2021年5月27日、ディズニー最新作『クルエラ』が劇場公開された。クルエラとは「101匹わんちゃん」に登場する女性ヴィラン(悪役)のことで、聞くところによると一部の映画関係者からは「女性版ジョーカー」と高い評価を受けているらしい。
2019年に公開された映画「ジョーカー」はその年の話題を総ざらいにした傑作として知られるが、果たして『クルエラ』はジョーカーの域に達しているのだろうか? マスコミ試写会で一足早く鑑賞してきたところ、率直にモヤモヤっとした。このモヤモヤの正体は……何なんだ?
・メチャメチャおもしろかった
ディズニーを愛し、ディズニーに愛された “ディズニーマニア” によると「アニメが実写化した映画にハズレなし」という格言があるらしい。その言葉通り「アラジン」も「ダンボ」も「美女と野獣」も、実に素晴らしい作品であった。
で、ここで結論を申し上げてしまうが『クルエラ』もかなり面白い作品であることは間違いない。冒頭で「モヤモヤ」と申し上げはしたものの、純粋に「もう1度お金を払って見に行ってもイイ」と思える満足度の高いタイトルであった。
・大まかなストーリー
さて、ネタバレになってしまうので多くは語れないが、ざっくり『クルエラ』は以下のようなストーリーである。ディズニーの商品紹介から抜粋しよう。
「70年代のロンドン。親を亡くした少女エステラは、反骨精神と独創的な才能を活かし、ファッション・デザイナーになることを決意。ロンドンで最も有名な百貨店リバティに潜り込む。
そんなある日、伝説的なカリスマ・デザイナーのバロネスとの出会いによって、エステラはファッショナブルで破壊的かつ復讐心に満ちた “クルエラ” の姿へ染まっていく──。なぜ少女は悪名高きヴィランに変貌したのか?」
要するに、少女「エステラ」が『クルエラ』に変貌を遂げるまでが描かれており、そういう意味では「ジョーカー」と似たようなストーリーである。しかも脚本がマジで秀逸! こちらの予想を裏切るどんでん返しが幾重にも張り巡らされていた。
・脚本も演者も衣装も完璧
さらに言うと、クルエラを演じる「エマ・ストーン」と、バロネスを演じる「エマ・トンプソン」の “2人のエマ” は、スタンディングオベーションものの怪演である。女性の激しさをここまで見事に表現できる役者が世界に何人いるのだろう? 基準はわからないが、今すぐ2人にアカデミー賞を授与したいくらいであった。
さらにさらに「ロンドン」や「デザイナー」がテーマになっているだけあって、衣装もめちゃめちゃカッコイイ! さすが「マッドマックス 怒りのデス・ロード」のデザイナー「ジェニー・ビーヴァン」が本作の衣装を手掛けているだけあり、視覚的な満足度も100点満点に近いのではないのだろうか?
それなのに──。
・モヤモヤの正体は……?
クルエラを鑑賞し終えた私、P.K.サンジュンは、わずかにモヤモヤした。脚本も最高ならば演者も最高、衣装を含めた視覚的な満足度も最高なのに、なんだこのモヤモヤは……? そこで一緒に『クルエラ』を鑑賞していたディズニーマニアの田代に、思いの丈を打ち明けてみることにした。
──いやー、田代さん。想像より遥かに良かったですね。特にエマ・トンプソン! ちょっと痺れましたよ。
「本当に素晴らしかったですね。ヴィランをテーマにした作品は “マレフィセント” がありますが、今作の方が遥かにダーク……まさに “大人のディズニー” という感じがしました」
──わかります。ただね……。
「どうかしましたか?」
──いや、実はちょっとスッキリしないというか、モヤモヤしてるんですよね。メチャメチャ最高な作品ではあるんですけど。
「ふむふむ、どういうことでしょう?」
──はい、こんなことを言っていいのかわからないんですけど、結局クルエラを悪人にし切れていなかった感じがして……そこが振り切ってたジョーカーとは違うかなぁ。ディズニーの優しさと同時にディズニーの限界を感じた気がします。
「モヤモヤはわかります。実際に自分もモヤモヤしました」
──え! 田代さんもモヤモヤしたんですか?
「はい、でもこれは “いいモヤモヤ” ですね」
──いいモヤモヤ……だと?
「はい、本作のキャッチコピーの1つは “白黒つけるのは、私” ですが、白黒つけなかったところに1番感銘を受けました。作品を鑑賞するたびに新しい視点や気づきを与えてくれるような “グレー” なニュアンスが本当に素晴らしかった。言うなれば、見る人たちの考える力や想像する力を育てる奥深さがこの作品にはあると思います」
──うーーーーん……
「モヤモヤが残るからこそ、この作品について何度も考え、クルエラの気持ちを理解しようとする。そう、このモヤモヤはディズニーからのプレゼントなんです」
──モヤモヤが……ディズニーからのプレゼント……?
「サンジュンさんの言いたいことはわかります。白黒ハッキリしていた方がスッキリするかもしれません。ただ、白でもなく黒でもない何とも分からない色のほうが、人の心を動かすときだってあるんですヨ☆」
──いや、それはわかるんですが、うーむ。確かにメチャメチャおもしろかったし、もう1回観たい作品ではあるんですけどね。
「ほら、サンジュンさんもディズニーの魔法にかかってますよ☆ なぜもう1度観たいと思うのか? それはディズニーからのプレゼント、モヤモヤの正体を知りたいからではありませんか?」
──うーん、そうなのかなぁ?
「サンジュンさん、それはディズニーからのプレゼントです」
──いや、それはどうかと思うけど……。
「サンジュンさん、それはディズニーからのプレゼントですよ☆」
──グヌヌ、でもそれは……。
「サンジュンさん、それはディズニーからのプレゼントなんですよ☆」
──納得いかねぇぇぇぇええええ!
・ディズニーからのプレゼントらしい
……と、どうやらディズニーマニアによるとモヤモヤの正体は「ディズニーからのプレゼント」であるらしい。仮に田代の言う通りだとしたらディズニーよ……とんでもないもんをプレゼントしてくれたな! でも作品自体はかなり良かったよ!!
とにもかくにも、『クルエラ』自体は自信を持ってオススメできる作品だから、興味がある人はぜひ1度ご鑑賞いただきたい。映画『クルエラ』は5月27日に劇場公開、翌28日からはディズニープラスの「プレミアムアクセス(別途料金あり)」で公開される。
そして私と同じように「モヤモヤ」を感じた人は思い出して欲しい。「これはいいモヤモヤ」なのだと──。「ディズニーからのプレゼント」なのだと──。チクショォォォオオオオオ!!!!
参考リンク:映画『クルエラ』公式サイト
執筆:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24. © 2021 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.
▼予告編はこちら。
https://youtu.be/wSH7sazgCjc