
ご存じ、大人気アニメ『鬼滅の刃』の第2期・遊郭編が制作されている。多くのファンを喜ばせている一方、「子どもに見せられない」と、ちょっとした論争も巻き起こった。
是非はともかくとして、かつて日本に遊郭という公娼制度があったのは事実。豪華絢爛な内装や、遊女が格子から姿を見せる張見世(はりみせ)、回廊のような渡り廊下など、独特の建築様式が発展した。
しかし老朽化や、イメージの問題から現存する建物は少なく、全国的に消えゆく運命に。文化消滅のピンチに、大阪・飛田新地の有名物件がクラウドファンディングに乗り出した。
・「鯛よし百番」
「飛田百番」こと「鯛よし百番」は、大正時代の遊郭建築でありながら、現役の料亭。そもそも飛田新地は、かつて飛田遊廓(遊郭)と呼ばれたエリアで、第2次大戦前の最盛期には200軒を越える妓楼(ぎろう)が存在したという。
プロジェクトでは、クラウドファンディングに先がけてVR映像を作成。ブラウザだけで1階部分の360度映像が見られるのだが、この映像がすごい!
建物は木造2階建てで、国の登録有形文化財にも指定。屋内なのにどっかで見たような門があったり、橋がかけられていたり、テーマパークのような内装にびっくり。「派手すぎでしょ!」と思ったが、これは大正時代のものではない。
なんでも戦後、売春防止法施行で遊郭の廃業を見越した当時のオーナーが大改築。安土桃山時代をテーマにしており、いまでは「桃山美術館」の別名も。法の完全施行は1958年だというから、歴史の証人である。
2階には5畳半ほどの茶室風の部屋が13室並び、部屋ごとに違う装飾がなされているという。いわばメインステージ、接客のための部屋だったのだろう。
内装は変遷があるが「建物そのものは大正から昭和初期における大阪の都市文化を、さらには近代遊郭の文化的景観を今日に伝える貴重な存在」だそう。
写真や映像だけでも、廊下の先などちょっとした空間に、100年前にタイムスリップしたような、どこか隠秘的で妖艶な空気が感じられる。
『鬼滅の刃』の時代設定であり、飛田遊郭が開業した大正時代は、明治維新で流れ込んできた西洋文化が庶民生活と融合した時期。
飛田遊廓でも、見た目は木造の和風建築でありながら、ビリヤード場やダンスホールがあったり、西洋風のカフェー建築だったりと、和洋折衷の文化が生まれたという。
そんな「鯛よし百番」だが、築100年を超えて老朽化が進んでいる。柱や梁が歪み、襖絵(ふすまえ)や壁画も傷みが目立つように。大規模修繕の必要性は明らかなのだが、コロナ禍で料亭の売り上げも減少。費用を捻出できない状況だという。
そこでクラウドファンディングを立ち上げたというわけ。
・プロジェクトは8月10日まで
出資は3000円から。リターンは食事券、写真集、撮影会への招待など複数パターン。目標金額は1500万円と高額で、All-or-Nothing方式(目標金額を達成した場合のみ成立)という厳しい条件だ。
筆者も微力ながら出資したが、7月5日現在で達成率10%超と、ゴールまではまだまだ。150万円以上が集まっているので、普通なら大成功だが、なにしろ規模が大きいので成立するかハラハラドキドキだ。期間は8月10日まで。
・そもそも残すべき?
遊郭、花魁、遊女など、「売春」という言葉を使わずオブラートに包むと、どこか幻想的でロマンチックなイメージもあるが、実際のところはセックスワークであり、少なからぬ女性が労苦のすえに早逝した「負の歴史」の側面がある。
近年では「泊まれる遊郭建築」が特集されたり、写真集が刊行されるなど注目を集めることも多いが、所有者がメディアの取材を嫌うケースもあると聞く。
たまに訪れる観光客だからこそ「わあ、すごい」となるのであって、その地に住む人としては、いつまでも「あの家はね……」と特別視されることを避けたいのも十分理解できる。決して無理強いはできない。
しかし一方で、歴史を「なかったこと」にはできない。現役で人が使う建物は、貴重な生きた資料。適切に管理された建物を通じて、過去を伝えていくのは価値あることだと思うのだ。
もし子どもへの説明に困ったら、街中で見かけたラブホテルを「あれなに?」と聞かれたり、「赤ちゃんはどこから来たの?」と聞かれたときと同じ対応をすればいいと思う。年齢と理解度に応じて、誠実に説明するだけだ。
さらに遊郭に関していえば「現代では許されていないこと」「フィクションで描かれるような、ロマンチックなものではないこと」を加えてあげるのも大事だろう。
古い建築に興味のある人、遊郭について知りたい人、近代日本史が好きな人、もちろん『鬼滅の刃』ファンも、ぜひ1度プロジェクトページをご覧いただきたい。
参考リンク:クラウドファンディングページ、鯛よし百番(飛田百番)VRプロジェクト
執筆:冨樫さや
Photo:PR TIMES、RocketNews24.
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冨樫さや









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