃんとトップに「にしんそば」が。
ここでも「たらそば」がトップだったら、完全に「たらそば」に走っていただろう。お店の「おすすめメニュー」はガン無視することになるが、「にしんそば(鰊しぐれごはん付)」をオーダー。
・元祖にしんそば
お待たせしました。こちらが、京都の「にしんそば」元祖なお店の「にしんそば」です。鰊(にしん)しぐれごはん付きでニシンまみれだ。
あれ? ニシン小さくね? こんなもん? まあ文久だし、こんなもんなのかな?
お?
おおおおおお!?
長いのが入ってた。
食べてみると、関東で食べる蕎麦と比べて、舌ざわりがツルっとしている感。あと柔らかい気がする。地域の特徴なのだろうか? ぶっちゃけ他の京都の蕎麦を食べたわけではないのでわからないが、麺に対する感想はそんな感じ。
そして目玉のニシンだが、箸で持った感じだと硬そうに思えたものの、齧(かじ)ると割とあっさり折れた。噛むとどことなくクシクシしている。なんとも齧りがいのあるニシンだ。真っ黒なので味も濃いのかと思ったが、割と控えめ。蕎麦が進むぜ!
スープも味は薄めで、出汁がよく味わえる。濃い味が好きな人なら物足りなく感じるかもしれないが、しみじみと染みわたる系の素朴な味で個人的にはグッドだ。
セットの しぐれご飯は、山椒がピリッと効いていてウマい。残ったスープを飲みながら、しぐれご飯を食うとイイ感じにキマる。気づいたら飲み干してしまったぜ。
トータルの感想としては、令和の基準的には特に目新しいものではないというのがストレートな意見。実にトラディショナルだが、ウマさは本物だ。なんというか、安定感が極まってる。
他で「にしんそば」が無い状態でこれが出てきたなら、そりゃあ定番化するよなぁと。似たような感覚は、かつて横浜のラーメン博物館で、再現された元祖な醤油ラーメンを食べた時にも覚えたものだ。
派手な飛び道具的メニューは往々にして花火のごとく一瞬で消えていくが、こういう素朴で安定感のある味は、誰かにとっての日常の一部になりやすいと思う。何でもない日にフラッと立ち寄って、なんとなく食べたくなるような、そういう味だった。
・今回ご紹介した飲食店の詳細データ
店名:京都 総本家にしんそば・松葉 本店
住所:京都府京都市東山区四条大橋東入ル川端町192
時間:11:00~19:00 (LO 18:45)
休日:水、木曜日(祝日の場合は営業で季節による変更あり)
※上記の営業時間、休日は2022年1月時点のもの。新型コロナウイルスの感染状況によって変更される可能性が高いので、お店を訪れる前に公式サイトで確認を!
参考リンク:松葉
執筆:江川資具
Photo:RocketNews24.
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▼壁に由来を書いた紙が飾ってあった
江川資具













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