全国各地で大型専門店のオープンが続くなど、空前のカプセルトイブーム。筆者も仕事1割、個人的趣向9割でいろいろな商品を買った。

ただ「精巧なだけ」「リアルなだけ」では心ひかれない。もはやそれは当たり前の基本性能のようなもので、見た人をアッといわせる驚きや、「よくぞこれを」とうならせるアイディア、思わず笑ってしまうユーモアなど、プラスアルファが求められていると思う。ここで紹介するのは、そんな商品だ。


・造形賞「IT PENNYWISE COLLECTION」(全4種 / 300円)

リアルなだけではダメ、なんてうそぶいておきながら恐縮だが、圧倒的な造形力で今年1番のお気に入りがこちら。映画『IT』のペニーワイズのフィギュアである。

どれくらい気に入っているかというと、いつも購入したカプセルトイはチャック付ポリ袋に収納するのだが、1年近くに渡ってトイレの窓辺に飾り続けているほどだ。

そして見る度に新鮮な驚きを感じる。くすんだ色合いの彩色。映画の雰囲気をそのまま伝える存在感。

こういった玩具では、量産化の過程で生じる多少の彩色のズレや省略は当たり前というところがあるが、彼は違う。

どこから見ても、どれだけアップで撮影しても鑑賞に耐える仕上がり。しかもこれ、300円で回しているのである。今年ペニーワイズを超える造形物には出会っていない。


・フェチ賞「影絵の手~動物~」(全5種 / 300円)

美しい手のフィギュアなのだが、組み合わせて壁に投影すると影絵になるというアイディア商品。

石膏像のようなすべすべの触感とシルエットで、手の造形物としてシンプルに美しい。モデルは確実に女性だろう。記事公開後、『ジョジョの奇妙な冒険』の吉良吉影みたい、というコメントもいただいた。手フェチの吉良氏にも自信をもってオススメできる。

そして再現できるのが「影絵」という古風な遊びであることにも、またセンスを感じる。見方によっては「ロマンチック」だとさえいえる。

筆者も再現してみたのだが、フィギュアほど美しい手ではなかったので、なんだかポッチャリした影絵が出来上がった。


・ユーモア賞「にゃんこミュージアム」(全5種 / 300円)

有名絵画を猫で再現してしまった遊び心あふれるフィギュア。

なによりいいと思ったのが、絵画とセットであるところ。もしフィギュアだけの商品だったら、これほどのインパクトは残さなかったと思う。

この額縁入りの絵画が、実にいい味を出している。絵画だけでも集めたいと思うほど。


西洋絵画だけではなく、さりげなく浮世絵を混ぜているところも憎い。絵はもちろん、立体化したフィギュアの方も可愛い。


・シュールで賞「遂に山が動いた」(全6種 / 300円)

「山が動く」という慣用句にかけて、本当に山がプルバックで走るという、盛大なダジャレのおもちゃ。本来は強固に安定した政局など「動くはずのないものが動く」という「たとえ」である。

しかしこの商品は、本当に動く。ピューッと動く。


ただそれだけ。ただそれだけなのだが……嫌いじゃない。むしろ大好物である。

名称からギリシャの山だと勘違いした「オリンポス」が、実は火星の山だったという無知ぶりを披露してしまったのだが、読者の方にありがたく指摘していただいた。


・クールジャパン賞「GPシャドウアート ルパン三世」(全5種 / 300円)

こちらも「影絵」のトイなのだが、LED内蔵で発光する。壁際に置くだけで、スポットライトに照らされたようなシルエットが浮かび上がる。

LEDの照度にムラがあったりシルエット部分がシールだったりと、廉価な玩具らしい部分もあるが、飾ってみると「アート」と呼べるほどのかっこよさだ。大人っぽいハードボイルドな雰囲気。

『ルパン三世』という、もともとのコンテンツにパワーがあるのはもちろんだが、その魅力を大いに活かした商品だといえる。闇夜の逃走中にヘリのスポットライトで照らされているみたいだ。


・カプセルトイ万歳

なお、カプセルトイは「売り切ったら終わり」というパターンが多く、再販もほとんどされない。

同じ商品でも設置場所によってすぐに完売するところや、何カ月も残るところがあるので、今回ご紹介したものも今から購入するのは困難な点をご容赦いただきたい。

筆者の地元には残念ながら「超大型店」はないので、見逃している商品も多数あるはず。店舗面積に合わせて「売れ筋」を選んで導入していくために、カットされる新商品の方が圧倒的に多いからだ。

いつか都心の大型店で1日過ごすのが夢である。2022年も新たな出会いを探求していきたい。


執筆:冨樫さや
Photo:RocketNews24.