
かの燃える闘魂・アントニオ猪木は、「もしも負けたら」と質問をしてきたレポーターに対し、「やる前に負けること考えるバカいるかよ!」と言いながらビンタをカマした。
その闘魂的な精神はライティング(物書き)の世界でも同様で、たとえばグルメ記事なら「食う前にウマいマズいと書くバカいるかよ!(ビンタ)」となるだろう。
それらをふまえ、まず最初に書かせて欲しい。やっと勝てた! 昨日が誕生日だったので42歳と1日、ようやくキックボクシングのアマチュア戦で1勝することができたのだ!!
・話は5ヶ月前にさかのぼる
「ようやく」と書いたのには訳がある。ご存知の方もいると思うが、実は私(GO羽鳥)、5ヶ月前の2021年3月7日、キックボクシングのアマチュアデビューを果たしていた。
過去、たったの1ヶ月で私の体重をマイナス11kgにまで導いてくれた「新宿レフティージム」の能見(のうみ)トレーナーと共に、パーソナルトレーニング13回を含む約1ヶ月の超実戦向きな猛特訓を敢行。
どんな練習をしたのかは、こちらのページにインスタ動画やYouTube動画をまとめてみたので要チェック。
また、同ジムには「超試合プラン」なる試合用のプランもあるので興味のある人は各自お問合せしてもらうとして……(※人数制限あるため)
・ついにデビュー戦! 結果は……
試合の3〜4日前、ようやく対戦相手が発表となった。そう、アマチュア戦で対戦相手が分かるのは、ほぼ試合の直前なのだ。戦う相手は「寒河江卓也(さがえたくや)」選手。ここからは得意の猛サーチでググりにググってググりまくり。
調べによると、身長は167cmのサウスポー。年齢は40前後と思われるので、ほとんど私と同じである。戦歴は不明ながら、いくつか試合の動画を発見した。そして彼の戦術をチェックしまくった結果──
「キッカー(蹴り主体の選手)だな……」
と我々サイドは判断。すぐさま想定されるキックすべてのガードを練習した。これにてvs寒河江選手用の対策は万全である。あとは蹴りに注意して戦うのみ……だったが、いざ実際に戦ってみると──
なんと彼はパンチャー(パンチ主体)だった……!!
詳しくは動画(↑)をご覧になってほしいが、予想とは真逆の戦法で攻めまくる寒河江選手の猛攻に押されに押され、結果は2対0の判定負け。単純に寒河江選手は強かったし、気合いも気迫もスゴかった。気持ちの面でも完敗である。
ちなみに試合後、寒河江選手の方から挨拶に来てくれた。そしていろいろ話をした。なんだか不思議な感情だが、心から「初戦が彼で本当に良かった」と思うほどの紳士であり、その後はDMを送り合うほどの仲になれた。
だが──。
アマチュア選手としての私は、その日から時が止まってしまった。記事を書こう書こうと思っても、どうしても書けない。なぜデビュー戦ともあろう良ネタを記事にできなかったのか? その理由を、いま初めて白状しよう。
・こわかった
どういうことかというと、どうしても心がデビュー戦を「振り返れない」のであった。具体的には、怖くて怖くて自分の試合動画を見ることができなくなったのだ。さらに変なことを書くが、詳しくは以下のような状況だった。
この横アングルの試合動画が、私の脳内では「FPS(一人称視点)」になって再生されるのだ。その時の寒河江選手の表情や、パンチの衝撃、そしてリングの香りに、口から滲み出た血の味までが脳内で完全再現されるのである。
わかりやすく言えば「痛さを感じるVR映像」みたいなもので、その時に私が感じた緊張や恐怖さえも再現される質の高いVR映像そのもの。この時に着用していたヘッドギアの構造と視界からも、目に映る景色は完全にVRだった。
それゆえ試合後、上記のYouTube動画を再生することができなかった。しかしながら動画を見ないと試合の記事は作れない。よって記事が作れない……というわけだったのだ。
ところが。
先にも書いたが つい最近、いきなり動画が見られるようになった。それはまるでスーッっとトラウマが溶けていったかのように。一体なぜ見られるようになったのかというと、脳内に「勝ちのイメージ」が作られたからだと思う。
今から2週間ほど前。ジムのS先輩とガチスパー(本気で戦うスパーリング)をした。私が今のジムに入門した当時からマススパーリング(軽いスパーリング)に付き合ってくれる優しい先輩であり、仲間であり、私は勝手にライバルだとも思っている。
そんな彼との何度目かになるガチスパーが、思いのほか上手に動けて、自分の中では初めて彼に勝てた気がしたのである。人様と本気のドツキ合いをして、生まれて初めて「勝った」と思えたのだ。
それからだ。ほんの少しだけ心に自信と余裕ができたのは。
あれだけ見られなかった3月の試合動画も見られるようになったし、こうして記事も書けるようになった。彼との戦いで私の心がアップデートされたのだ。彼に対しては感謝しかない。
・そして運命の2戦目は……
“今度こそは” の2戦目。いつものように、対戦相手は試合の3日ほど前に発表された。今回の相手は……横溝藤孝(よこみぞふじたか)選手。年齢はおそらく40歳以上で、構えはオーソドックス(右)のパンチ主体。
その後はジムで2日ほど横溝選手対策の練習をし、試合前日はロケットニュースの記事を書いたりしつつ ゆっくり休養。
そして8月8日がやってきた。前日が誕生日だった私は42歳になっていた。しかし41歳の時よりも、今の方が確実に強くなっている……はず。そう信じてリングにあがった。今回ばかりは絶対に勝つ!! 勝たなきゃいけない理由もある!
結果は──
勝った。私は勝った。試合の詳細は動画を見てもらうとして、対戦相手の横溝選手のパンチがメチャクチャ効いたのもさておいて、とにかく私はキックボクシングのアマチュア戦で勝利を初めて手に入れたのだ!
もちろん私がこうして勝てたのは、ここまで私を鍛え上げてくれた能見トレーナーや元気トレーナー、プロ選手のトレーナー方、さまざまな練習に付き合ってくれたジムの先輩方に練習仲間。
そして、いろいろ励ましてくれた前回の対戦相手の寒河江選手。最後に、意気消沈していた私に自信をもたらしてくれたS先輩のおかげにおいて他にない。本当にありがとうございました!
しかし、私が勝てた一番の理由は、試合前、負けることを一切考えなかったことなのかもしれない。それこそアントニオ猪木の「やる前に負けること考えるバカいるかよ!」を体現するように。
──ちなみにこの記事の9割がたは……
私の誕生日である試合前日(8月7日)に書いている。勝つ前提で書いている。それはまるで予言書のように。ここに書いてある内容と未来が変わったら困るのだ。絶対に書き直したくない。だから絶対に勝たねばならないのである。
「やる前に勝つ原稿書くバカいるかよ!」。きっとアントニオ猪木は そう言うに違いない。彼の名言のうちのひとつ「バカになれ!」を被せてくるかも。
アントニオ猪木といえばもうひとつ、私が常に意識している猪木語録がある。
「人は歩みを止めたときに、そして挑戦をあきらめたときに年老いていくのだと思います」。
常に心に闘魂あり。私はまだまだ止まらないし、私はまだまだあきらめない。挑戦し続ける人生でありたいし、42歳なんてまだ若造。老いにも勝たなきゃならないし、キックの試合も絶対勝つ。闘魂燃やして次も勝つぞ。ダーーーッ!!
<完>
参考リンク:新宿レフティージム「超試合プラン」
執筆:GO羽鳥
Photo:RocketNews24
▼あらためて試合動画はこちら(頭出し済み)
▼勝ちました! ありがとうございました!
▼こちらはデビュー戦の試合後。私の隣が寒河江選手。
GO羽鳥














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