・前回までのあらすじ
1円玉で一獲千金を狙うネコチャンYoshioは、甥っ子二人にこづかいを渡して10万枚もの硬貨を仕分けさせたのだ!
・鑑定スタート
発行年代別に分けた1円玉を寺田さんの前にズラッと並べるYoshio。当初の10万枚からだいぶ絞られてはいるものの、それでも膨大な量だ。これらをすべて鑑定するとなると、何時間くらいかかるのだろう? と、その前に──。
まずはこれだけ1円があるにもかかわらず、平成23、24、25、28、29年製造の硬貨が1枚も出てこなかった理由について尋ねてみたい。いくら希少だからって、0はないでしょうよ。
寺田さん「これはね、理由は簡単なんです。そもそも市場に流通してないんですよ」
ええええええええ!? いやいやいや、「年銘別貨幣製造枚数」を読む限り、製造自体はされているようですよ? そこで作られた1円玉はどうなったんです?
寺田さん「製造されたのに、市場には流通していない。それはなぜかと言うと、これらの年の1円玉は、造幣局が販売するミントセットでしか出回らなかったからです」
ミントセットとは、ケースに収納され販売される貨幣セットのことである。なるほど、だから市場には流通していないのか。収集用に買った硬貨をわざわざ使うワケないもんな。
さあ、疑問が解決したところで……いよいよ今日の本題だ。この1円玉の山の中に、高値がつくプレミア硬貨は存在するのか?
甥っ子たちを筆頭に……
家族親戚が約1カ月半かけて仕分けた苦労の結晶……
奇跡よ、起きるなら今しかない!
気になる鑑定結果は!?
寺田さん「ありません」
寺田さん「見るまでもないです」
終了である。
・解散
う、嘘だろ……? 一枚ずつ鑑定するどころか、手に取ることすらしない寺田さん。おいアンタ! いい加減なこと言ってんじゃ……
寺田さん「こういった硬貨は、未使用であることが基本です。先ほど説明した平成23~25年の1円玉でしたら使ってあっても買い取りますが、残念ながらここにある硬貨は無価値ですね」
……ショックのあまり言葉を失うYoshio。寺田さんによると、硬貨は磨いたりこすったりしたら意味がないという。一見キレイに見えても、ルーペでのぞいたら小さな傷や汚れがついているそうだ。自販機などで使ったコインは一発アウトである。
ただ例外もあって、寺田さん曰く例えば昭和33年あたりの1円玉なら、希少なので多少汚れていても買い取るらしい。未使用の場合、2~3万円の値が付いてもおかしくないそうだぞ。すごい世界だ……。
あ!
そういえばYoshioさん、あのエラーコインはどうしたんですか? せっかくだから一緒に見てもらいましょうよ。別の箱に分けておいた硬貨をテーブルに広げると、ここで寺田さんが予想外の反応を見せた。
寺田さん「これは……何だろうな?」
・ネコチャンあるか?
マジかよ! まさかの初遭遇キターーーーー!! ほらここ、「1」を囲む円が二重になっているように見えませんか?
寺田さん「気にしたことなかったな……。何かの機械に入ると丸い線がつくのかも……? うーん、誰に聞けばいいのかな……」
なんと、歴戦のプロでも回答不能な事態に。これは1枚3000円超えもあり得るのか? Yoshio、一獲千金の大チャンス! 寺田さん、どうです!? このエラーコインに価値はありますか!?
寺田さん「無価値です」
終了である。
・短い夢だった
というより、そもそもエラーコインですらないようだ。まあ、そりゃそうだよな……。こんなに大量にあるワケないもんな、冷静に考えたら。
とは言え、さすがのYoshioもこの結果にはショックを受けたらしく、珍しく無言でショーケースの前にしゃがみ込んだまま動こうとしなかった。1カ月半もかけたのだ。無理もない。
しばらく外で待っていると、Yoshioが……
Yoshioが……
え?
いや、それって……え?
Yoshio「見て見て! 平成23~25年の1円玉があったから買っちゃった!! 1枚3000円だぞ! すげぇだろ!! 甥っ子に見せてビビらせたろ!」
・エピローグ
1円玉10万枚の中からプレミア硬貨を探し出し、一獲千金を夢見たネコチャンYoshio。家族親戚を巻き込み、甥っ子たちにバイト代を支払い、約1カ月半もの時間をかけた結果、どういうワケか男は……
逆に9000円を失うのだった。
~めでたしめでたし~
取材協力:新橋スタンプ商会
参考リンク:造幣局「年銘別貨幣製造枚数」(PDF)
執筆:あひるねこ
Photo:RocketNews24.
▼残念ながら今回は値が付かなかったが、中には平成22年の1円玉に1000円を付けているサイトもあった(傷がなく新品並みだった場合)。
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