インドで食べたカレー、韓国で食べたキムチ、アメリカで食べたハンバーガー……どれも確かにおいしかったのだが、正直ぶっちゃけると、まぁ言うても “想像の範囲内” ではあったように思う。今は日本でもそれなりに本格的な外国料理が食べられるからなぁ。
が、しかし! そんな中にあって “フランスで食べたフランスパン” だけは、フランスパンの概念を軽く超越するレベルの悪魔的ウマさだった。なぜあれほどフランスのフランスパンはおいしかったのか? そして、日本では再現できないものなのだろうか?
・ああ追憶のパリ
フランスにはパン屋が多い。フランスパンも様々な種類があるが、最もスタンダードなバゲット(細長いタイプのもの)はパリ中心部でも1ユーロ(約130円)弱くらいで買える。日本のパン屋でバゲットを購入した場合、長〜い包装紙でスッポリ包んでくれるのが普通だが……
フランスではむき出しのバゲットをそのまま渡されることが多いぞ。
フランスの人はバゲットをよく食べる。歩きながら食べている人もいて、日本でいう「おにぎり」感覚なのかもしれない。私も次第に慣れてゆき、パリ滞在中は毎日セーヌ川を眺めながらバゲットを丸かじりしたものだよ……ウフ。我ながらオシャレ。
とにかくフランスのフランスパンには毎日食べても全く飽きないだけのパワーがある。一体あのウマさをどう表現すればいいのだろう? 日本で食べるバゲットもそれなりにおいしいが、本場とは月とスッポン。ハッキリ言ってラーメンとカップラーメンくらいの差がある。
あぁ追憶のParis……できればフランスパンを食べるためだけに今すぐ行きたい。しかし現在フランスはロックダウンの真っ最中。悲しいが、安心して行ける日は少し遠そうな気配だ。
・仮説を立ててみた
そこで「なぜフランスのフランスパンはおいしいか」を個人的に色々と考えてみた結果、ひとつの仮説に行き着いた。それは「フランスのパンは全て焼きたてだったのではないか」という可能性だ。
フランスパンは日本のパン屋でも大抵は売られているが、フランスのように “飛ぶように売れている状態” とは言えない。我々が普段食べているフランスパンは、ひょっとするとかなり時間がたった状態なのではないか?
と、いうことで私は「何時にフランスパンが焼き上がるのか」をお店に確認。焼き立てホカホカ状態の商品を入手した。店名について言及は控えるが、デパ地下で売っている高級品である。それなりのレベルとみていいだろう。
焼きたてバゲットはパリパリフカフカとしておいしそう! これをフランス風に街中で食べちゃおう、というのが今回の計画なのである!
じゃ、いただきま〜す!
………………
ん?
もう一口…………
………………ん!?
・あまりにも微妙
もちろん私はフランスで食べたフランスパンの味を完全に覚えているわけではない。だがしかし、我が人生でこれほど「これじゃない」という表現がしっくりくる場面もあまりないように思う。本場と比較するのも申し訳ないくらい「全然違う」のだ。
ここで私は自分が重大なミスを犯したことに気がついた。先ほども述べたとおり私はパリ滞在中、毎日セーヌ川を眺めながらフランスパンをかじっていたのである。対して、ここは新宿のド真ん中。川が…………川がないじゃないかーーーっ!!!
私はすぐさま新しいフランスパンを購入し……
タクシーへ飛び乗った。
私「急いで川へ向かってください!」
・ダメでした
「おいしい食事には環境も大切」と考えた私は、パリと同様に川沿いでフランスパンをかじってみた。が…………残念ながら、新宿駅前で食べたのと大して違いは感じられないようだ。なぜだろう?
ひょっとして、ここがセーヌ川じゃなくて神田川だからかな? マジメな話をするとフランスと日本では湿度や水の硬度など、パンを作る上での環境が大きく異なるらしい。本場と同じ味を再現するのは、そう簡単ではないのである。
それでも……私は諦めない。 “日本で最もフランスパンを食べるのに適した環境” を見つけ出すその日まで。あっ、エッフェル塔の代わりに東京タワーを見ながら食べるってのはどうだろう? 今後さらなる調査を続けてゆく所存だ。
執筆:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.
▼パリ郊外のパン屋。バゲットは飛ぶように売れるため常に焼きたて状態
▼フランス滞在中はポーチにバターを忍ばせていました
▼ちなみにフランスはクロワッサンも超おいしい。こちらも簡単な包装で手渡してくれるぞ