今からおよそ30年前、スーパーファミコンの世界に超名作サウンドノベル『かまいたちの夜』が降り立った。
静止画とテキストでゲームが進むというアナログな手法ながら、正体不明の殺人者とペンションに閉じ込められる閉塞感や絶望感はトラウマ級。
雪山を背景に、血のように赤くにじんだ文字が同作のパッケージなのだが……なんか、めちゃめちゃ見たことがあるサイトが誕生したぞ。
・「かまえにたちよる」
「こんや、12じ、だれかがしぬ…」
ということはない。「かまえにたちよる」は、『かまいたちの夜』をオマージュした周遊体験型サイトだそう。スパイク・チュンソフト公認だ。
舞台は大分県佐伯市蒲江(かまえ)エリア。うん「蒲江に立ち寄る」ね……。
さっそくムービーを見てみると、登場人物は誘(さそう)、真海(まりん)、花子(はなこ)だ。
どっかで聞いたことがあると思えば、原作ゲームでは透(とおる)と真理(まり)が主人公。生き残ったり死んだり殺されたり愛を確かめ合ったりする関係だ。
やけに蒲江に詳しく、説明口調で豆知識を入れてくる娘の花子もよいアクセントになっている。
レトロ調のムービーを見ていると、シナリオ分岐の場面でブラウザ上に選択肢が出る。画面が切り替わったら「再生」ボタンを押して映像を進めていくスタイルだ。
ときには美しい実写映像が流れ、またときには実際の住民のコメントが入る。
『かまいたちの夜』でも、背景は実在のペンションで撮影されたのは有名な話。同地を訪れると、ゲームの世界さながらの室内が見られたらしいのだが、「かまえにたちよる」なら聖地巡礼も簡単だ。オール蒲江ロケだからな。
原作では選択肢ひとつで事件すら起きる前にゲームが終わってしまったり、まったく違うジャンルになってしまう、ぶっ飛んだ展開も斬新だった。
「かまえにたちよる」でも、先が気になるハチャメチャな選択肢が目白押しだ。「どうしてそうなる」とツッコミたくなるぞ。
また『かまいたちの夜』といえば、人物を半透明のシルエットで表現したことが特徴。姿勢や髪型から個性がつかめるが、それでいて表情まではわからないという「プレイヤーの想像力をかきたてる」演出が、ゲーム全体の不気味さにつながっていた。
「かまえにたちよる」でも主人公らはシルエットなのだが……途中、あるものを着ることで「無理矢理に実写化してしまった」人物も登場するので必見だ。
筆者がたどり着いたのは「島編END4」。なんとマルチエンディングで、トゥルーエンドまで見れば、蒲江を周遊したことになるのだそう。
『かまいたちの夜』では、全エンディングを見ると「ピンクのしおり」と呼ばれるモードに変わり、隠しシナリオが出現した。しかし、今のようにネット上の攻略情報もなく、セーブの制限もあって、自力で全エンディングを見ることは至難の業だった。
幸い「かまえにたちよる」はそんな鬼畜的な仕様ではないぞ。ただし最後まで進むには20分ほどかかり、また音声も聞こえた方がいいので、自宅で時間のあるときに視聴推奨。
・ほぼフィクションです
「この物語はフィクションであり……」はお決まりのセリフだが、「かまえにたちよる」は「ほぼフィクション」で、登場する人物・団体・名称等は「実在のものと関係がございます」だそう。サイトには、物語中に出てきたスポットの紹介ページもあるぞ。
おそらく世界で唯一、蒲江にしかできないパロディ企画。アイディアが光っていろいろとおもしろいので、ぜひサイトを訪れてみて欲しい。