先日「タフブローン」というDIY補修材を知った。紙テープのような見た目なのに、温めることで軟らかくなり、好きな形にできる新素材だそう。

1枚で450kg、重ねることでなんと1トンもの力に耐えるという。公式サイトでは深夜の通販番組ばりに、切れた鎖の代用として車を牽引したり、重機でコンクリートを持ち上げたりしている!

これはまさか……決して切れない鎖「束縛する中指の鎖(チェーンジェイル)」じゃないか! 実在したのか……!!


・「タフブローン」(税込4998円)

いうまでもなく『HUNTER×HUNTER』のクラピカの話である。制約も誓約もいらず頑丈な鎖が手に入るんだったら筆者も欲しい。

商品はキャンディ缶のような外観。クマのイラストでちょっと可愛い。

中には白いテープが入っていて、幅24mmで約6mだそう。長さも太さも変幻自在のチェーンジェイルだが、十分だと思う。

使い方は簡単。お湯、ドライヤー、ライターなどで60℃以上に温める。そうすると素材が軟らかく透明になるので、そのあいだに成形したり密着させたりする。

10秒ほどで徐々に固まってきて白色に戻る。もし失敗した場合は、再び温めれば軟らかくなる。

固める前の状態であれば、ハサミで簡単にカットできる。本来ならここで、折れたバケツの取っ手に巻きつけたり、メガネのツルを補修したりするわけだが、いまからチェーンを作るぞ。5000円近い高価な素材を無駄使いしている事実には目をつぶる。

テープには向きがあり、縦方向には容易に裂ける。半分の細さでくるんと丸めて輪っか状にし、どんどんつなげていく。

……のだが、とにかく温度管理がキモである。ほんの10秒ほどで硬化が始まるためスピード勝負。お湯はどんどん冷めていくので、常に60℃をキープしておくことも難しい!

たとえば素材をまとめてお湯に入れておくことも考えたが、ビンの中で溶けて一体化してしまってダメだった。

最終的にポットカバーのようにビンを保温しつつ、輪っかをいくつか作るごとに湯を取り替える作戦に落ち着いた。めんどくさ……

湯が熱すぎるとドロドロに溶けてしまうし、ぬるいと接着しない。時間を要する細かい作業はかなり困難!

後半にはだんだん熟達してきて、最初よりも格段に早くきれいな楕円が作れるようになってきたが、このスキルが人生でなんの役に立つのかはわからない。

最後に指輪部分を作るぞ。自分の指に巻けば、オーダーメイドでぴったりのものができる。使用例では簡易ギプスやプロテクターにしている画像もあった。まぁ、普通は実用的なものに使うのが正解だろう。

なお、テープは着色可能。たとえばバケツの補修に使ったのなら、バケツに近い色を塗ると目立たなくなる。ここではアクリル塗料でシルバーに塗装する。

完成だ! それらしくできた。しかし筆者はコスプレのための装飾品を作ったのではない。決して切れない鎖を作ったのである。


・荷重実験

ここからが本番である。さっそくウボォーギンを……捕まえるわけにはいかないので、ペットボトルで耐荷重を検証してみよう。チェーンは大丈夫でも、筆者の指が折れてしまうので両手でもつぞ。

まずは2Lのペットボトル1本。これは余裕だろう。なにせテープ1枚で450kgの耐荷重をうたっているのだ。

2Lのペットボトル3本で約6kg。これも大丈夫だった。一点集中で荷重がかかっていることを考えると結構すごいかもしれない。

一気に500mlのクリスタルガイザー24本にレベルアップだ。単純計算で12kg! ひきこもりの筆者には、移動させるのもちょっと苦労する重さである。

慎重に鎖を通して、両手でゆっくりと引っ張る。1つ1つの輪の幅は2~3mm。細い鎖はいまにも切れそうで怖い!


浮いた! 筆者の体力不足ゆえに、フラフラとよろめいているものの、24本のペットボトルはしっかりと浮いている!!

それもそのはず、公式サイトではマッチョな男性3人が顔を赤くして引っ張ってもビクともしないのだ。


しかし! 喜んだのも束の間!! 確認のため、同じことをもう1度やってみたら……


落下ー!!


輪っかの継ぎ目が切れてしまっていた! 接着が弱かったか!!


テープは重ねることで強くなる。また、完全に透明になるまで温めて接着するのが肝要である。現にしっかり接着できているところは、左右から両手で思いっきり引っ張っても変化はない。

しかしお湯の温度を保てず、ぬるい温度で中途半端に接着した部分があったのは前述のとおり。テープを半分の幅に切って使っていることもおそらく関係している。テープをねじって、しっかり密着させたり、何重かに巻きつけたりすると強度が高まると思う。

なお、ねじって作った先端部分はビニールのような軟らかい質感で、重いものを引っかけることはできなかった。弾力があるので割れたり欠けたりする心配がない代わりに「硬度はあまりない」と言える。


・普通は修理に使います

いまさらだが、本来「タフブローン」は日用品を直す補修素材である。道具に巻いて自分だけのグリップを作ったり、メガネのツルをつなげたり、型取りしてネジ穴を再現したりする。防水性があり、編み上げることで1枚の布のようにもできるらしいぞ。

アウトドアでもライターひとつで成形できるため、いざというときの備えにもオススメだそうだ。アイディア次第でかなり応用できると思われるので、一家にひとつあってもいいかもしれない。いないとは思うが、もし鎖を編みたければ、湯温と接着不足にはくれぐれもご注意を。


参考リンク:バランスボディ研究所「タフブローン
執筆:冨樫さや
Photo:RocketNews24.