どこにでも表示される仮想キーボード、メガネのようなウェアラブルコンピュータ、人間の手足になって動くドローン……スパイ映画の世界がどんどん現実になって、ちょっと怖い今日この頃だが、子どもの勉強にまでARの登場である。

なにかというと「ほぼ日のアースボール」だ。一見ごく普通の地球儀だが、その秘密を見て欲しい。


・「ほぼ日のアースボール」税込3960円

直径15cm。コツコツと硬いプラスチックの感触で、小ぶりのボールといった風体。パッと見、なんの変哲もない地球儀である。

印刷されているのは衛星写真で、国境や国名などの表示は一切ない。このままでは、なんの情報も得られない。飾りか。


……と思いきや、スマホやタブレットの専用アプリがあって


アースボールに端末のカメラをかざすと……


えええぇぇぇ、にょきにょきとピンが生えた!


背景に写っているのは現実世界の自分の机。AR(拡張現実)なのである。


試しに画面上でアイコンをタップすると


関連する豆知識が表示される!


同じく国旗モードにしてから、画面をタップすると


国情報を表示!


「夜の地球」モードなんてのもあるぞ。広大な暗闇が広がるユーラシア大陸で、1点だけ明るいココはなんだろうと疑問に思ったら、国名表示ありに切り替え。

モスクワだった! とわかる。


国名・国境の表示の有無は、いつでもワンタッチで切り替え可能。国境って本当に人為的だなぁと実感する。


太陽系の惑星モードにすると、アースボールが惑星に変身する。背景に写っているのは見慣れた自分の机、そこに水星が浮かんでるって、これどんな風景だ。

ほかにもモードが多数。見慣れた色分けのクラシック地球儀にしたり、地形を立体的に見るモードにしたり。

「地球アルバム」というモードではスマホやタブレットに保存した写真をアースボール上に配置できる。たとえば過去に旅行した思い出の写真から、オリジナルの地球儀を作れるぞ。

今のところ文字入力の機能はないようだけれど、文章をスクリーンショットなどで画像化してしまえば、絵日記風にもできると思う。

「ARあるある」だと思うが、手ぶれで画像がずれてしまうことが多いので、スマホスタンドなどでデバイスを固定するのがおすすめ。

その上でアースボール付属のスタンドを使うと、地球儀だけをくるくる回すことができる。こうすると手ぶれなく、じっくり鑑賞できる。

というのも裏側など別の角度を見たいとき、ついつい画面の中の地球儀を指で回したくなるが、それでは動かない。本物の地球儀の方を回さないといけないのだ!

「え、これは現実? AR? どっちのこと?」と脳が混乱する。現代っ子はテレビの画面をタップしようとするらしいが、さもありなん。


・地理好きなら時間が溶ける

じいちゃん、ばあちゃんが入学祝いに買ってくれるものといったら、ランドセルや学習机や地球儀が定番だと思うけれど、これからはAR地球儀だな。

ご想像のとおり、製作は糸井重里氏が代表を務める「株式会社ほぼ日」だ。ただ飾っておく地球儀ではなく、おもちゃとして床に転がしておけるような、身近な存在を理想としたのだそう。

ちょっと残念なのが、表示されるコンテンツは子ども向けが多いこと。ふりがなつきで小学校低学年の学習にはとてもいいけれど、一瞬で読み終わるくらいのボリュームだ。大人の知的好奇心を満たすほどの情報量はない。

たとえば大人向けの図鑑や百科事典を搭載して、このアプリだけで知識を深掘りしていけたら、無限に時間が溶けると思う。


かつてあったNHKの映像セレクションというコンテンツが終了してしまったのも惜しまれる。各地の映像が見られたらしい。映像コンテンツとの紐づけも、発展性のある活用法だな。

あるいは、せっかくスマホを使うのだから、市町村レベルまでズームできたりするといい。地球儀と地図がシームレスにつながったりしたら……従来の地球儀には絶対に実現できない便利さだ。


権利関係はいろいろあるだろうが、ソフトウェアの世界ならいくらでも拡張できる。「1度作ったら終わり」ではないデジタル地球儀の最大の利点だ。今後の機能拡張にも期待大!


参考リンク:ほぼ日のアースボール
執筆:冨樫さや
Photo:RocketNews24.
ScreenShot:ほぼ日のアースボール(iOS)