近年、ベーカリー市場は「高級食パンブーム」が続いている。たとえば、「銀座に志かわ」や「食パン専門店 一本堂」など、正統派なお店だけでなく、「うん間違いないっ!」「乃木坂な妻たち」などの気をてらった店名のお店も増え続けている。

そんな高級食パン専門店の奇抜店名の、いわば “最終形態” のようなお店を発見してしまった! そこはカタカナ3文字の名前だ。まさかこの言葉を店舗につけてしまうとは、心の汚れた男の私(佐藤)は妙なことを思い出してしまった……

・この名前は!?

その店は、JR北千住駅東口を出て徒歩約3分のところにある。商店街の一角にあり、とても目立つ大きな看板を掲げていた。私はその名前を目にした瞬間に思わず二度見してしまったのだよ


え? 「ボイン」! ボインだと!?


そう来たか……。高級食パンのお店の名前も行き着くところまで行った感がある。だってこの先には■■■とか×××とかしか残ってないじゃないか。私が薄汚れた人間だから、その程度の低俗な名前しか浮かばないのかもしれないけど、ここまで来たら他にないゼ? インパクトのある名前は。


・ボインの思い出

ボインか、その言葉を聞くのはいつぶりだろうか。私の中にもっとも色濃く残っているボインの思い出はアレしかないな。少し長くなるが聞いて欲しい。


『…………アレは、私が20代前半の頃だったと思う。当時のテレビ界は、「ダウンタウン」と「ウッチャンナンチャン」の全盛期で、両コンビは爆発的な人気を誇っていた。

とくにダウンタウンの人気は絶大で、いくつもレギュラー番組を持っていたっけな。時を経て、いまだに冠番組を持っていることを思うと、まさにお笑い界のトップスター。カリスマ中のカリスマだ。当時の私は日曜20時から放送する『ダウンタウンのごっつええ感じ』が大好きだったんだ。

あの番組からいくつもの名作コントが生まれたなあ。「ラブラブファイヤー」「兄貴」「おかんとマー君」「キャシィ塚本」などなど挙げればキリがない。伝説のバラエティ番組といっても決して言い過ぎではないはずだ。それらの中でもっとも好きだったのが、「世紀末戦隊ゴレンジャイ」だ。

これは、松本人志・今田耕司・東野幸治・板尾創路・蔵野孝洋(ホンコンさん)のヒーロー戦隊「ゴレンジャイ」として登場するコントだ。あまりにも冴えないために敵役(ドクロさん)の浜田雅功にいつもダメ出しをされ、反省して翌週出直すというものだった。

毎回ダメ出しをされ続けるうちにゴレンジャイはなぜか「ボインファイブ」という違うヒーローになってしまった。「あ、そーれ。そーれ、そーれ、そーれ、ボイン! ボイン! ボイン! ボイン!」という掛け声と共に、5人が手拍子しながら足踏みする姿は傑作だったなあ。

あのボインが頭を離れない。あ、そーれ、そーれ、そーれ、そーれってね(苦笑) ……』


ハッ! 店前で突っ立って、ボインの記憶に浸っていた。5人が手拍子しながら愉快に跳ねまわる姿が脳裏をよぎって、不審者のように口を開けて看板を眺めてしまっていたよ。いかんいかん……。

・名前に負けない味

本題に戻ろう。商品は「こころ弾む朝」(税込864円)と「午後のお愉しみ」(税込1058円)の2種類。どちらも2斤食パンで、こころ弾む朝の方がプレーン食パン。午後のお愉しみはレーズン食パンだ。


ためしにプレーンを購入して帰った。紙袋には可愛らしいマスコットが描かれている。この子は「ボインちゃん」っていうのかな? わかんないけど。


パンは焼き立てでほんのりと温かい。そのままビニール袋に入れると水蒸気で濡れてしまうので、余熱を逃がすために紙に包まれている。別途ビニール袋をもらえるから、自宅で保存する場合はビニール袋に入れ替える。


カットしてみると、きめ細かなパン生地が姿をあらわした。独自製法の小麦粉と国産バター、それにジャージー牛乳と生クリームが使われているからか、かすかに甘い香りがしている。


ちぎるとモッチリとしていて、生地に粘りを感じる。「ボインとはずむ食感」は決して大げさな表現ではないようだ。


食べると甘い! 凄く甘い!! 今まで食べた食パンのなかで1、2を争うような甘さだ。それでいてコクがあるのは、沖縄の黒糖が使われているからだろうか。ちなみにこの食パン、購入当日から翌日まではそのまま食べるのがオススメとのこと。


店名を呼ぶのはちょっと照れ臭いけど、その名に負けない味のある食パンであることがわかった。はたして今後、高級食パン専門店の名前はどうなっていくのだろうか? インパクトのある名前もいいけど、できれば利用する時に恥ずかしくないようなネーミングをお願いしたい……。


・今回訪問した店舗の情報

店名 ボイン
住所 東京都足立区千住旭町13-8 アドリーム北千住101号
時間 10:00~18:00(売り切れ次第営業終了)

参考リンク:Japan Bakery Marketing
執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24